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それでも神話は生誕するのか  作者: 鵺獅子
記述12 狼煙を上げよ古戦場
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記述12 狼煙を上げよ古戦場 第4節

 飛行する戦闘機が高原に向けて何かを投下する。一つ、二つ、白い雲の背景にハッキリと影を作る大きな鉄の塊が大地に触れる瞬間、この場にいる誰もがそれを爆弾かと思って身構えた。しかし鉄の塊は激突時に重たい音を上げただけで爆発はしない。地雷のように生物の接近を察知するとともに爆発するタイプだろうか。考えている間にも戦闘機は同じような鉄の塊を高原にペルデンテの領地に落とし続ける。

「間違いない、アルレスの戦闘機だ」

 隣の竜車から顔を出したキャラバン隊の一人が大きな双眼鏡を片手に怒鳴るような声色で叫ぶ。

「だとしたらアレは、連中が好んで浸かってる機械人形の類いだろうなぁ」

 フレアは鉄の塊が投下された箇所を獣のように鋭い眼光で睨み見る。

「機械人形……?」

 側で体を小さくしていたマグナが怯えた声色で繰り返す。

「前の戦争でも使われてたのを見たことがある。連中が得意だっていう思念波共有技術をふんだんに活用して作った、高精度な遠隔操作を可能とした無人の殺戮兵器だ」

「戦争って……」

「あぁ、これはまた、キナ臭いじゃすまされない状況だな」

 会話の途中、再び上空を一機の戦闘機が通過する。その戦闘機が自分たちのすぐ近くの地面に向けて、あの鉄の塊を投下した。「ドスンッ!!」と大地が凹む鈍い音がして、舞い上がった土煙が竜車の周囲の視界を奪う。幸いなことに直撃はしていないが、臆病な性格をしていたらしい何頭かの恐竜がパニック状態になり、キャラバン隊はあっという間に混乱の渦に飲まれる。

「空襲だ!!」

「あれは何だ!?」

「おい、落ち着け!!」

「アルレスの連中がやりやがった!!」

 キャラバン隊の男たちが怒声を飛ばし合う中、土煙が晴れるより先にフレアは竜車から飛び下りて走り始めた。

「どこへ行くんだ!?」

 驚いて呼び止めてしまったが、フレアは返事をするどころかこちらを振り返ることもせず、真っ直ぐに鉄の塊が落ちた方へ向けて走り続ける。

「姐さんなら大丈夫だ。それより、俺たちは早くここを離れよう!」

 ちょうど近くにいた隊員が冷静な態度で他の者たちに指示を出す。

「トンネルまで退避! そこまで引き返せば兵士の駐屯地がある!」

「砦の方はどうなってんだ!?」

「とにかく走るぞ!!」

 竜車の御者たちがやや無理矢理に手綱を引き、恐竜たちにトンネルの方を向かせる。そのまま少しの時間をかけてから、竜車の一団は再度高原を走り始めた。

 

 

 来た時よりも速い速度で高原を駆け、一団は数分としないうちにトンネルの入り口まで辿り着く。付近にはさっきまではいなかった兵士たちが武装した状態で立っていて、キャラバン隊が引き返してきた姿を見るや否や「こっちへ来い!」と誘導の声を上げた。

 トンネルの中に設けられた臨時の駐車スペースに停まった竜車の中から、次々のキャラバン隊員たちが飛び出してくる。兵士に何が起きたのか詰め寄るものもいれば、恐竜に怪我がないかを確かめるために駆け寄るものもいる。

 そんな中で俺たちが真っ先にすることといえば、砦の外に残してきたソウドたちへの連絡だ。出発から早々で大変なことになってしまったけれど、向こうは一体どうなっているのだろうか。

 懐から通信端末を取り出し、画面を見る。すると、こちらが動くより先に、ソウドの方から一通のメッセージが送られてきていたことに気付く。

 

『アルレスキューレの宣戦布告があった。これから戦争が始まるらしい』

 

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