結婚式 4
結婚式から一夜。
朝が訪れる。ちょっと早く目が覚めてしまった。
いつものようにシェリアは私に張り付くように寝ている。
シェリアの向こう側にはカナン様が寝ている。
ベッドは少し大きめだけれど、三人で寝るとちょっと狭い。
でも、こうして家族一緒に眠れるなんて夢のようだ。
隣の部屋には叔父様もいる。
しばらくの間、宿屋暮らしをするつもりだったけれど「小さい子どももいるのだから好きなだけ泊まっていけばいい」という叔父様のご好意に甘えて叔父様の家に泊めていただいているのだ。
――頭の中のチェックリストに、家探しも追加する。
叔父様の家も用意できたばかりということで、この部屋にはベッドが一つしかない。
ソファーもないことがわかるや、カナン様は床で寝ようとした。
一緒に寝ようと誘ったが、床で寝るという彼の決意は固く、無理やりベッドに引き込んだみたいになってしまった。
――それからは、毎晩三人で眠っている。
カナン様は眼帯を外している。長めの前髪で隠れているけれど、美しい瞳は片方失われてしまった。
彼の頬が徐々に上気していく。私の視線に気がついているようだ。
「……」
「起きてますよね」
「おはよう……」
カナン様はパチリと目を開けた。
朝の淡い光は、窓の外を淡く染めているけれど、まだ室内を照らしはしない。
それでも、残された左の瞳は宝石のように輝いている。
「そうやって毎晩見てないでちゃんと寝てください」
「密かに観察していたことに気づかれていた!?」
「やっぱり寝てなかったんですね」
もしかして、と思っただけだったのだが、やっぱり彼は寝ていなかったようだ。
「君が隣にいて眠れるはずがない」
「……っ!?」
彼にとっては単なる事実なのだろうけれど……私の頬まで染めるには十分すぎる言葉だった。
シェリアを起こさないようにそっと起き上がる。
カナン様も起き上がってきたので、目を瞑って口付けを待つ。
――私は十分に待ったと思う。
目を開けると、カナン様は私の顔をじっと見ていた。
「まだですか?」
「……あの」
「口付けしてください」
そして、もう一度目を瞑った。
唇が合わさる。夫婦にしては軽やかな口付けは、すぐに終わってしまった。
口付けしたいと思ったのは、私だけだったのだろうか……。
後ろ向きな考えが浮かんだが、目を開けると彼の顔は薄暗がりでもわかるくらい真っ赤だった。
ふと、口にしてしまった質問は、気になっていたけれど聞けずにいたことだ。
「……どうして、私のことを好きになってくださったのですか?」
「あの日差し出された手は温かかった。君のような可愛い人に優しくされたら恋に落ちるだろうし、会う度に君の表情はコロコロ変わって目が離せず、笑いかけられるたびに心臓が爆ぜそうに高鳴る。君は優しくて、まっすぐで、純粋で、正直者で……」
カナン様は一息に答えてくれた。
でも、この後に続く言葉はいつものように自分を卑下するような言葉な気がした。
甘い雰囲気が壊れてしまうのが惜しくて、今度は私から口付けした。もちろん、先ほどよりもさらに一瞬触れただけの口づけだ。
「……」
「……」
「……もう少し寝ましょうか」
「あ、ああ……」
私たちは再びシェリアを挟んで横になった。
――室内に響くのはくぅくぅというシェリアの穏やかな寝息ばかり。
先ほどまでは気にならなかったカナン様との距離が、妙に近く思えてくる。
結局日が昇るまで眠ることができず、目が合ってしまうたびに互いに赤面するのだった。




