続・SF風小論 ー 核弾頭ミサイル
核弾頭ミサイル発射後、核が炸裂したその日から、生き残った人たちは地下約100メートルに避難生活を強いられていた。地下壕の生活は人と人が寄り添って生きる場所であり、窓もドアもない、又、共同トイレを使用する。ただ一つ心の支えとなるのは食料に事欠かないということだ。ここには数十万の果物・野菜の種子が保存されており、貯蔵条件も満たしているので、少しの面積を利用して栽培が可能である。幸いにもエネルギーはマグマを利用する地熱発電であり、巨大酸素供給装置(地下水を酸素と水素に分解)があるが、もうかれこれ50年は経っている代物であるから、酸素供給量が十分というわけではない。しかし、戦後のいわゆる放射能汚染を防ぐためには最高の場所であるだろう。暫くこのように避難生活を送っていると子供たちは戦争による鬱積した気持ちを開放するために絵を描いたり、あるいは、デッサンをしてみたりとするが、大概、これらの絵画やデッサンは攻撃する飛行機や戦車、飛び交う弾丸やロケット弾、戦い負傷する兵士、燃える家や燃え盛る建物などで、地下壕の壁に貼り付けている。
地上はというと半世紀経った今でも大気に多量の放射能を含んでおり、又、赤鬼、青鬼が雲上でカミナリ太鼓を間断なく打っていると思われる天候が長く続いている。
百年後、やっと人類は地表に出て新しい文明を築き始めた。核爆発後、文明が誇る記念建築物はほぼ全壊し、エジプトのピラミッドは見るも無惨であり、マルタ島の巨石神殿群は跡形もない。又、古代メソポタミア文明を偲ばせるものも何一つ残っていなかった。その後、各国・各地域で地下に潜っていたサバイバーは約三十万人と判明した。
連帯と団結の名の下、核兵器の悲惨さを二度と繰り返さないためにも人類は「不戦」を誓い未来永劫の国際連邦憲章を作成した。これには拘束力を有する事項が加えられたことは言うまでもない。
他方、天空に飛び立った人類は木星の衛星エウロパ、土星の衛星タイタンを中継基地として宇宙移民を四方八方に送り出し、その勢いは太陽圏外縁部に達していた ― 太陽系、及び、海王星の軌道の外側に太陽系外縁天体と呼ばれる小天体が発見され、太陽系の領域も従来より広がりつつある ― この外縁で光子よりも速い真ニュートリノという素粒子が発見されたことから、アインシュタインの物理学が根底から覆され、この真ニュートリノに乗せて情報をパラレルワールド*に送り込むことができるという時代に入ったが、実現化したのはその20年後のことだ。その時、地球と瓜二つの天体が忽然と姿を現し、そこでは高度な科学技術を擁する宇宙人の侵略が始まろうとしていた。
核兵器と戦争
*パラレルワールド(Parallel universe, Parallel world)とは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われている。そして、「異世界(冥界)」、「魔界」、「四次元世界」などとは違い、パラレルワールドは我々の宇宙と同一の次元を持つ。(Wikipediaから引用・抜粋)