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ほのぼの絵画のめっせーじ

この2次創作までたどり着いて下さった、よい中村先生ファンの皆さんへ本作を捧げます。メリークリスマス!


本編終了後、少したった頃のお話です

12月17日の事件から少したったが、レイノルドの、アデルは高潔で思慮深い人物だと言う誤解は、いまだ解ける気配がない。


「マルティン兄さん、エミリー姉さん、聞いてください!師匠がこの絵画に込めたメッセージがやっとわかりました。やっぱり師匠は凄い!」


『また師匠がなんかやらかしたみたいだけど、心当たりある?』

『これ、先日師匠が書いていたピクニックの絵じゃないですか?ほら、「レイノルドは、何の絵なのかよくわからなかったみたい。そんなに下手かしら」って落ち込んでいたやつ』


興奮した様子で話しかけてくるレイノルドに対して、二人はこっそり念話でやりとりをしていた。


過去、料理のレシピ本で魔導の真髄を掴んだこともある末弟子は、今日も今日とて何か深読みをしているらしい。


「なあ、レイノルド、それはただ、皆で仲良くピクニックしている絵だって。」

「そうそう、深淵なメッセージとか、特にないわよ」


最近、絵画に想いを込めて伝えるのが流行しているときいたアデルは、絵を描いた。

みんなで仲良く楽しく暮らしましょう

と言うメッセージをこめて。



ちなみに、「仲良く」のところをアデルは強調したかった。レイノルドや町の人たちは今のところ自分をやたら崇拝しているが、誤解が解けた時に、よくも騙したなと怒られるのが怖いのだ。7年間不要な恐怖をしてきた癖は、すぐには抜けないらしい。




「自分も初めはそう見えました。ただ、この構図をみて下さい。人々は、教会に背を向けて離れる様に歩いていますよね。」


「ああ、まあ、そうだね」

「それがどうかしたの」



それは、迷惑をかけた町の人達と一緒に、教会の見える湖畔に楽しいピクニックに出かけている絵だった。


あまり上手ではないけれど、師匠らしいほのぼのする絵だと、エミリーは思う。

マルティンも同意見で、この朴訥で何の捻りもない絵を見れば、レイノルドの過剰な師匠崇拝も少しはおさまるかなと考えていた。


いたのだが


「この先頭を歩く煌びやかな格好をした人物…これは恐らくイェルクの様な教会王都派の残党です。先程の構図と合わせて考えると、不穏分子が、神の教えと異なる方向へ人々を扇動している暗示なのがわかります。」




『どうして……』

『そうなる……』


心の中で二人は同時に突っ込み、天を仰いだ


長い付き合いで、アデルの性格もよく知っているマルティンたちにはわかる。絵心に乏しく分かりにくいが、先頭に書かれているのは、勇者として、最近は煌びやかな格好をする事が多いレイノルドだ。


「いやいや、違うって」

「ちょっと深読みし過ぎよ」


「そんなことはありません。ほら、列の半ばには男性が湖に落ちそうになって、女性が支えている様子も描写されてます。これは扇動により不幸な目に合う民衆の暗示に違いありません」


(絶対違う……)


マルティンは思った。これは楽しくハメを外し過ぎて湖に落ちそうになる自分と、助けようとするエミリーだ。昔、東の森でそんな事があった。


「そして、最後尾にいる黒髪の女性。これは師匠に違いありません。人々を案じながら見守っているのです。」


(勘違いが酷い……)


エミリーは分かっている。最後尾にいるのが師匠と言うのは正解だ。ただ、人々を案じているのではない。


師匠は現在、誤解が解けたレイノルドとの距離感に戸惑っている。それで無意識の内に距離をあけて描いのだ。


「極めつけは、この湖畔の曲線具合と、教会の位置関係です。地図で確認すると、南4番教会の管轄と見事に一致しました。ここで今、何か起こっているに違いない!師匠はこの不祥の末弟子が、自ら気付いて解決するチャンスを下さったんです。さあ、マルティン兄さん、転移魔法陣の準備をお願いします。」



いやいや、ないないと言うマルティン

一向に引き下がらないレイノルド


(まさか)


 嫌な予感に、エミリーはさっと顔を強ばらせた。


そして、とうとうマルティンが条件付きで折れた


「そこまで言うなら、その場所まで一緒に転移して行くけど、きっと勘違いだからな!勘違いだったら、そろそろ師匠への過大評価は改めてくれよ。」



その言葉をきいてエミリーは悟った。

ああ、これはいつもの展開だと。



不穏な予言が勘違いだったと分かった今、アデルはもうレイノルドの前で背伸びをする必要はない。それで、マルティンとエミリーの2人は、師匠がありのままの姿で過ごしてくれれば、徐々に誤解も解けていくと思っていた。


だと言うのに、事あるごとにアデルは突飛で華麗なウルトラCを決めて、逆にレイノルドの心酔が深まっているだ。


今回もきっとそのパターンだろう。






その数日後、予想通り、嬉しそうにアデルに事件解決の報告をしようとするレイノルドと、疲労困憊のマルティンを、やれやれと言った表情でエミリーは出迎えるのだった。

こそこそ裏話


(1)アデルの絵の構図は「盲人の寓話」と言う有名な寓意画を参考にアレンジを加えています。囁くヴァニタス、面白いです。


(2) 南4番教会の管轄の湖へのピクニックは、実は幼い時にアデルが母親と行った事があると言う設定にしています。楽しい思い出として無意識に描いた的な。

アデル母ついての考察は12/19の活動報告に書いたので、もしよかったら見てやってください。エミ✖️マル妄想も書いてるよ

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東の魔女のあとしまつ
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