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異世界ジビエ料理専門店  作者: 成夫
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プロローグ1

プロローグ

 

 この物語を語るにはオレの前世というか、転生前の話をしないといけないだろう。

あまり楽しい話でもないので、重く受けとめずに聞いてほしい。

 

オレの名前は稲葉いなば 永華えいが、生まれてから今まで15年間病院生活をしていた。

家族は母親と父親と自分の三人家族で、母親は二日に一度は会いに来てくれるし、父親も週末には様子を見に来てくれている。


 オレは生まれてこの方病気で、食事というものをしたことがない。

詳しい病気はよくわかっていなかったが、どうも食事をする器官である胃や腸に異常があり口からの食事を消化して栄養にすることができないらしい。

そのせいで点滴を打ちながら毎日生きていた。

それ以外は問題なかったため、勉強や読書をしながら毎日をのんびり過ごしていた。


 勉強はPCの通信教育で、たまに先生が来てベッドの近くで授業やテストをしたりもしていた。

食事をできないことはつらかったがそれ以外は、何も嫌なことはなく幸せとまではいかないが、生活していた。あの日が来るまでは・・・


 それはある日の夜、オレはトイレに行くために歩いて向かっていた時、夜勤で仕事をしていたナースと医者が診察室で会話しているのが聞こえてきたのをしり目に歩いていると自分の苗字を呼ばれたので悪いと思いながらも隠れながら盗み聞きをしてしまった。


 「稲葉さんの父親から相談されたんですが、お金が無くてこのままじゃ、お子さんを病院に入れておくことが出来なくなるからどうすればいいかと聞かれたんですが・・・。」

ナースの女性が医者のおじさんに向かって相談をしていた。


 「私もそれは何となく気づいてはいた。稲葉さんのご両親は以前より顔色が悪くなっていたし、

子供の前でも無理して笑っているように見えていたからな。」

医者のおじさんも神妙にそういった。


 「やっぱり無理してたんですね。子供のために無理して働いて節約もして頑張っているとのことなので応援してあげたいんですが、このままじゃご両親も倒れてしまいかねませんよ。」


 「本当は手術をして完治ではないにしろ、食事を自分で出来るようにして入院生活を終わらせたほうがいいんだろうが、それをしようとすると莫大なお金がかかる。それに成長中の子供の移植手術は危険を伴う。無理に強要は出来んだろう。だから明日にでも今後について相談してみようと思う。」


 「そうしたほうがいいですよ。こういうことは早めにしておかないと大変なことになってしまいますからね。」

ナースの女性も納得し安堵のため息をついていた。


 オレは二人の会話を盗み聞きしたことに罪悪感を覚えたがそれよりも話の内容で頭がいっぱいいっぱいになっていた。

自分のせいで両親まで大変な思いをしていたことを全く気づけなかったからだ。

何よりもそのことがつらかった。


 オレは頭が真っ白になり

トイレに行くことも忘れ自分のベッドに潜り込んで布団を頭の上まで被って震えていた。

オレはこれからどうすればいいんだろう。もう両親の前で笑える気が全くしない。

このままじゃ両親に盗み聞きしたことがばれてしまいさらに心配をかけてしまう。

今まで病気で出来なかった食事以外は何不自由なく与えてくれた両親がお金が無く苦しんでいるのをオレのせいにすることは絶対にないだろう。

それがわかってしまうので、余計に胸がいっぱいになってしまう。



それから日が昇るまでの5時間震えていたオレは何を思ったのか、ナースコールを呼ぶ機械のコードを自分の首に巻き付けそれを思いきり引っ張った。

その行動は両親のことを思ってしたのか、苦しみから逃げるためにしたのかは今になっては覚えていない。そしてオレはそこで死んだのだった。

 




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