高橋智子から入電
「あ?亜弓さんですか」「はい。そうですけど」「あの。あたし、智子です。お久しぶりです」「ど、どうも」「どうしたんですか」「いえ。ちょっと、今、鬱サイクルに入ってきて、段々と『なろう』を引退したくなってきた」「なろうって、ああ、小説投稿サイトのことですか」「そうだよ」「ま、あんなん金になんないからやめた方がいいですよ。それよりも、創作の先輩の亜弓さんにお聞きしたいのですけど」「は、はい」「最近スランプでやる気が出ないんですよねえ」「智ちゃんにもそういうところあるんだ」「ありますよ。いつも元気いっぱいじゃないんです」「そうかあ。なんか、安心したなあ」「いつもの勢いないですね」「ないねー。自分って、どっちかというと、統合失調症タイプなんだけど、でも鬱になるからね」「へえ」「でも、千葉雅也氏の本によると、精神病というのは、この広い自由な選択肢のたくさんある中の世界に、欲望という余剰エネルギーを持った人間が、どこに進めばいいのかわからないのが理由である。ということなんだよね」「ほほう」「それを防ぐには、『洗練された自閉症になれ』ということを仰っている」「なるほど」「これが一つのヒントになったらいいね」「なるかもしれないです」「あと、加治将一さん。つまり、加治ニイは、「愛しているぜ!」って言うことだって。その気持ちでやることということです」「それもそうですね」「オキシトシンが出るらしいので、それをどう出すかということが、肝心だ。とことですね。自分から言えることはこれくらいでありんして」「いや。なんらかのヒントにはなったかもしれないです。で、この小説どうするつもりですか」「え?」「いや。登場人物紹介で、私をはじめいろんな人が出てきたましたが、それを全部サポートするつもりですか」「そーですね」「それ、辛くないですか」「いや、辛くはないけど、どうなんだろう。ま、僕の知り合いってことで、お話を進めればいいんじゃないですか?ちょうど書くことなくなってきたわけであるし」「でも、日本人はリアリティのある物語が好きだからなあ。亜弓ニイさんの作風は合わないかもしれない」「そうかもね。って、俺、いつニイさんになったんだよ。つか、色々、頑張ってゆくよ。多分どうにかなるよ。そのうち」「かもねえ。あるいは、かもしれないかもねえ」「ま、どっちに転がっても平気だよ」