第十一話 双士
数十分前…
悪霊退散部隊の基地の門に無数の影が立ちふさがる 護衛たちが違和感を覚え叫ぶ
「な、なんだ貴様らは!」
「全身が真っ黒…こいつら悪霊か…?」
「にしても…」
一人の護衛が奥を見つめる 無数の怪しい影は100体はいる模様
「多すぎないか…?な、なんで今まで気づかなかったんだ俺たちは…」
無数の影の中から一体が歩み寄ってくる その容姿は十字架のネックレスを首にかけておりまるで教祖のような格好をしている
「あなたたち二人に質問です」
「あなたたちは神を信じますか?」
二人の護衛が困惑する
「はぁ?」
「きゅ、急に何を言って…」
一人の護衛が声を荒らげる
「何言ってんだ!大体なんだ貴様ら!」
教祖のような者が護衛を睨みつける
「何を言っているだと?今…神を侮辱しましたか?」
「はっ!神を侮辱しただぁ? そもそも神なんかいるわけないだろ!」
「よーく分かりました あなたは神の裁きを受けるべきです」
「は…?」
教祖のような者が護衛に向かって指を指す
「あの方は神を侮辱しました やってしまいなさい!」
無数の悪霊が一斉に声を上げる
「神の言葉のままに…」
神を侮辱した一人の護衛に向かって無数の悪霊が襲いかかる
「な、なんだこいつら!」
もう一人の護衛が助けようと守護霊の力を使う 守護霊はボクシングの経験者で護衛はボクシングの技を繰り出す
「先輩!今助け…!」
教祖のような者がもう一人の護衛に視線を向ける
「神を侮辱する者を助けようとする者も裁きを受けるべきです」
もう一人の護衛に向かって残りの悪霊が飛びかかる
「くっ!クソ…数が多すぎる…!」
悪霊の戦い方はまるで野生そのもので爪を尖らせ斬撃を与える
「神のままに!」
「神の裁きを!」
「神への侮辱を償え!」
二人の護衛は無数の悪霊に切りつけられ倒れてしまい白目をむいて失神している
教祖のような者が門を悪霊に開けさせて悪霊退散部隊の基地に足を踏み入れる
「さぁ、神を尊敬する素晴らしい方たちを探しましょう」
清水正信容疑者 小学校から変わった子と周りから言われておりその理由は異常なまでの神への信仰心 そして中学校時代に柄の悪い同級生に神を冒涜されたことで激怒し筆箱から取り出したハサミで同級生を刺して倒れる同級生に追い討ちをかけるように馬乗りになって何度も刺し続け少年院に送り込まれることとなる 同級生は命には届かなかったが重症を負った
清水は少年院を出たあと自分の宗教を立て教祖として100人を超える信者を集めた
訓練を行っている星野訓練長が違和感を覚える
「な、なに…?この嫌な感じは…」
一人の部員が門の方へ指を指す
「な、なにあれ…」
星野が門の方へ視線を向ける 視界に広がるのは100体を超える悪霊と異様なオーラを放つ1体の悪霊
「こ、これはまずいわね 奇襲だわ!」
星野が指揮をとる
「全員!戦闘態勢へ!落ち着いて連携を保て!」
「はい!」
清水が星野の前へ立ちはだかる
「少し待ってください、我々は戦いに来たわけじゃないんです お話をしに来たんです」
星野が疑い深く清水を睨む
「話?」
清水が淡々と発言する
「そうです、まぁこの質問の答え方によってはどうなるか分かりませんがね」
「ささっと言え、質問とはなんだ」
「あなたは神を信じますか?」
星野が鼻で笑う
「ふっ、どうせ信じても信じなくてもどっちにしろ戦う気でしょ?」
清水がニヤリと笑う
「なぜ、わかったんですか?まぁこれも神への侮辱に入れておきましょうかね」
「何言ってるのよ」
星野が戦闘態勢に入る
「みなさん、あの人たち全員 神を侮辱しました 神の裁きを与えましょう!」
無数の悪霊が一斉に襲いかかる
「全員!攻撃開始!」
無数の悪霊に構えるように部員たちも応戦する
悪霊と人間が激しく戦う中、玲夜の部屋の窓から武綱はその戦いを眺めている
「信仰心だけで戦わせているのなら勝つのは難しいだろう」
「ここにいる部員たちは連携の訓練を毎日行っている故にあの訓練長という者が指揮までとっている」
「だからこの部隊の方が優勢に見えるがそれは相手が信仰心だけで戦わせているだけだったらの話だ」
無数の悪霊が暴走ししつこく部員たちを襲う
「あの教祖のような者、信仰心だけではなく人を殺害する経験を積ませているな さらには催眠術をかけているあれはもはや洗脳に近い」
「まるで信者ではなくゾンビだな」
部員たちは体力が減りだんだん力や速さが鈍くなってきている
「果たして、此処の者は洗脳に勝てるほどの信念と覚悟を持っているのか?」
星野が焦り始める
「まずい、相手がしつこすぎて私たちが削られていくばかりだ…」
「それに実戦がまだ疎い者が多いから恐怖や無謀を感じる者が増えてきている!」
「このままでは負けてしまう…霊力に躊躇していられない」
星野が霊力を使おうとしたその時、基地の入り口から一人の男性が歩いてくる
「おいおい、なんだこの有様は」
星野が男性の方を向く
「あなたは!」
男性が声を荒らげる
「てめぇら!みっともねぇぞ!大切な人を忘れたのか!」
「お前らの覚悟はそれきりかよ?そんなんでこれ以上失う人無くせると思ってんのか!!」
部員たちが声を聞いた瞬間、勢いを取り戻し応戦する
「へっ!それでこそ悪霊退散部隊の一員だ」
星野が男性に近づく
「宮崎特攻隊長!」
宮崎が星野の方を向く
「星野、これはどういう状況なんだ〜?」
「あの教祖のような悪霊によって100体はいる悪霊が操られています」
「操られている悪霊は非常にしぶとく信者の度を越えています!」
「なるほどな」
清水が宮崎を見るなり口を開く
「おっと、また新しい信者候補の方がいますね」
清水が宮崎を指差す
「そこのあなた!あなたは神を信じますか?」
宮崎が歩み寄りながら答える
「あぁ、信じてるぜ お天道様に見られてると思って生きてるからな」
清水がニヤリと笑う
「それなら話が早い、私と一緒に神を讃えませんか?」
宮崎が拳に炎を纏いながら口を開く
「はっ、てめぇがやってることは神を讃えることなんかじゃねぇ」
「自分を無理やり正当化させようとしてるだけの悪行にすぎねぇ なんなら神が嫌う行動だろ」
宮崎が清水を睨む
「そんなのお天道様が許すわけねぇだろ!」
宮崎が清水に向かって踏み込み炎を纏わせた拳を繰り出す 清水に拳が当たろうとした瞬間、目の前に突然出現した十字架によって攻撃が防御される
「おいおい、その使い方はねぇだろ」
清水の周りにまるで守るように十字架が五つ浮いている
「あなたを裁くにはぴったりだと思いますがね」
五つのうち三つの十字架が宮崎を刺そうと飛びかかってくる
「知ってますか?十字架とは磔刑に処されたときの刑具として伝えられていたんですよ」
「磔刑?いや、思いっきり刺そうとしてるじゃねぇか!」
三つの十字架が宮崎の目の前で止まる
「…!」
「まぁ俺を捉えることはできねぇけどな」
宮崎は飛んできた十字架を三つとも掴んでおり握り潰して十字架を破壊する
「素晴らしい動体視力と反射神経をお持ちで さすがお天道様に見られてるだけのことはありますね」
「そりゃどうも、じゃあ次は俺がお前を捉える番だ」
「私を捉える?ではこの壁を乗り越えてください」
部員と戦っていた信者の悪霊が戦いをやめて清水を守る壁となる
「あの方はさっきの行動からして焼死の守護霊の力を使っている つまり、遠距離からの炎の弾か放射または近距離なら先ほどと同じように炎の拳でつっこんでくるでしょう」
「近距離なら上からの十字架で頭を刺して遠距離なら壁で防ぎ攻撃し終わったところを狙って十字架を飛ばす」
「完璧だ、やはり私は神に選ばれし存在!…にしてもなぜ攻撃がこない…?」
防御に徹している清水に宮崎が軽く口を開く
「おいお前、俺が焼死の守護霊の力を使うと思ってんだろ」
辺りが突然煙で満たされる 部員はなぜか落ち着いており信者の悪霊は状況を理解しておらず辺りを必死に見渡す
「な、なんだこの煙は? 前が見えない…!」
ボコっ!ドカッ!という鈍い音だけが清水を知らせる
「何の音だ?なにが起こって…」
煙が晴れて辺りが見えるようになる
「は…?」
視界の先には信者の悪霊が次々と倒され霧のように消えていく姿が映っており清水は呆然としている
「残念ながら不正解だ 俺の守護霊は」
再び、辺りが煙に包み込まれる
「ま、また煙か! こ、こんなもの!」
清水は十字架を出現させて煙を払おうとする
「なっ…視界がぼやけて…頭が痛い、それに吐きそうだ…」
どこからか声が聞こえる
「苦しいだろう?それが人間界で言う一酸化炭素中毒だ」
「一酸化炭素中毒だと…?な、なぜだ…あなたの守護霊は焼死の守護霊のはずでは!」
清水の背後に宮崎が立っている
「だから不正解つってんだろ?俺の守護霊は煙死の守護霊だ」
「え、煙死だと…?ではなぜ炎を使えるのですか!」
「さぁな」
炎を纏った拳で清水の背中を殴る
「ぐはっ…!」
「まぁ、地獄でじっくり考えてみればいいんじゃねぇか?」
炎を纏った拳で連撃を食らわせる
「あ、消えたら地獄にもいけねぇのか まぁいっかお前みたいな奴が消えたら神も喜ぶと思うし」
脚に炎を纏いハイキックで清水の頭を飛ばす 煙が晴れて清水は霧のように消えていく
「あぁ…神よ 私の行いは間違いだったのでしょうか」
清水の小学校時代
「正信、人生は神様に見られているから善い行いをするんだよ?」
「うん!母さん」
清水の家庭は小さい頃に離婚しており清水は母親と二人暮しをしていた
清水は母親の教えにより悪い行いは見過ごせない性格に育っていき小学校の同級生や中学校の同級生の悪行を見るなり注意し止めていた そのおかげで先生からは好印象
だがこの行動と性格が原因で一部の生徒から嫌われていた
中学校時代のある日 授業中トイレでタバコを吸いながら数人の不良たちが戯れている
「あいつうざすぎだろ」
「なにが神が見てるだよ 変な宗教でも入ってんのかよ」
「そうえばあいつって母子家庭らしいぜ」
一人の不良がニヤリと笑う
「へぇー?ちょうどいいじゃん」
翌日…
授業中、数人の不良たちが授業を妨害するように大声を出しながらゲラゲラ騒いでおり教師に文句を垂れている
「先生、早く授業終わらせろよ〜!」
「そうだそうだ!つまんねぇんだよ!」
清水が席から立ち上がる
「この行為は神が許すはずがない」
数人の不良たちの方へ歩み寄り口を開く
「お前たち、授業の妨害をするな!」
数人の不良たちが清水を睨みつける
「はぁ?またてめぇかよ」
「毎回ヒーロー気取りかぁ?」
不良の中のリーダー的存在の人物が席から立ち上がる
「おい、あんまり調子に乗ってるとさぁ」
リーダー的存在の人物が口角を上げる
「お前の母親がどうなるかわかんないよ?」
その言葉を聞いた途端清水は目を見開き怒りと殺意が全身を駆け巡る
「母さんは関係ないだろ…」
「あるだろ、お前みたいなやべぇ奴を産んだんだからよ」
リーダー的存在の人物が清水の耳元で囁く
「ママに伝えとけ、夜道には気をつけてって」
清水は発言より行動の方がはやく動く 不良の筆箱から少し見えたハサミが目に入りそれを手に取る
清水がハサミを手に取った瞬間、リーダー的存在の人物が後ずさりしながら怯える
「おいおい、お前正気かよ さすがに冗談だよな…?」
清水は怒りで聞こえてないのか腕を振りかぶり刺そうとする 周りは怯えており誰も止めようとしなく担任は清水が後ろを向いているのでハサミを持っていることに気づいていない
「おい!マジでやめろ!」
大声とともにリーダー的存在の人物の腹部にハサミが刺さる 白色のカッターシャツは赤く染まり大の字に倒れてしまう 周りの女子が悲鳴を上げて仲間の不良は震えている
「キャアアアアア!!」
「ま、マジで刺しやがった…!」
担任が駆け寄り止めに入ろうとするがそれよりも早くリーダー的存在の人物に清水が馬乗りとなりさらに腹部を刺して殺しにかかる
「母さんに危害を加える者は神が許さない…!」
担任が清水の両脇に腕を通して無理やり立ち上がらせる
「やめろ!清水!」
「はっ…!」
この件により清水は少年院に入った だが清水は自分のやったことを全く反省しておらず逆に正しい行いだと信じて疑わなかった 清水は出所した後、自分と同じ考えを持っている人を探そうと宗教を立てることに
だが現実は上手くいかなく…
「なにが神だよ、ふざけてんのか?」
「わ、私…そういうのは興味ないので…」
入る者はゼロで断られる毎日、だがそんな清水が図書館で神に関する本を手に取ろうとしていた時ある本が目につく
「催眠術…?」
そして清水はこの本がきっかけで催眠術に興味を持ちはじめる それは同時に自分の狂気を実現へと導かせる鍵ともなった…
数年後…
清水は度が過ぎた催眠術と洗脳で自分の信者を100人以上集め神を信仰していた
死後も同様で信者たちは清水に従え続けていた
消えていく清水を宮崎は切なさそうに見つめている
「神のせいにしてんじゃねぇよ…」
星野が宮崎に近づく
「宮崎特攻隊長!助かりました!そして申し訳ございません!」
「まぁまぁ、一件落着ってことで お前はまだ未熟なんだからゆっくり学んでいけばいいんだよ」
「それより部員たちの手当てを頼んだ」
宮崎は基地へ戻っていく 星野が部員たちを運ぼうとしていると基地の中から背の低い小柄な女性が走ってこちらに向かってくる
「だ、大丈夫ですか!」
「橋本救命長!治療をお願いします!」
「分かりました!」
救命長 主に部員の治療やサポートを行う8人の長の中の一人 矢田のような医師や医者の守護霊の力を持っている部員に霊療法を教えている
橋本救命長が素早く次々と部員を治療していく
「やっぱり速いわね…橋本救命長」
一人の部員が星野に駆け寄る
「星野訓練長!なぜあの人はあんなに足が速いんですか?!」
「医師の守護霊の力を持ってるとは聞いてたんですけど…」
「たしかに橋本救命長は医師の守護霊の力を持っている だがその守護霊の死に方が少し特殊でな…なんでもスポーツカーにはねられたとか」
「スポーツカー…?」
「あぁ、200キロは出ていたらしい」
「えぇ?!」
「その死因があってかあそこまで足が速くなるらしい」
部員は慌てて手当てを手伝いに行く
「じ、自分も動かなきゃ…!」
星野も動き部員の手当てに回る
「私のせいで負傷者が増えてしまった…もっと強くなって最小限に抑えなければ…!」
「宮崎特攻隊長みたいに頼れる長にならないと私は訓練長失格だ」
基地の最上階から一人の男性が星野や橋本の様子を見つめている
「佐久間管理長、教祖のような悪霊の情報資料完成いたしました」
「ご苦労さま」
「さて、今回はどんな悪霊かな?」
管理長 基地の最上階にある管理室で悪霊の情報や特徴を集め管理を行っている管理員の中の長 正確かつ慎重さが問われるので基本的に頭が良くないとなれない
玲夜の部屋の窓から武綱が宮崎を見つめている
「まだ猛者がいたとは 見る限り、副隊長と同等の実力を持っているな」
「だがまだ未熟だな 一体逃しているし」
武綱は門の前に身を潜めている一体の悪霊を察知している
「あやつだけ他の悪霊と違って煙が広がる前にすでに行動していた さらに気配を隠すのが異常に上手い」
「まるでそれを専門にしてるかのように」
「気づいているのは拙者だけだし少し追ってみるか」
悪霊が門の前から離れて走り出す
「動いたな」
武綱が霊力で気配を消して窓から飛び降りる
「一体どこに向かうんだ?」
悪霊は素早く森の中を駆け巡りある場所に向かっている 武綱はバレないように適切な距離を保ちながら悪霊を追っていく
悪霊が突然止まる 止まった先には城が建っており悪霊が中へ入っていく
「ここは…鳳凰城? それにこの中に強者が五体ほどいるな ここで倒してもいいが玲夜を強くさせるものとして使ってもいい…」
武綱が考えているとふと異変を捉える
「やっぱこれは玲夜に任せた方がいいな」
武綱が鳳凰城を見つめる
「五体のうち一人…人間が混ざっているからな」
武綱が見つめる中、鳳凰城ではさっきの悪霊が五体の強者に膝をついている
「以上が悪霊退散部隊の現状です」
一人の悪霊が口を開く
「そっか〜、あっちも面白い奴を集めてるんだね」
一人の悪霊がニヤリと笑う
「みんなぁ、楽しみだね」




