結婚式 2
結婚式の当日は、精霊に恵みを与えられたのか、空はどこまでも青く、爽やかな風が吹き、気候は穏やかだった。
「これを」
「……あの魔石を預かりたいとおっしゃるから、どうするのかと思いましたが」
カナン様が出征する前夜に贈ってくれた魔石は、ティアラになった。
紫色の魔石――あのときも上質だったと思ったが、今ならわかる。
この魔石は最高級の闇の魔石にさらに闇の精霊ディアスが力を込めた物なのだ。
王城の宝物庫にだってここまでの品はなかろう。
――価値? 考えたくもない。
「お姫さま〜見てみて〜!」
シェリアは先ほどからずっとクルクルと回っている。
私とお揃いのデザインの白いドレス。
ベールを持ってくれる予定なのだ。
カナン様は、魔術師団の団長だけが着用を許される白い正装に身を包んでいる。
「ここまですれば安心か……」
「ええ、カナン様の隣に立ってもそれなりに」
「そうだな……ドレスの刺繍には光の精霊の、ティアラは闇の精霊の、イヤリングには風、ネックレスには火、靴には水の精霊の加護が込められている。仮に邪竜クラスの魔獣が王都に現れても君は無傷だろう」
「はい?」
「よかった……これで安心して君の隣に立てる」
カナン様の言っていることの意味が理解できなかった。いや、したくないというか……。
「あの、いったいいくらかかったのです?」
「素材はほとんど自力で集めた、というか任務で集まってしまったものばかりなので問題ない」
「……それなら、良いのかしら?」
ちらっとシェリアに視線を向ける。
彼女の格好も私とお揃いなのだが……。
「だが、解決しない問題が一つある」
「何でしょうか……」
もしかして、私の知らないうちになにか恐ろしいことが起ころうとしているのだろうか?
しかし、カナン様がこんな表情をするときは、いつも同じ理由だ。私は彼の言葉の先手を打つことにした。
「美しくありませんし、カナン様のほうが眩いほど麗しいです」
「……ありがとう、俺の女神」
「女神やめません? こういうときの呼び名は女神ではなく奥さんが良いです」
「わかった――俺の奥さん」
カナン様が、眩しいほどの笑みとともに私のことを奥さんと言った。
途端にどうしようもないほど頬が熱くなる。
カナン様が慌てて私にベールを被せた。
「……自分で言って、言葉の破壊力に驚いた」
「ふふ」
「……仲がよろしいですね」
「……っ!?」
いつからそばにいたのか。
振り返ると、トリス様がシェリアと手を繋いで立っていた。
彼も私のベールを持ってくれるらしい。
公爵令息にそのようなことをさせるなんて恐れ多いとお伝えしたのだけれど……恩人なのだからと陛下まで出てきて押し通されてしまったのだ。
「……魔力が高く精霊に好かれる者は、自身の愛する者を守ろうという本能が強いらしいからな……」
「そうなのですか? それでは、カナン様も?」
「……っ、君の想像に任せる!」
ベールをあげて覗いてみれば、聞くまでもなく、カナン様の頬は真っ赤だった。




