54回目 異世界人の戦争 1
「凄い……」
思わず感想が漏れる。
その声は小さく、エンジン音と走行音に消えていく。
それだけディーゼルエンジンとキャタピラの音は大きく騒々しい。
もっとも、それでもかなりの静粛性を誇ってるのだが。
しかし、感想を漏らした男は、静かさよりも破壊力の方に関心を向けている。
今さっきまで向かい合っていた敵戦車。
それを簡単に撃破していってるのだから。
「これなら、俺たちにも……!」
確かな手応えを掴んでいく。
男は第一大陸人である。
来訪者に国をおわれた難民だった。
この先どうなるだろうと思っていた。
どうにもならないとも考えながら。
敵は強力だった。
空から戦闘機で襲いかかってきた。
地上では戦車に蹂躙されていた。
必死になって戦う自分の国の軍隊がそれらに粉砕されていった。
そんなものを少年期に見たせいで、絶望感は大きかった。
こんな連中に勝てるわけ無いと。
だから、ある時に聞いた話も全くあてにしてなかった。
「……なんでも、この窮地を救ってくれる勇者を召喚してるらしい」
そんな話だ。
だが、どんな勇者があんな鋼鉄の化け物を倒すというのか?
(無理だろ……)
反射的にそう思った。
しかし、現実は更に反転する。
かないっこないと思っていた敵。
それを簡単に蹴散らす召喚された勇者たち。
それが日本という国だと知るのは後になる。
そんな日本に憧れ、男は日本へと向かった。
残念ながら来訪する事はかなわなかったが。
だが、日本にゆかりのある場所には向かった。
そこで保護されて、成人である15歳まで教育を受けて。
それから迷わずに軍隊に志願した。
志願した理由は単純なものだ。
日本による手引きで新たな部隊を作るという告知。
それを聞いて迷わず応募した。
倍率は高かったが、上手く募集枠に入れた。
それから男は訓練を受けていく。
その中で、適性があるとされて新設される部隊に配属された。
そこで男は出会った。
第一大陸の軍隊に配備された戦車に。
それを見た時の衝撃は大きい。
かつて自分たちを蹂躙したものと似た形。
反射的に恐れを抱いた。
同時に、自分たちもそんな恐怖を使えるんだという興奮。
これなら敵とも戦えると思った。
それから更に訓練が続き。
いよいよ始まった第二大陸解放戦争。
その第一陣に決まった男は、第二大陸で思う存分暴れていく。
それが出来るほどに、日本の協力で作られた戦車は強かった。
主砲の90ミリ砲は遙か遠くから敵を撃破出来る。
それを可能とする照準装置も、夜でもしっかり見える暗視装置も凄まじい。
更に敵の攻撃は、装甲で完全に弾き飛ばす事が出来る。
何年も前に恐怖を抱いた敵戦車をだ。
そんな強力な戦車が、最高時速60キロで走る。
30トンというこの巨体がどうしてそんなに速く、と思うほどだった。
走・攻・守の全てが揃った圧倒的な破壊力。
それをもって敵戦車を撃破し続ける。
迎撃してくる来訪者の戦車は、簡単に貫通されて動かなくなる。
かつて抱いていた恐怖を男はふりきる事が出来た。
いや、あるいは今も強く抱いている。
抱いているからこそ、そんなものを振りまいた敵を容赦なく破壊していく。
ある意味、復讐といえる。
だが、それは全くもって正しい行為である。
復讐は、してる方が悪いのではない。
復讐されるような事をした者が悪いのだから。




