眺めるだけの残酷
電車はゴォーッと音を立てながら東京を走り抜けていく。
夏服の女子高生三人がベンチシートに座り、スマホの画面に夢中になっていた。
その青白い光が、彼女たちの顔をほんのり照らす。
「ねぇ、高峰アイラのスピーチ見た? あの子、牢屋にいるのにめっちゃ可愛くない!?」
「わかる〜! ちょいヤンデレっぽいけど、ほんとは普通にかわいいよね。ぜったい投票めっちゃ入るって。」
「私は早坂レンに入れる〜。あの人さ……落ち着きすぎじゃない? なんか雰囲気あるし、ほんとに人殺したとは思えないんだけど。」
三人はしばし沈黙し、タイムラインを更新した。
画面下には横断幕のように文字が流れていた。
「特別試験の対決に今すぐ投票——午前7時まで生放送中」
「まじで、中崎ナオミって怖いよね〜」
「うん、でもカッコいいよ。大人みたいに喋るし、それにさ、やっぱりカリスマあるよね。」
「いやいや、待ってよ、あの目見た? 見つめられたら殺されそうじゃん。」
会話は軽く、まるでバラエティ番組の感想を話しているかのように続いた。
「対決の最後に本当に首吊りとかあるのかな〜」
「そりゃ、あるでしょ! コンセプトなんだし。もしやらせだったらつまんないよ。」
「うん、そうだよね……でも、やっぱり痛そうだよね。」
「まぁいいんじゃない?」
三人は声をあげて笑った。
車内では、何人かの大人が眉をひそめていたが、何も言わなかった。
「ねぇ、誰に投票した?」
「高峰アイラにしたよ。残る価値あるし。」
「私は中崎ナオミの対決が見たい!男の子とやったら絶対面白いよ。」
「わ〜、三年の男子と当たったら、マジ神展開じゃん!」
電車が停車した。
三人はまだ笑いながらスマホをしまい、ホームへ降りていった。
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病院の昼休み
休憩室は、ぬるいコーヒーの匂いが漂っていた。
数人の白衣姿の医師たちが、トレイを囲んで座っていた。
壁にはテレビがあり、音を絞った状態で『高校生の殺し合いテレビショー』が映し出されていた。
「暫定ランキング見た?」と、インターンが缶コーヒーを開けながら聞いた。
「うん、高峰アイラがトップだね。みんな、血まみれでも可愛い顔には弱いんだよ」と、外科医が淡々と答えた。
「それにしても、面白い現象だよね」と、別の医師が続けた。
「人間の本能って、自分が有罪だと判断した者の苦しむ姿を見るのが好きなんだ。でも、演出がきれいだと尚のこと。ここでは、道徳の麻酔下での社会的サディズムだよ。」
五十代の主任は、ゆっくりと食事を噛んでいた。
「社会的サディズムだろうと何だろうと、この番組は機能している。パイロットシーズン開始以来、少年犯罪率は12パーセント下がった。」
沈黙が続き、弁当のプラスチックを破る音だけが響いた。
「本当にこれを容認してるんですか?」と、インターンが思い切って聞いた。
「私は何も容認していない。ただ観察しているだけだ」と、主任は目を上げずに答えた。
「ちょっと偽善的じゃないですか? ここで人を治療しながら、他の人が死ぬのをテレビで見ているなんて。」
短く笑い声が響いた。
「これが新しいことだと思うか? 昔から、人は痛みを見るのが好きなんだ。ただ、きちんと演出されていればね。」
画面には中崎ナオミが映され、同じセリフが何度も繰り返されていた。
「掃除しただけ。」
外科医は少し身を乗り出し、魅了されたように見つめた。
「彼女には何かあるわ。この目、この冷徹な洞察力。もし殺人者になっていなければ、優秀な心理学者になれたでしょうね。」
「あるいは政治家だな。」と別の医師が付け加え、テーブルには笑いが広がった。
主任はため息をつき、箸を置いた。
「ともかく、これは久しぶりに国中を一つにする番組だ。」
「それが一番怖いことよ」と、外科医が答えた。
「いや」と、インターンが小声で言った。「一番怖いのは、みんな食事しながら見ていることだ。」
電話がピッと鳴った。二回目の生投票が再開されたのだ。
皆、ほとんど無意識にスマホを取り出した。
数秒の沈黙。
そして主任が尋ねた。
「で、誰に投票する?」




