135回目 最後の安らぎ
来訪者の地下施設。
緊急時の指揮司令部として作られたものだ。
そこが今、来訪者の最大居住地となっている。
来訪者大陸のほとんどが核攻撃で破壊されている。
生存者はほとんどいない。
かろうじて生き残ってる者達も、異世界軍の攻撃で次々に処理されている。
それは勢力圏である第五大陸と第六大陸でも同じだ。
異世界人の軍勢によって取り戻されたそこは、既に来訪者のものではない。
残存勢力は抵抗を続けているが。
それも程なく終焉を迎える。
そこまで追い詰められている。
生き残ってる通信装置から、救援を求める声が届いていた。
苦境は分かるが、来訪者の首脳部は助ける事が出来ないでいた。
増援を送り込みたくても、海を渡れない。
海を渡れたとしても、敵にかなわない。
既にこの時期の来訪者は、異世界人にも負けている。
兵器の質も量も、既に来訪者は抜かれている。
装備がととのってる軍勢同士の戦いで、来訪者が勝てる要素はない。
ならばとせめて来訪者の本拠地に帰還しようともだ。
それも当然不可能。
海を渡れないのだから、行くことも帰る事も出来ない。
帰ってこれたとしてもだ。
それでどうにかなるものではない。
既に来訪者大陸は攻撃を受けている。
戻ってきても地獄が待ってるだけだ。
安全地帯などない。
来訪者の運命は既に決まった。
滅亡するのみ。
それが、他を虐げた彼らに与えられた運命である。
「女神イエル!
我らに祝福を!
導きを!
救いの手を!」
そう叫ぶのが、唯一出来る事だ。
得られる精神的な安息。
もはや、それにすがるしかなくなっていた。




