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③タダ働きである「サービス残業」はなぜするのか?

筆者:次に労働者の労働環境について見ていこうと思います。



質問者:労働環境についてはどのような問題がありますか?



筆者:会社員の労働環境は一言で言えば“悪い”です。

まず、その時代背景と言いますか状況から説明しますと、


 やはり、と言いますか現在のところ日本はGDPが停滞している中、

長年デフレ経済で日本が苦しんできたという背景があります。


 そんな中でコストをいかに抑えるか? と言うことになると固定費になります。

しかし、家賃や光熱費と言ったモノは中々削れません。交渉相手が企業だったりしますからね。

 

 そうなると大抵の企業は如何にして従業員の給与をカットするか? と言った話になってくるのです。

 これは従業員は商品そのものではないことが多い上に“替えがきく”ことから悪く言えば“ぞんざいに使われる”と言うことが構造としてあります。


 勿論、全ての会社に関して言えるわけでは無いですが、

多くの企業ではそう言う傾向があるように思えます。



質問者:なるほど、長引く不景気が給与の削減に繋がっていくのですね……。



筆者:また、具体的に給与をカットせずとも“サービス残業”と言った文化が日本にはあります。

 いくら残業しようとも定時にタイムカードを切るなど不当な労働を強いられている人も多いと思います。



質問者:学生の方は“どうしてそこまでしてお金が貰えないサービス残業をするのだろう?”

と思うのですがどう言った構造が考えられますか?



筆者:やはり社員の皆さんは安定雇用について考えます。

特に正社員においては特に再就職先をしかも正社員で探そうとすると大変手間がかかります。

退社の手続きやら面接を受けに行ったりするのは本当に大変です。

 

 正社員と非正規雇用とでは全く待遇や給与体系は異なっています。

 賞与や手当などで雲泥の差ですから正社員でいたいと思います。


 ある統計によりますと正社員の生涯年収は1億7千万円、

それに対して非正規雇用の生涯年収は1億3千万円と、生涯年収の差は4000万円以上とも言われますからね。


 開き直って就職しないと決めちゃえば楽かもしれませんけどね(笑)。

 

基本的にはそう言う発想にはならないと思うので、

そうなると、少し無理をしてでも会社にい続けたいと思うのです。


上司からの“お願い”と言う形で半ば強制的にサービス残業は行われていくのです。



質問者:確かに私もそうかもしれません……。



筆者:また、不当な労働規約によって“残業をすることが逆に社員評価の低下”ということで無限にサービス残業をさせられているという記事を見つけました。


文春オンラインの2022年7月6日の記事で

『《店長が告発》「すき家」のゼンショー傘下ファミレスチェーンでサービス残業前提のあまりに“理不尽”な評価制度「残業を申告すると年収が50万円下がることも…」』


『Aさんが見せてくれた給与評価のサンプルの左下には減点対象の項目がある。その中に「時間外労働75時間超え1回、又は36協定違反4か月以上」とあり、

残業が増えると給与評価が下がってしまうことが分かる。


 36協定とは労働基準法に定められた法定労働時間(一日8時間、週40時間の労働時間)以上の労働を従業員にさせる時に雇用者と従業員が締結する労使協定である。


 本来であれば、雇用者が不当に長時間労働を従業員に強いないために存在するものであるが、ココスでは従業員がサービス残業しなければならない評価制度に利用されているというのだ。


 Aさんの月間勤怠表を確認すると、勤務時間が13時間を超えた日は一日もない。しかし、1日の勤務スケジュールを記載したデータからは14時間以上の勤務をした日が何日も存在し、残業時間を少なく申請していることが分かる。こういったことを日常的にしなければ、給料が下がってしまうことにAさんは複雑な心境を抱いている。』


 この後、この会社では問題が表に上がったので労働規約は改定されたようですが、

 こういう酷い会社と言うのは普通に存在しているように思えます。

 しかも、マイナーな会社で起きているわけでは無いですから日本全体で蔓延化している可能性も十分にあります。



質問者:こ、これは酷いですね……残業を申告すると36協定を理由に社員としての評価が下がって給与が下がるだなんて……。

 ですがこれは違法では無いのですか?



筆者:労働基準法違反だとは思います。

 ただ、違法などが発覚しても営業停止処分や罰金などの重い処罰はされず最初は是正勧告がなされるだけです。

 社員から告発されたり、問題が発覚した時に会社は修正すればいいだけです。


 内規について国に提出する義務も特にないと思うのでもう会社からすれば

「やったもの勝ち」と言うことになります。


こういった会社個別の労働規約については入社前では余程調べなくては分からないですし、規約に無い「悪しき慣習」になっていたなら入社してからでしか実態は分かりません。



質問者:確かに、面接官は自分の会社を悪いようには言いませんからね……。



筆者:そうなんですよ。よっぽど悪評が広まっていない限りは入社前からは分かりません。

 そう言った転職のリスクについても経験を経ていくうちに分かってくるようになりますから、“サービス残業”を社員は強いられているということです。

 


質問者:「サービス残業」で不当に給与を払わないことについて訴えることは出来るんですよね?



筆者:ええ。ただ、訴訟ではなくまずは労働基準監督署による仲介や労働審判をすることになります。その後に納得が出来ない際に裁判と言う形になります。


 実際にサービス残業は認められるでしょうし。そして、勝つことは出来るでしょう。

 また、未払いの分は2年分遡って請求も出来ます。

 ただ、この未払いと主張する時間を正確に算出するのも難しいですよね。


 更に、役所に行く手間などを考えますと中々重い腰を上げるのは難しいのではないでしょうか?


 しかも、このように給与の問題について争いになればまず雇用関係の継続は難しくなりますからね。

 やはり転職について考えていかなくてはならないでしょう。


 このようにして社員の皆さんはサービス残業を受け入れざるを得なくなり「泣き寝入り」と言った形になっているわけです。



質問者:なるほど……。



筆者:次にリモートワークが広がったことにより、「更にサービス残業が増えた」と言うことについて触れていこうと思います。

 

 少し古いですが、他にデータが無かったので、緊急事態宣言が出された前後に出された

2020年6月に行われた連合の『テレワークに関する調査2020』を参考にさせてもらいますけど、


 2020年4月以降のテレワークの状況について、「通常の勤務よりも長時間労働にあることがあった」と半数以上(51.5%)が回答しました。


 また、時間外・休日労働をしたにもかかわらず申告していない回答者が65.1%に及んでいます。



質問者:リモートワークでも苦しんでいる人がそんなにもいるのですか……。



筆者:これは、リモートワークだと家にいて行っていると“どこまでを仕事にするのか”と言う明確な線引きが出来ませんからね。


時間外労働・休日労働は原則として禁止とし、どうしても必要な場合は上司に申請し、

その承認を得た上で行うというように定めているところが多いと思われるからです。


そうなるとリモートワークの残業代は「自宅での時間外労働」と言うことになり請求することは諦めようといった流れになるのです。


もっとも、これは業種によっては“働き方が楽になった”と思う方もいらっしゃると思うので、リモートワークそのものが“悪”であるとは一概には言いませんけどね。


リモートワークだと成果量によって報酬を支払うこととした方が良いのかなと思いますね。

そうすれば、社員のサボり疑惑と会社の働きの搾取の中間ぐらいですからね。



質問者:確かにそれぐらいが良い落としどころのような気がします。



筆者:ただ、リモートワークになったから“給与を減らす”と言うのも先ほどの連合の調査だと3割の企業が回答しているようですから、


基本的には会社としてはどういう形であれ“同じ給与で多く働かせたい”と思うか

“給与をカットしたいという思考でいるのです。



質問者:なるほど、これもデフレ経済の産物なんですね……。



筆者:この記事が初見の方のために以前のエッセイで書いたことをもう一度書かせてもらいますが、

 現在の日本の物価上昇率は2%を超えていますが、日本の生活費術品を除いたコアコアCPIに関しては1%前後です。

 つまり好景気だから物価が上昇しているわけでは無いのです。

ほとんどの物価上昇は円安の影響だと思われます。

 

 このために“デフレは継続している”若しくは“物価が上がっているのに給与が上がらない”と言うスタグフレーションという最悪の状態なのが実情です。


 

質問者:その上で過酷な労働状況であることはほとんど変わらないのですね……。



筆者:ええ。そういうことになります。

 次に、そんなに働いても日本人の可処分所得が上がらないことについて触れていこうと思います。


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