表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

④日本人の「可処分所得」は20年前より年間40万円減少している!

筆者:前回の③のようにこうして懸命に「サービス残業」をしてでも正社員として働いている会社員の方々ですが、給与の全体はどうなっているのか? 

そこも見ていこうと思います。

 


質問者:待遇が悪いだけでなく給与そのものも下がっているんですね……。



筆者:ええ、正確に言うのなら給与は20年間横ばいで可処分所得が下がっているということです。


 全てが会社員の数字ではないとは思うのですが労働者の9割をも占める会社員ですから、その実態を如実に反映していると言っても良いと思います。


 特に可処分所得については税制の上では①でもお話ししましたが、会社員の方が圧倒的に不利ですからね



質問者:税金や社会保険などが上がっていることが原因でしょうか?



筆者:そうですね。国民個人に関する主だった税金だけを見てもですね、

〈消費税〉1989年に消費税が3%で導入→現在は10%(軽減税率8%)に増税

 〈厚生年金の保険料率〉1990年代初め約14%→現在は18.3%に引き上げ

 〈国民年金の保険料〉1990年に月8400円→現在は月1万6590円に引き上げ

 〈健康保険料〉2008年に8.20%→現在は10%以上に引き上げ(協会けんぽ:全国平均)


 主だったところだけでもこんな感じです。



質問者:やっぱり、ちょっとずつ上がっていることから気づきにくいんでしょうか?



筆者:そうでしょうね。

また、皆さん普通に会社員をやっていると勤続年数や勤めているポジションなどに応じて少しずつ昇給していくのであまり実感が無いのかもしれませんが。

 日本の実質賃金は下落しています。


2021年3月18日 長周新聞より

『20年で進んだ国家の衰退 主要国で最低水準の日本の賃金 配当金や役員報酬だけはうなぎ登り』より、

『貧困率を決める可処分所得(税金等を差し引いた手取り額)の中央値は1997年の297万円から、2018年には254万円となり、20年で43万円も低くなっている。


6人に1人以上がその半分の年間127万円以下で暮らしていることになり、月額換算では10万5000円にしかならない。


ひとり親世帯になると半数(50・8%)が貧困に苦しんでおり、

これもOECD加盟国中でワースト1位だ。この低賃金のなかで税金だけが上がり、若い世代が子どもを産み育てたり、貯蓄に回す余裕もなく、少子化に拍車がかかる要因になっている。』


 というように、手取りは年間40万円も減っています。

 月換算で行っても4万円減っていますからその分貧しくなっているのです。



質問者:これは問題ですね……。

 しかし、給与が減った分は一体どこに行ってしまっているのでしょうか?



筆者:とてもいい質問です。先程の長周新聞の記事の続きを見ていきます。


『反比例するように、この20年間で急上昇したのが大企業の株主配当だ。

財務省の「法人企業統計調査」を見ると、2001年には4兆4956億円だった配当金は、断続的に上昇を続け、2019年は28兆4126億円に達した。20年で6倍以上にも膨らんでいる。


2001年から始まる小泉構造改革のもとで米国流の株主至上主義が持ち込まれ、さらには2012年からのアベノミクスによる金融緩和で日銀が株式市場に資金を注ぎ込み、その官製相場に乗じて海外ファンドなどが日本株を買い漁った。


労働者が生み出した利益は、国内外の一握りの株主が掴みどりし、生産を担う労働者の側は、子どもを産み育てることもできない貧困生活を強いられる構図になっている。』


 こうして社員の頑張りと言うのは株主配当若しくは利益剰余金となっているわけです。



質問者:社員の頑張りは株主へ行っているだなんて報われませんね……。



筆者:更に法人税については減っています。

本来の目的としては法人税分の利益を給与に還元する狙いのはずが株主配当ですからね。

 

ちなみに法人税の推移ですが、1984年の時は42%だったのが、1999年に30%、2011年には25.5%、現在は23.2%となっています。



質問者:どうして法人税は下がっているのでしょうか?



筆者:お題目としてあるのは「海外の法人税並み」にすることによって、

「海外へ企業が逃げないようにする」ことや「海外企業を誘致する」と言ったことが挙げられます。



質問者:実際に法人税は海外と比べて見てどうなのですか?



筆者:確かに欧州に関しては今の日本の税率ぐらいの水準ではあります。


 しかし、タックスヘイブンと言われる租税回避地はほとんど税金がゼロですからねぇ……結局のところそこに逃げられてしまっているために海外企業の誘致には繋がってはいません。



質問者:租税回避地というのはなぜあるのでしょうか? どの国も損するので規制されそうな気がしなくもないのですが……。

 


筆者:確かに“国単位”で見れば損をするかもしれませんが、“個人単位”で言えば大きく得をする権力者が存在します。


 2016年に公開されたパナマ文章では、

租税回避をしている人物として挙げられているリストに、

イギリス王室や当時の各国の首相の名前もありました。

このように非常に多くの権力を持っている人間が税金を逃れていることが発覚しました。


 一定の権力をバックに守られているので安心である意味“お墨付き”と言う状態なわけです。



質問者:なるほど……。自分がお世話になるから黙認しているわけですか……。



筆者:そもそも、国が全世界にある以上は法人税とか関係なくそこに住んでいる人に対してビジネスチャンスを求めてやってくるわけです。


まぁ、話が逸れたので戻しますがともかくタックスヘイブンが世界のどこかにある以上はあんまり法人税を下げることに意味を感じません。


 トリクルダウンと言う大企業が儲かれば中小企業や社員も儲かると言った考え方がありますが、会社員の給与が上がっていないのが実際の現状としてあります。

 


質問者:それならどうしたらいいのでしょうか?



筆者:「内部留保税」を課せとは言いませんが、法人税の累進課税は強める必要があります。

 研究開発費を増やすことによる税額控除などによって実際は20%を切る法人税負担率と言う話もあります。


消費税減税のために法人税を引き上げる――それぐらいの措置はして欲しいところです。

 収入が減っていることでインフレを除いた消費は0.5%減少しているそうですから、企業から見てもめぐり巡れば苦しくなると言ったことを説得するべきです。



※筆者は税金を上げるより国債を発行して国民に還元しろと言う発想ではありますが、

 一般的には広く浸透していない考え方なので、とりあえずはこういう書き方とさせていただきました。



質問者:内部留保から給与に転換すると言ったことは難しいのでしょうか?



筆者:「内部留保の利益がある」というとどうにも預金に多額の残高が残っているイメージがありますが実際のところはそうではありません。

 利益にも費用にもなっていない設備投資などの額になっていると言った可能性があります。


 設備投資の備品や建物と言った大きな金額のモノは支払いとして現預金は減少するのですが、

費用としては年数分割で計上されることになります(減価償却と言います)。


 これらのモノは別に将来の投資ですから従業員の待遇改善には多少繋がっているのかもしれませんが、給与に直接反映されるものではありません。



質問者:なるほど……内部留保の利益がすぐに給与として支払うことが出来ないわけなんですね……。



筆者:そういうことになります。

このように大企業でも、株主至上主義と化しており配当のために労働力を酷使しているといった現状になっています。


特に大企業ですと中小企業よりも会社の存続が約束されていますから、

尚更社員の方は踏ん張って頑張ろうと言った形になっていきます。



質問者:最低賃金を上げたほうが良いという話もありますが……

諸外国と比べて日本は最低賃金が低いんですよね?



筆者:確かに最低賃金は先進国の中で最低ではありますが、

これも事はそんなに単純ではありません。

最低賃金だけを上げると正社員が地獄を見る可能性が上がるように思えます。



質問者:えっ……非正規雇用の肩の収入が増えて良い事のように思えるのですが……。



筆者:確かに一見するとそのように感じます。

 しかし、主に非正規雇用の主婦の方ですが「103万円の壁」までしか働いていないという事実があります。

 この「103万円の壁」というのは配偶者控除の満額上限の金額です。

 ここから働くことによる効率が急激に悪くなるので、

主婦の方は特にこの辺りで「働き止め」をしてしまうことも多く、

時給を上げることによって主婦の方の働く時間が減少します。


 すると、その分の皺寄せがなんと恐ろしいことに正社員に押し寄せてくるのです。



質問者:なるほど……これも簡単な問題では無いのですね……。



筆者:このことがスッポリ議論から抜け落ちているので何だか間の抜けた話になっているように感じます。

 配偶者控除満額上限を引き上げたり、扶養家族になれる上限(年収150万円)を引き上げることが各家庭を裕福にすることにも繋がると思いますね。


 お役人の方々は庶民の気持ちが分からないのでしょうね。

 配偶者控除マックスで受けられる上限を上げたところで税金額総額が大きく変わるとは思えません。

 むしろ消費が増える可能性が上がるので日本経済は確実に良くなります。



質問者:やはり税金の構造的に国民が不利になるのですね……。



筆者:話がまた脱線していったので戻りますが、間の抜けた税制がことごとく国民を苦しめ、可処分所得を下げています。


 特に会社員がこの「税制どばっちり」を一番受けているのです。


 国債を発行すると言ったMMTの手法を取らずとも今の税制を改革する必要性を感じます。


 今の円安株高の影響を受けているのは一部の大企業だけですからね。


 次に3職の特徴について見ていこうと思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ