魔塔 4
「お父さま、シェリー起きたよー」
「シェリア」
シェリアがお昼寝から起きてくる。
カナン様は何事もなかったかのように、シェリアに微笑みかけた。
「……」
シェリアはカナン様の顔をジッと見つめ、それから両腕を上に伸ばした。
「お父さま、抱っこ!!」
「はは、急に甘えてどうした?」
カナン様は、シェリアを抱き上げた。
そこから、シェリアはカナン様から離れなくなった。
おやつを食べる間も離れず抱っこしてもらったまま食べたし、私が料理している間もずっと離れなかった。
大好きなハンバーグが焼けても、シェリアはカナン様から離れない。
いつもなら誰よりも早く席に着くのに、と不思議に思いながら声をかける。
「どうしたの? ご飯になるからそろそろ降りなさい?」
「やっ!」
シェリアは子どもらしく自由なところはあるが、こんなふうにずっと抱っこをせがんだり、降りたくないと嫌がるのは初めてのことだ。
「本当にどうした? なにか怖いことでもあったのか」
カナン様が心配そうに声をかけると、シェリアはますます強くしがみついた。
「泣いてるの」
「え?」
「泣き止むまで抱っこしているの!」
「……」
カナン様の肩が震えた。
シェリアはしっかり抱きついたままだ。
「泣いてない」
「嘘つきなの!」
「そうか……シェリアは優しいな」
カナン様はシェリアを抱き締め返した。
「シェリーを抱っこしてたら悲しくないでしょ?」
「ああ、本当だ」
「ご飯もお膝で食べてあげるね!」
シェリアは無邪気に笑った。
カナン様の膝にのったまま、シェリアは食事をし始めた。
カナン様は軽くつまみながら、シェリアが取りやすいようにお皿の位置を調整している。
「ごちそうさまっ」
「美味しかったか?」
「うん! お父さまも美味しかった?」
もしかすると、シェリアなりにカナン様の様子が違うことを感じ取ったのかもしれない。
「ああ」
「幸せになった?」
「幸せだ――こんなに幸せでいいのか、と思うほど」
それはつい口に出てしまった言葉だろう。
シェリアは首を傾げ、しばらく考えていた。
それから、向きを変えるとカナン様の膝の上に立ってしがみつく。
「聞いてね」
「ああ……」
「シェリー、お父さまが幸せだとうれしいの」
「……シェリア」
「あっ、なんで泣くの〜!?」
「幸せすぎると泣けることがあるんだな」
「泣かないで〜!」
カナン様はシェリアを抱き締め返した。
「家族みんな幸せだと、もっとうれしいよ?」
「そうか……確かに俺も君たちが幸せだと幸せだ」
「うん!!」
以前のカナン様であれば、こんな言葉が出ることはなかったように思う。
彼はシェリアと会ってから、変わりつつあるのかもしれない。
「私もカナン様が幸せだと幸せです」
「それなら少しだけ、俺も……」
その言葉の続きをカナン様は口にしなかった。
「お母さまも抱っこして!」
「ええ……!」
私はシェリアを挟んだまま、カナン様の背中に腕を回して抱きついた。




