21回目 前線防衛
空での戦いが進む中。
来訪者達の地上部隊も進んでくる。
それらは空軍と連携し、ほぼ同時に戦線に殺到しようとした。
しかし、日本・異世界人の前線に到達する前に、彼らの空軍はほぼ壊滅。
制空権をほぼ喪失していた。
それでも来訪者達は怯まず前進を続けた。
空にもまして、地上には膨大な数の軍勢があふれている。
その数による勢いで前線を突破しようとしていた。
そんな彼らを、まずは長距離ロケット弾が襲う。
多連装ロケットシステムMLRSから発射されたロケット弾。
それは敵の頭上で更に子弾を放出していく。
それそのものが爆発物である子弾が、来訪者達の頭上から襲いかかった。
狙われた周辺一帯が攻撃にさらされていく。
来訪者の戦車は、その子弾に当たって撃破され。
あるいは、地上に落ちた子弾を踏んで撃破される。
短時間のうちに来訪者の地上部隊は、数多くの兵力を失う。
しかも、これで終わるわけではない。
更に長距離砲による遠距離攻撃が続く。
放たれた榴弾は、地面に着弾すると同時に破裂。
爆風と破片を周辺にまき散らしていく。
それに巻き込まれて、来訪者の戦車はキャタピラを破壊されていく。
中には運悪く撃破される車両もあった。
こうした長距離砲は、敵が最も多くると予想された場所に配置されていた。
そして、予想通りに最大兵力で突っ込んでくる来訪者達を迎えうった。
その砲撃によって、来訪者達は壊滅的な打撃を受けていく。
とはいえ、こうした長距離砲は全ての戦線に配置されたわけではない。
どうしても数が限られるので、最も集中させたい場所に重点的に配置されていた。
当然、多連装ロケットシステムMLRSも長距離砲もない場所もある。
そういった所には、これを見越して量産されたものが配置されている。
120ミリ迫撃砲だ。
比較的軽量で操作もいくらか楽。
構造も幾らか簡単で生産しやすい。
こうした特徴を持つ120ミリ迫撃砲は、砲兵を補う形で量産されていた。
これならば、異世界人でも扱えるだろうと見込んで。
長距離砲に比べて射程が短いという問題などはある。
だが、それでも使いやすさを見込んで量産された。
使いやすいという事は、訓練もそれだけ簡単になる。
兵士の教育・訓練時間を短縮したい日本にはうってつけだった。
また、比較的軽量なので、移動もしやすい。
これならば、馬車のように引っ張る事も出来る。
それならば、この世界でも運用が可能だ。
この大型迫撃砲が、長距離砲のない地域に遠距離攻撃を提供した。
決して万能ではないが、それでも接近前に敵の数を減らす事が出来た。
そこをどうにか掻い潜っても、来訪者達に安息はない。
そこを超えれば、今度は地雷原がまっている。
地面に埋められた対戦車地雷が、足下から来訪者達を襲った。
この地雷。
地球にいた頃には全て廃棄されてしまっていた。
地雷の拡散を禁止する国際条約のためだ。
これは多連装ロケットシステムMLRSの子弾をばらまくクラスター弾も同じだ。
しかし、巨大な敵がいるこの世界である。
そんな条約など守ってられない。
効果的な武器が少しでも必要な状況だ。
なので、地雷もクラスター弾も再生産されていた。
国際条約なんてこの世界に存在しないのだから。
それに、敵を撃破する手段を自ら放棄するのもバカバカしい。
これに抗議する人間が皆無だったのも幸いした。
やはりこの世界に転移する時に除外されたのだろう。
転移してきた日本人の誰もがそう思った。
こうして来訪者の軍勢は、数を大幅に減らしていった。
日本・異世界人の前線に近づく頃には、見るも無惨な姿になる。
しかもそれで終わりではない。
今度は前線に詰めてる者達の迎撃を受ける。
砲台として使われる74式戦車が105ミリ砲を容赦なく撃っていく。
旧式となった対戦車ミサイルも、これが最後の奉公と発射される。
無反動砲なども使われる。
あらゆる攻撃が来訪者の戦車を迎え撃っていく。
前線のそこかしこに残骸の山が出来あがる。
来訪者の戦車達は、自らその一部になる為に前進していった。




