王城とお城 5
さて、光が収まると光り輝く魔石が姿を現した。
ここにいるのは王国の中枢を担う者ばかり。大変な代物が出来上がってしまった……誰もがそう思った。
室内は静まり返っている。
魔力が高く、強い者ほど顔色が優れない。
周囲よりいち早く立ち上がった叔父様の顔色が一番悪い。
「まさに、精霊から賜りし最高の魔石ですわ」
「きれーねー!」
私の声も掠れていたかもしれない。
無邪気なシェリアの声だけが響きわたった。
魔石に映し出されているのは暗闇に輝く満月と、なぜか溶岩ドロドロ……。
「……光り輝く魔石のごとく陛下の治政に栄光あれ」
「……ありがたく受け取るとしよう」
カナン様と陛下は言葉を交わすと頷き合った。
陛下の表情は『あとで説明せよ』と言っているようだったし、カナン様が浮かべているのは見たことがないほど美しい笑みだった。
偽りの魔力を弾き出して、完成したのは光と闇と火属性の魔石だった。
なぜ火属性も含まれていたのか、この際理由を考えるのは止めておこう。
退室が許されると、皆首を傾げながら去って行った。
部屋に残ったのは、叔父様とカナン様、シェリアと私、そして公爵夫妻とトリス様だ。
「トリスは残りなさい」
「はい、陛下」
「ああ、君たちは帰っていいよ? このあと孫と話がある」
「陛下!」
「儂はトリスに残るように伝えた。退室せよ」
「は……」
陛下の御子であるマール公爵も下がらされてしまった。
明らかに私がいるべき場所ではない。
でも、当事者の一人には違いない。
「さて、誰の話から聞けば良いものか」
「……お祖父さま」
人払いがすむと、トリス様は陛下のことをお祖父さまと呼んだ。
「おお……トリスや。元気になって良かった……」
陛下が腕を広げると、トリス様が飛び込んでいった。
陛下はトリス様を抱き締めると、膝に座らせた。
そして再び私たちに視線を向ける。
「さて……筆頭魔術師カナン・オルトよ。この国を救ってくださったこと、感謝の念に堪えない」
「当然のことでございます」
「そして、シェリア嬢じゃったかな?」
「シェリーじゃなくて、シェリア・オルトです!」
「元気でよろしい……。さて、トリスを助けてくれてありがとう。シェリア嬢」
「えっ……! シェリー、ちゃんと秘密にしてたよ!?」
シェリアはトリス様に助けを求めるような視線を向ける。
「お祖父さまには精霊さまが見えるから、ここで力を使っちゃったら隠せないよ」
「そうなの〜? じゃあ、もう秘密にしなくてもへいき? トリスさまも火の精霊さま見られちゃったものね!」
「うん、めんどうなことになったよね」
「火の精霊さまから御名を教えていただいたことを隠しておったとは……」
「王位継承に興味がないので……」
トリス様がニッコリ笑ったので、シェリアはホッとしたようだ。
しかし、残された大人たちは彼の王族らしい笑みに、思わず姿勢を正さずにはいられなかった。




