表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/10

7.追討令 【side聖王】

 王都にいる聖王国の主、聖王ローランド七世は、いら立っていた。


 オーブの声が聞こえなくなった聖王に、すべての責任と責務がのしかかっている。

 聖王が自ら政務を行うのは、まだ聖王に選ばれる前──勇者だった三十年前以来のことだ。


 聖王はオーブに選ばれてから、ずっとオーブの導きのままにしたがってきた。

 聖王──オーブの代弁者として、それはむしろ義務ですらあった。

 王として、自分の手で国を治めようとしたことが、なかったわけではない。

 だが、オーブの声にしたがわなければ、必ず痛い目にあった。


 オーブと聖王の考えが異なるとき、オーブはいつでも正しく、聖王は常に誤っていた。

 そのうち、聖王は自分の頭で考えることをやめた。


 オーブさえあればよい。

 オーブの声さえ聞くことができれば、余は、聖王でいられるのだ……。


「──それを、あの男が。……ジン・ウィペットが、奪ったのだ! あの男が、余からオーブの声を盗んだのだ!」


 聖王は激情にかられ、机に積まれた書類の束を、執務室の床にぶち撒けた。

 オーブがあの男を勇者に選んでから、ろくなことがない。


──オーブの声が失われ、聖王に仕える勇者は、たった二人となった。


 叙任式の日、ヘラヘラと緊張感のないジン・ウィペットの、武官としてのステータスを見て驚いた。

 知力の数値こそ低いものの、武勇はステータス上の最大値──100を、示していた。


 聖王は、元冒険者だというジン・ウィペットの、戦闘ステータスを見て、さらに驚くことになる。

 そこに示されていたのは、レベル上限を示すLV.99の値。


「ステータスの成長もとうに止まっておる」


「ステータスは、なにひとつ成長していない」


 聖王がそう罵ったジン・ウィペットの戦闘能力は、その実、


──すでに、人の達しうる最高の地点にまで到達していたのだった。

 冒険者として研鑽し、武を究めたジン・ウィペット──。


「それに引き換え、余は──」


 聖王は鏡に映った、己の老いた姿の上にある四角い板──ステータスを見る。



ステータス

 名前:“聖王”ローランド七世

 身分:国王

 天賦:人物鑑定家

 効果:ステータス鑑定

 指揮:12/37

 武勇:13/13

 政務: 6/97

 知力:13/89



 考えることをやめ、オーブの言葉を伝えるだけの存在として過ごしてきた三十年。

 それが、加齢による衰え以上に、聖王のステータスを低下させていた。

 若き日、優秀な官吏であった聖王の知性は、もはやその残滓すら、とどめてはいなかった。


 己の道を究め、レベル上限にまで達したジン・ウィペット。

 聖王に聞こえなくなったオーブの声を聞いたという、ジン・ウィペット。

 聖王は、すべてを手に入れた彼のことが、妬ましかった。

 許しては、おけなかった。

──ジン・ウィペットを生かしては、おけなかった。


 聖王は自分を支えるはずだった四人の勇者のうち、すでに二人を失った。

 勇者ジン・ウィペットを解任し、賢者ティーエが失踪した。

 残る勇者は、たった二人。


「聖騎士ジャスタスを呼べ!」


 聖王は、そのうちの一人を呼ぶよう、大声で侍従に指図した。


──その、目的は、ジン・ウィペットの追討。


「聖騎士ジャスタスよ、聖王国の魔術師ギルドを破壊した、裏切り者のジン・ウィペットを見つけだし、始末するのだ!」


 聖王の命令をうけたジャスタスは、王の意見に言葉を返した。


「まだ、ジン・ウィペットが犯人と決まったわけでは……。何者かがギルドを襲い、ジン・ウィペットを連れ去ったという目撃情報もあります」


 ジャスタスの抗弁が、王の怒りを買う。


「黙れ! 黙らぬか! ジン・ウィペット、あやつは、余が勇者をクビにしたことを逆恨みし、魔術師ギルドを破壊して逃走したのだ! 失踪した賢者ティーエを誘拐したのも、あやつに違いない!


──騎士ジャスタスよ、余の命令にしたがえぬのなら、


 貴公を解任してもよいのだぞ! 勇者の代わりなど、いくらでもおるのだ!」


……こう言われては、騎士として王に仕えることを誇りとするジャスタスに、逆らうことはできない。


「逆賊ジン・ウィペットを見つけだし、始末するのだ。……よいな!」


「拝命いたしました」


 こうして、聖騎士ジャスタスは聖王国騎士団を率い、裏切り者のジン・ウィペットを討つために、王都を出立した。


    ◆

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


「気に入った!」

「おもしろかった!」

「続きが気になる!」


──というかたは、


ぜひ、下にある☆☆☆☆☆欄から作品の評価をおねがいいたします!


おもしろかったら〈星5つ〉、つまらなければ〈星1つ〉

正直な感想でかまいません。


「続きが気になる!」というかたはブックマーク登録もおねがいします。


応援よろしくおねがいいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ