22回目 敵兵の嘆き
「なんで、なんでこうなる?!」
その戦車兵は、激昂するように叫んだ。
彼の────来訪者の乗る戦車は、世界最高の能力を持つはずだった。
来訪者達の持つ魔力を最大限に増幅する魔術機関。
この魔術機関によって走り。
増幅した魔力が防御の力場を作り出し。
そして、魔力を固めた砲撃で敵を砕く。
その威力はこの世界で十二分に発揮してきた。
しかし、今それが通用しない。
鉄の装甲と、魔力の力場は敵の攻撃を止める事が出来ず。
一撃必殺の魔力砲の射程に近づく事も出来ない。
せめて敵に接近できればと思ってしまう。
「それが出来れば…………」
それが出来れば確実に敵を撃破出来る。
なのに、全く近づく事も出来ない。
もともと、おかしな状況ではあった。
この星で残った最後の大陸。
そこに侵攻した時点で何かが狂っていた。
本来なら既に制圧完了していたはずなのだから。
しかし、最後の大陸の上陸してから何年経つだろうか。
制圧完了の吉報は全く届かず。
それどころか、別大陸にいた彼らにも出動命令が下った。
何がどうなってるんだと誰もがいぶかしんだ。
そうしてるうちに、最後の大陸に集められ。
事の次第を知る事になる。
最後の仕上げに取りかかろうとしたら、強力な敵があらわれた事。
それらにより、あらゆる侵攻作戦が失敗した事。
ならばと、大兵力で敵に攻め込み、一気に制圧する事になった事。
それを聞いても、誰もが半信半疑だった。
まさかそんな事があるわけないと誰もが思った。
だが、出撃してこうして敵に接近すると、それが事実だったのが分かる。
敵に全く近寄れない。
近づけば確実に撃破される。
その事に、来訪者である戦車兵は恐怖をおぼえた。
(次は自分が?)
撃破されるのは自分かもしれない。
そう思った。
今まで感じたことのない恐怖をおぼえた。
だが、この戦車兵は運が良かった。
仲間が次々に撃破される中でも、奇跡的に生き残る事が出来た。
敵の防御陣地の近くまで接近する事が出来た。
戦車に搭載されてる魔力砲の有効射程まで近づけた。
あとは魔力を撃ち出すだけ。
狙いをつけて、引き金を引く。
「くたばれ!」
叫びながら魔力砲を放った。
狙い通りにそれは、敵の戦車に向かっていく。
赤く長く伸びる光は、そのまま敵の戦車に当たった。
当たって、はじかれた。
装甲の表面で火花のように散っていった。
「え?」
思わず間抜けな声が漏れた。
そして。
狙った戦車に狙い返され、撃たれる。
戦車兵は、自分が死んだことに気付かないまま、戦車ごと撃ち抜かれて破裂した。




