光の精霊の祝福 3
幼児が二人で内緒話をしている。
隠しているつもりのようだが、丸聞こえだ。
「ディアス」
カナン様が囁くと闇の精霊ディアスが心得たように二人のそばに寄った。
「これで、二人の声は俺たちにしか聞こえない」
「カナン様の魔法は、すごいですね……」
「俺が得意なのは闇属性の魔法ばかりだから、平和的な使い道は少ないが」
すごいものはすごいのになぁ……と思いながら、二人の言葉に耳をそばだてる。
「あのね、光の精霊マリルさまの魔法はみんなの前で使っちゃだめなんだよ」
「えー? どうして?」
「悪い人が来て、連れていかれちゃうの」
「えっ、こわい」
「お花を咲かせるのはすごいけど、こんなに可愛いのだもの。戦えそうもないし」
「マリルは、強いんだよ!」
マリルが尻尾を逆立てている。
光の精霊は、四大属性の精霊よりも格上だ。
だが、確かに怒っていても小動物が威嚇しているようにしか見えない。
「あら……?」
「……」
異変に気がついて、カナン様に視線を向ける。彼は冷たい目でトリス様を見ていた。
「カナン様」
「ああ、彼には見えているし聞こえているようだ」
「どうして……」
トリス様の瞳は青色で、特別に魔力が高いようにも見えない。
いや、魔力なしの私にもマリルの姿が見えて名前を聞くことができるのだから、魔力のありなしは関係ないのか……。
「ガイフェルト王家は火の精霊の子孫であるという。公爵家は王家の血が濃く流れているからそれが関係しているのかもしれないな……」
「そうですか……」
トリス様とシェリアの内緒話は続く。
「僕が大人になって、守ってあげられるようになるまで魔法を誰かの前で使っちゃだめ」
「うん、わかった!」
「本当にわかっているのかな……」
「わかってるの! じゃあね、約束」
「……うん、約束」
二人は小さな小指を絡めて約束を交わした。
「うふふ」
「……」
シェリアが笑うと新たな花が咲く。
トリス様が難しい顔をした。
つまり、約束したところで現状シェリアはまだ魔法の発動をコントロールできないのだ。
「え……困ったな」
「トリスさま?」
「――今すぐ騎士にならなくちゃ」
カナン様が魔法を解いた。
内緒話は終了したようだ。
――けれど、弱冠5歳で騎士になるのは無理だろう。
しっかりしているようで、トリス様はまだまだ幼児なのだ。
トリス様は両親の元へ走っていった。
一生懸命訴えている姿は子どもらしい。
公爵夫妻は我が儘を言えるほど元気な姿にうれしそうな反面、困り顔でもある。
突然、カナン様が空を見上げ、舌を打った。
彼の足下に難解な魔法陣が浮かび、そこから生まれた黒い鳥が空へと飛び立つ。
「どうなさったのですか? 今のは……」
「結界が壊されて誰かに覗かれた。公爵令息に呪いをかけた犯人かもしれない」
「そんな……」
カナン様が結界など張っていたことにも驚いたが、彼の魔法を破壊できるなんていかほどの実力か……。
「大丈夫だ。追いかけさせたから……見つけてみせる」
「危険なのでは?」
「……追跡は慣れている」
カナン様の表情は厳しい。
事実、彼にとってこんな出来事は日常なのかもしれない……。
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