伝説の大魔法 3
「あなた……なんでここにいるのよ!」
シェリアの魔法により王城に移動してしまったようだ。
カナン様が私を受け止め、横抱きにした。
「どうしてここに」
「実は、シェリアの魔法で鏡が現れて……」
「もしかして――嫉妬? のはずないか……」
「何、内緒話しているのよ」
第五王女殿下が苛立ったように大きな声を出した。
王城を警備していた騎士たちがゾロゾロと集まってくる。
勝手に侵入したと言われてしまったら、カナン様に迷惑がかかる。
「ごめんなさい」
「君が謝る必要なんて何一つない――それに、俺もちょうどここを離れようと思っていたところだから。それでは王女殿下、陛下が待っておられるもので、失礼致します」
カナン様が私を隠すようにマントを広げた。
バサリ、と音が聞こえると同時に再びドロリとした水の中を潜ったような感触がした。
「大丈夫?」
「……ここは」
「――陛下の部屋の前。ここが一番邪魔が入らない」
「なんて恐れ多い」
「いいんだよ。彼の娘に迷惑をかけられているんだから――」
「娘って――第五王女殿下のことですか」
カナン様がハッとしたように目を見開く。
彼は私のことをそっと下ろすと、私の両肩に手を置いた。
「浮気を……疑われている? 俺は君一筋だし、いや腕に絡みつかれていたから言い訳……できない? やっぱり、もっと早くに手を打つべきだったのか……君に、疑われたら、俺は」
カナン様の目からどんどん光が失われていく。
それにしても、彼はどうして私にこんなにも執着しているのだろう。
こんなにも私は平凡なのに。
だが、このままではもっと大きな事件が起きてしまいそうではある。
「疑うはずありませんよ。すごく嫌そうに見えましたし、大変そうだなって思いました」
「えっと――でも、シェリアには疑われ」
「あとで私たち二人の仲がいいところを見せてあげましょう」
「仲が……いいところ」
カナン様の頬が赤く染まった。
仲良く手を繋いで見せるところのどこに赤くなる要素があったか不明だが……。
「……?」
「君はそういう無自覚なところがある」
「カナン様……は、わかりやすいですよね」
「君にだけだ」
髪の毛を撫でられる。
くすぐったくて身を捩っていると、頭頂部に口付けされた気配がした。
そのとき、私たちの横の巨大な扉が開いた。
「――王国広しといえど、王の間の前でいちゃつく夫婦はオルト夫妻だけであろうなぁ」
「へ……陛下!?」
私たちの前に現れたのは、国王陛下だった。
私は思わずカナン様から思いっきり距離をとってしまうのだった。




