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世界最強は今日も負け続ける  作者: 青赤黄
青の宝玉
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宣戦布告

 青の宝玉。

 それは代々ブルー王国の王に受け継がれている国宝である。

 その効果は、青の宝玉を透かして人を見ると、その人が嘘をつているかがわかると言うもの。

 さらに選ばれたものだけが、それより上の、人の心を読み、それだけでなく、人の未来、過去を見ることが出来ると言われている。

 どうか、僕が選ばれますように、ブルー王国第一皇子、フライメント・ウル・クライはそう思いながら見て、、直径2センチ程度の青の宝玉を覗き、使用人に嘘を吐かせる。

 青の宝玉を透かして見た相手が嘘を言うと、その相手の上に重なるように嘘、と出てくるのだ。

 皇子にはそれしか見えなかった。

 選ばれた存在ではなかったと言うことだ。

 そのことに落ち込んでいる時、隣国の皇女と会うことがあった。

 彼女は優しく、皇子の傷を癒した。

 妻にしたいと皇子は思った。

 それから、その隣国のトゥエル王国との友好関係は以前よりも良くなった。

 良くなった。

 良くなったはずだった。

『我々トゥエル王国は貴国の策略には乗らない。もしこれ以上続けるのであれば、友好条約は無かったことにする          

トゥエル王国 皇女 ツワン・エグレス・トゥエル』

 なぜ、彼女が宣戦布告をしてきたのかが分からない。

 僕の行動の何がいけなかった。

 どこがダメだった。

 以前よりも友好関係は良くなったと思ったのに。

「だから、それをあなたに調べてきてもらいたいんだ、公平な調停者として、なぜ彼女が宣戦布告をしてきたのかを」

 皇子から、一国の王となったフライメントの悲痛な声音を聞きながら、リオルは出された菓子をサクサクと音を立てて食べ、ズズズと名産品の紅茶を飲んで、ふぅと一息ついてから。

「いいよ〜だからこれ、も一個ちょうだーい」

 と、軽い口調で言った。

 本当に大丈夫なのかとフライメントは心配になったが、青の宝玉を透かして彼を見続けて会話をし、彼の言葉に一つの嘘がないことがわかっていたから、一応信用することにした。

 あくまで一応。

 彼が本当に世界最強だとは思わなかったからだ。

 とてもじゃないが、僕が負けるとは思えない。

 今すぐにでも、僕が一人だけでも捉えられそうだ。

 こんな人に頼んで、本当に良かったのか?

 また心配になったが、頼るしかない。

 この人が評判通りの人でありますようにと、祈るしかない。

「ああ、そうだ、成功報酬の話なんだけどさ」

「あっはい、なんでも言ってください。出来ることならしますよ」

 フライメントはリオルから外れていた意識をリオルに向けて、応えた。

「じゃあ、青の宝玉をもらうよ」

「えっ!」

 断ることも出来ないうちにリオルは部屋から消えていた。

 そんなのは無理だ。

 戻ってきたら、ちゃんと言おうと、決心した。


「はぁい、ツワン・エグレス・トゥエル皇女はじめまして、世界最弱です。君とお話がしたいのでお時間もらえますか?」

 大嫌いなデスクワークを何時間もやって、メンタルが削られている時、目の前に急に見知らぬ男が現れて、その男見たこともないような変なポージングをしながら、丁寧な口調で話がしたいと言ってきたら、果たして、内気で、人見知りな皇女様はどんな反応をするのか、勘がいい人も、悪い人もわかるだろう。

 叫ぶ。

 椅子から転がり落ちて、トラウマが目の前に現れたかのような顔で叫ぶとは、誰もわからなかっただろうが。

 それに、別に完璧なくらいの箱入り娘であるツワンには、男に関するトラウマも、女に関するトラウマも、おおよそトラウマと呼べるような過去も、何もない。

 そして、部屋の外で、立っていた戦闘メイド二人が部屋に入ってきて30秒もかからず捉えられ、手を後ろに縛られて正座させられたリオルはもう一度、君と話がしたいんだけど、と言った。

 だが、皇女ツワンは、髪が長い方の戦闘メイドの後ろでプルプルと子犬のように震えていて、リオルの言葉は聞いちゃいない。

 だが、リオル以外の声なら聞いていた。

「ツワン様、彼の話を聞きましょう」

 そう言ったのはタキシードから中のシャツまで黒で統一した執事のような男だった。

 男はこの辺りでは珍しい緑色の目をしていた。

「で、でも怪しい人だよ」

 子供が怖がって親に嫌がっていることを伝えるように、目の端に涙を浮かべながら、皇女は執事に言う。

「大丈夫ですよ、彼女たちもいますしね」

 執事は戦闘メイドを指して言って、面白いおもちゃを見るような目で皇女を見る。

 皇女だけでなく、メイドたちも、その目には気づいていないようで、「わかりました、ハヤマ様」と、メイドはリオルの首から手を離す。

「そ、それで、話って何?」

 皇女が今更上から目線で高圧的な態度を取るが、本当に今更だ。

「ぁぁ、似てるなぁ」

 今更すぎる態度の皇女を見て、リオルは本当に懐かしそうに言って、しんみりとした自分を吹き飛ばすかのように、

「君を殺しに来ました」

 満面の笑みで言ったままでリオルの首から360度回る。

 リオルはゴブっと血を吐き出しながら「いやいや、ごめんごめん、冗談だよ」と言って、首を回す。回されたのと同じ方向に720度。

 ブチブチと、筋肉がちぎれる音がして、最後にゴキンと鈍い音が鳴り、リオルの首が床に落ち転がる。

 それは皇女の体の下にまで転がって、スカートの下に入り込んだ。

「あっ白い」

「——————————ッ‼︎‼︎」

 皇女は声にならない声で叫んだ。

 男に下着を見られたからではなく。

 初めて人の首が千切れ、噴き出す血を見たから。

 そして皇女は、その場にへたり込んだ。

 自分の股の間にその頭があることなんて気にすることは、気絶していたら当然気づかないし、自分が失禁したことにも気づかなかった。

 のちにリオルはこの時のことを今までの人生で1億6824万5393番目に不幸な出来事だったと語った。


 びしょびしょのままで、頭をを放置されて、『回帰』の能力で、全状態を正常にし、頭もすぐに何事もなかった時のように乾いてから、頭を再生させる。

「そういや、新しく頭を生やすって方法もあったなぁ僕のバカ」

 そう言って、リオルが両手を合わせて、手を捻ると、リオルの頭が潰れて、首から、新しい頭が生えた。

「ふぅ、これでよし、さっきのはバッチかったしね」

 と、一部の人から大批判を浴びそうなことをいってから、部屋を出る。

「よお、世界最強」

 部屋から出るとすぐに、黒い服の執事が声をかけてきた。

「ヤァ、今代の魔王、こんなところにいていいの?」

 リオルが、男が1番の秘密にしていることをあっさりと言うが、男はそれを気にせずにリオルと魔王として話す

「ああ、大丈夫だ、むしろあそこにいる方が危ねぇったらねぇ、あいつら全員俺の座を狙ってきやがるしな、戦うのは好きじゃねぇ。まぁ、俺のことはこのぐらいでいいか、あっ、やっぱもう一つ、俺の名前クグルだから」

 そこまで言うと、魔王はクックックっと笑い出して、

「それにしてもあのメスガキの醜態、ありゃマジで笑えるわぁ」

「ちょっとぉ、こっちからして見たら悲惨の一言に尽きるんだけど。だいぶ最悪な気分を味わったものだぜ?君も口を塞がれて、目に液体を注がれる気分を味わえばいいんだ」

「ごめんだね、俺はロリコンじゃねぇんでな、あんなのはご褒美にはならねぇよ、むしろ拷問だよ」

「いやもう、ほんとその通り」

 僕はそう言って、クグルと一緒になって笑った。

「で、なんのようでここに来たんだ」

 空気がひしゃげて、重力が重くなる。

 これはただの比喩。

 ひしゃげてのはリオルで、全身の体重が倍増する。

 腕も足も、背骨も肋骨も、全身の骨という骨がボロボロになって、ひしゃげた。

 そんな状態で、「いやー別に?ただ頼まれたから来ただけだよ」と、いつも通りにリオルは応える。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 クグルは黙り込んで、リアルを舐めるように見る。

「証拠がねぇよなぁ?」

「うん、ないよ、だから君はここで僕を殺すのは間違っちゃいないよ」

「自分からそれいうかよ」

「これを自分からいえなきゃ僕じゃないね」

 傑作。

 ニヤニヤ笑いながら、クグルは言う。

「俺の部屋で話をしよう」

「オーケー」

 魔王の後に、リオルはホイホイついて行きながら思った。

 あー、お菓子食べたい。


 魔王の部屋に着くと、魔王が「ところで君って本当に世界最強のリオル•クライシスなのか?」と訊いてきた。

「いやいや、違うよ。僕は世界最弱のリオル・クライシスだよ」

「ははっ、世界最弱なんて謙遜してるのかよ、謙虚だねぇ」

「いやいや、謙遜もしてないし、謙虚でもないよ、僕はどっちかって言ったら傲慢だね」

 僕は7大罪の何の称号も持ち合わせちゃいないけどね。

 リオルはそう言ってくくくと笑った。 

「ところでさぁ、君って四王と戦う気ある?」

「はぁ?何でここでそんな伝説を出すんだよ、いねえだろ、四王なんてよ」

「チッチッチッ、いるんだなぁこれが」

 リオルは得意げに言う。

 その表情にイラッとしながらも、魔王はリオルを殺すのを我慢して「本当にいるのか?」と訊く。

 ニヤニヤと笑いながらだが、目が笑っていないため本気らしいとリオルは判断して、その伝説に対する人の恐怖心というのを再確認できて、リオルは満足する。

 こんなふうに四王を怖がっている人がいるからこの一万年は四王の粛清がないんだよね。

「四王ってのは、ナメクジ、蜘蛛、蛙、蛇の四体のことで、みんな自分の奥さんラブなんだよ。奥さんを罵倒しようとしたら、すぐに殺されるね、弁明の機会なんて与えられずに。それだけ大好きなんだよ〜」

 リオルがそう言って、頬に手を当てて体をくねくねさせるのを見て、気持ち悪いなぁと思いながら、

 クグルは四王のことを仮想的な危険ではなく、現実的な危険として捉えることにした。

「そいつらってどのくらい強いんだ?」

「えっとねぇ、普通の人がどれだけ束になったところで絶対に勝てない、能力持ちでも10人、いや100人に一人が傷を与えられるかどうかってところかな?唯一勝てるとすれば僕の兄か、神のバクくらいでしょ」

「神のバグ?」

「うん、神のバグ。勝てるとしたら僕の兄くらいかな?」

「ブラコンが」

「違うよ!正当な評価‼︎」

「ふーん、そんなにつえーのかよ」

「うん。僕の兄が世界最強だよ。宇宙最強と言っても過言ではないし、なんなら、全世界最強だと言ってもいいくらいだ」

 全世界最強だってなんだよ。

 クグルはそう思ったが、訊くのが面倒だったので訊くのをやめる。

「さて、じゃあ本題に入ろうぜ?」

「あからさまに話題を変えたねぇ、全世界のことを聞きたくはないの?」

「いらねぇよ、それでお前は何しにきたんだ?」

「それはねぇ、ブルー王国の使いとしてだよ」

 えっへんと、リオルは偉そうにする。

「本当にかぁ?お前が?使者?」

「そう、僕が使者だよ」

「ハァン、んじゃ、話し合うとしようぜ」

 そう言ってクグルは立ち上がった。

「どこに行くの?」

「あのお嬢様のところだよ。てめーはここにいな」

「りょうかーい」

 リオルが返事をするときには、クグルはもう外に出ていた。

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