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英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です  作者: 氷雨そら


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筆頭魔術師 5


 ――なんて眩い。


 眠るシェリアの周囲を飛び交う五色の光。

 赤青緑黄色――光の精霊は白銀に輝いている。

 だが、窓の外は明るくて、本来であればこんなに光が際立つことはないはずだ。


 部屋が暗い理由は、カナン様のそばにいる闇の精霊、ディアスの力によるものだろう。


 部屋の中が暗いからこそ、光が際立つのだ。


「リーゼ、フォール、ベルク、アイン、ディアスそしてマリル」

「すべての精霊の御名」

「やはり――君にはすべての御名が聞こえるんだな」

「ええ……すべて聞き取れました」


 不思議に思っていた。

 四大精霊の名は東西南北の地域の名としてすでに人に伝わっている。

 それなのに、精霊の御名としては聞き取ることができない。


「かつては誰でも聞き取れたらしい」

「……え?」

「人々は精霊の加護を直接受けて生きていた。だが、いつしか争い、精霊に見放されると魔獣が生まれた」

「……」

「筆頭魔術師だけが読むことを許された書物には書いてある。魔獣と一緒に魔力を持つ人が生まれたと」


 筆頭魔術師しか読むことができない書物の内容を私に伝えて良いものか。

 困惑は表情に表れてしまっただろう。


「――問題ないさ。聞く資格のない者には話せないから」

「え?」

「さて、精霊たちよ。俺の魔力を使って、愛娘を夢の世界から連れ戻しておくれ」


 暗闇の中で輝く五色の光は美しく、まるで神話の中の一場面みたいだった。


 中心に立つのは紫の瞳のカナン様。彼が差しだした紫色の魔力が、精霊たちに吸い込まれていく。

 漆黒の髪はまるで闇に溶けてしまいそうだ。


「カナン様!」


 彼が今にも消えてしまいそうに見えて、駆け寄って抱きつく。

 その体は温かく確かにここに存在している。


「お父さま?」

「シェリア」

「おはよう」

「うん、おはよう」


 シェリアは挨拶すると口を軽くへの字にした。


「ねえ、マリルはさっきの続きを見てきたんだよね。どう思う?」

「ん?」

「うんうん、えっ、むむむ……シェリーのお父さまなのに!!」


 シェリアはさらに不機嫌な顔になった。

 いつも機嫌が良く朗らかなシェリアにしては珍しい。


「決めた! シェリー、お父さまと一緒にお城に行く!」

「え、それはさすがに」

「連れていってくれなくてもいいもん。マリルに頼んで行くもん!」

「あの魔法は特別なときだけにしなさい……何度も使うなんて体への負担が大きすぎる。そうだろう、マリル? は、何故目を合わせない。ディアス、マリルを説得して……お前もか!? 裏切り者!!」


 精霊たちはシェリアの味方のようだ。

 いや、もしかするとカナン様が一人でなんでも背負い込むのを良く思ってないのかもしれない。


「精霊たちまで味方となると、止めようがないな。魔法で追いかけて来てしまうよりは連れて行くべきか……陛下に連絡して一室貸していただこう。君は?」

「シェリアが行くなら、私も行きます」

「だろうね……はぁ」


 カナン様はため息をついた。

 シェリアとマリルとディアスは大喜び。

 光の玉の姿の四大精霊たちも勢いよく飛びまわっている。


「シェリアももう少し休んだら着替えましょうか」

「うん!!」


 シェリアは無邪気に喜び、私たちはあれこれ考えてはため息をつくのだった。

 

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