僕と流れ星のアリ―
“お母さん!流れ星が流れたよ!”
“お祈りしなきゃ!”
僕の隣に座っている、小さな女の子が目を輝かせ夜空を見上げる。
“ママとパパとずーと一緒にいられますように!!”
ここは、星空を観察できる場所。
家族や恋人、友だちときている人が多いが、僕は一人空を見上げる。
空いっぱいに広がる暗闇の中に、
ポツン…ポツン…と輝く光が顔をのぞかせる。
僕にとって流れ星とは、かつて出会った大切な友だちを想い出す。
~これは僕と流れ星の少年、アリ―の物語~
“僕はアリ―!君の名前はなんていうの?”
キラキラした君の優しい笑顔が、あの日僕の心を救ったんだ。
……………
時はさかのぼり、15年前。
僕が小学校2年生のときの出来事。
あの頃は、一人ぼっちで寂しかったんだ。
僕のお母さん、お父さんは、日付が変わった時間にいつも帰ってくる。
自分で料理もお風呂も準備する。
一人で食べるご飯は、ちっともおいしくなかった。
宿題を終わらせ、歯磨きをして寝る。
ベランダに出ると、隣の家から賑やかな声が聞こえる。
“お母さんみてみて!今日工作したんだ~!”
“あら!とっても上手にできたわね~”
僕はひとりぼっちで寂しかった。
“家族ってなんだろう?”
モヤモヤした心を抱いて、布団にもぐりこんだ。
ある日、友だちに意地悪なことを言われた。
“お前のこと嫌いだらか、お母さんとお父さんは夜遅くに帰ってくるんだよ!”
本当のことじゃないって心では分かっている。
ただ友だちは冗談で意地悪なことを言っているってことも分かっている。
でもその言葉が心に刺さった。
ぎゅっと心が痛くなった。
悲しくて…悲しくて…小学校を飛び出した。
僕は街のはずれにある、大きな森へと走った。
森の奥には、大きな木がある。
その下で僕はシクシク泣いた。
気づけば日が暮れ、あたりは暗くなっていた。
ぎゅーとお腹の音が鳴る。
お腹がすいたな…
ざわざわ…
風に揺れる葉っぱの音が、急に不安と恐怖を感じた。
立ち上がろうとすると、足元に何かがあたった。
手にとってみると、甘い香りがした。
“りんご…?”
転がってきた方を見てみると、キラキラ輝く少年がそこにいた。
薄暗くなってきた森に、光を灯す少年。
“お腹がすいてるんだろ?僕のリンゴをあげるよ!”
“僕の名前はアリ―。君の名前はなんていうの?”
ブロンドヘアを一つに結び、太陽のように明るい笑顔で話す少年がそこにいた。
“僕の名前はセイラ…リンゴありがとう”
誰かに会えたことに、安心してまた涙がでた。
“セイラよろしくね!”
“わわ!泣かないで!どこか痛いところがあるの?”
アリ―はとても優しい少年だった。
“どうして森にいるんだい?”
アリ―の質問にこれまでの出来後を話した。
“セイラのお母さんとお父さんは、セイラのこと嫌いって言ったの?”
”言ってない…でも寂しんだ”
“寂しいって言ったことあるの?”
”言ったらお母さんとお父さんを困らせてしまうから言えないよ…”
“セイラ、気持ちは言葉にしなきゃ伝わらないよ。テレパシーなんて使えないもん!
それにね、我儘になってもいいんだよ。そばにいてほしいって!”
”言葉にする勇気ないよ…”僕はうつむいた。
“大丈夫。お母さんとお父さんは、セイラのことが大好きだよ”
”なんて分かるの?”
するとアリ―は、空に呪文を唱えた。
すると、お母さんとお父さんが空に映ったのだ!
2人は先生と警察と一緒に僕を探しているようだった。
”セイラどこにいるの!”泣きながら僕を探すお母さん。
”セイラどうか無事でいてくれ!”お父さんも涙を流しながら、色んな人へ電話をしていた。
“ね?2人ともセイラのことが大切だから、探しているんじゃない?”
”お母さん、お父さん心配かけちゃった…”
アリ―は僕の頭を優しく撫でた。
“あぁ…もう時間だ。僕いかないと…もっと一緒にいたかったなぁ”
悲しい表情をうかべるアリ―は、そっと立ち上がった。
”アリ―いかないで!”
“セイラ。どこにいても僕たちはずっと友だちだよ!”
“お母さんとお父さんに気持ち、ちゃんと伝えられるといいね!”
アリ―はそういうと背中を広げ、夜空へと消えていった。
するとたくさんの流れ星が、真っ暗だった夜空を輝かせた。
それはまるで、別れの涙のように思えた。
輝く星たちは、“君なら大丈夫!”そう応援してくれているように…
“セイラ!!”
後ろから懐中電灯を持った、お母さんとお父さんがいた。
2人は泥まみれだった。
学校から連絡をもらい、ずっと探してくれたようだった。
僕は怒られる!と思い、目をつぶった。
すると温もりを感じた。
セイラをぎゅっと抱きしめたのだ。
“今まで寂しい想いをさせてごめんなさい”
“セイラの優しさに甘えてた…ごめんな。こんなダメな親でごめんな…”
僕はこれまでの思いが溢れ、わんわん泣いた。
”寂しかったよ…”
”夕飯もみんなで食べたいよ!いっぱい話もしたいよ!”
“もちろんよ!!約束するわ”
―セイラ頑張ったね!―
アリ―の声が聞こえた気がした。
それから三人で手をつなぎ家に帰った。
次の日、意地悪なことを言ったお友だちが、家に泣きながらや謝りにきてくれた。
僕は大丈夫だよ、っと伝えた。
あの日から彼とも仲良しだ。
……………
僕は白い息をしながら、夜空を見上げる。
ねぇアリ―?僕は23歳になったよ。
君と出会ってからもう15年が経ったね。
もう寂しくないよ、だって君が勇気をくれたから。
―あの日、僕に出会ってくれてありがとう―
―アリ―、君が辛くなったらいつでも駆けつけるからね―
心の中でそっとつぶやいた。
すると夜空を光で埋めるぐらいにたくさんの流れ星が流れた。
まるで僕に返事をするように…
“セイラ、僕はいつまでも君の大切な友だちだよ”
アリ―は流れ星という役目が嫌になり、人間界へ逃げてきました。
そこで出会った人間の少年。
はじめての友だちに、アリ―は嬉しかったでしょう。
そしてセイラを励ました言葉は、アリ―自身にも言い聞かせていたのかもしれません。
どうか2人がいつか再会できますように...……




