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k02-09 先端技術の街

 ロータリーでは、環状になっている主線から、いくつもの脇道が方々へ伸びている。


 中央はちょっとした広場になっており、綺麗に整理された植物達と大きなブロンズ像があしらえてある。



 どんどんと合流してくる車……これは慣れていないと運転怖いでしょうね……。


 そんな私の心配を余所に、慣れた感じでロータリーに合流していくヴィントさん。


「シェンナ様以外は初めてとの事でしたので、街について少々ご説明させて頂きますね」


 見た事のない車の量に、窓の外を眺めて口を開けたままのアイネ。


 ヴィントさんはほんの少し、可笑しそうに笑うと話を続ける。


「今走っているのが玄関口、凱旋広場のロータリーです。ここから『観光エリアの"商業区"』『企業や行政のオフィスが集まる"事業区"』『主にスポーツ施設等がある"郊外"』そして、『私達が向かう"居住区"』と4つのエリアに向かって分岐していきます」


 そう言うと車はスムーズに車線変更を繰り返し、1本の支流へと抜けた。


「――え!? あの空って……」


 外を眺めていたアイネが声を上げる。


 つられて私も窓から空を眺める



 良く晴れた青空……だけど巨大な八角形の枠がいくつも連なって見える。


「お気づきですか。あれがハイドレンジアの誇る最新鋭技術の1つ、巨大魔鉱パネルです。今ここから見えている空のうち約8割……つまりあの八角の仕切りが見えている部分は、実は本物の空ではありません。本物の空を精密に再現した映像なのです。空に浮かぶ太陽も、そちらから熱を感じるのであたかも本物に思えますが、これも空調で疑似的に再現したものでございます。風、火、光、水、土……様々な魔鉱石の力を複雑に組み合わせて自然環境を再現しているという訳です」


「へぇ……こりゃ凄い。じっくり見れば分かるけど、空なんか普段じっくり見上げる事なんてないからな。慣れてしまえば違和感無さそうだ」


「はい、慣れてしまえば外界と何ら変わりありません。空のうち、残りの3割……今しがた通ってきた橋の周辺から、ビーチエリアの辺り。その辺りは魔鉱パネルが存在しませんので、外界と直接つながっています。そこから、風の魔鉱石の力を使い外界との空気のやり取りをしている訳ですね。ちなみに、ハイドレンジア内部の空調は-5℃から35℃までの間で自在にコントロール出来るようになっております」


「凄いですね……あ! 見てください! 山の方は雪降ってませんか!?」


「えぇ、魔鉱石の力でエリアごとに気温を区切っていますので。……そうですね、本日の天気予報によりますと、山頂のスノーリゾートは-1℃、ビーチリゾートの方は35℃となっております」


 ひぇ~、それこそ自律神経ぶっ壊れそうね。そんな寒暖差のある生活、逆にしんどくないのかしら……。



 暫く走ると、遠くにビルがいくつも並んでいるのが見える。


「あちらのビル群が事業区でございます。世界中の有名企業や公共機関などのビルが並んでおります。中央辺りに見えるのが『クレロデン・セキュリティー・サービス』の本社でございます」


 ひと際高く立派なビルに"C.S.C"と会社のロゴが入っている。


 この距離から見てあの大きさなんだから、一体何階建てなのかしら……



 そうこうしている間に、車通りはどんどん少なくなり閑静な住宅街に差し掛かった。


 小高い丘に陣取った邸宅は、どれも門付き、庭付き、プール付きの立派なものばかり。


 停まっている車も高級車そうな物ばかりだ。



「長い時間お疲れ様でした、もう僅かで到着致します」


 ヴィントさんがそう言ってから暫く。


 周りの住宅から少し離れて、小さな林の中にある閑静な邸宅の駐車場に車は停まった。



「おー、スゲェ家だな」


 そう言いながらマスターが勝手に車を降りていく。


「どうぞ、頭上にお気をつけください」


 そう言って、外からドアを開け私とアイネを降ろしてくれるヴィントさん。



 車から降りると、立派な建物が目に入る。


 お城を思わせるような立派な石造り。

 荘厳だけれどもどこか可愛らしい邸宅だ。


 庭は綺麗に手入れされており、噴水のある池の周りでは色とりどりの花が咲いている。


 花壇の傍らには白いアイアンのテーブルセット。

 天気の良い日にあそこでお茶とかしたら素敵ね。


 屋敷自体の大きさは私の実家の半分程だけれど、道中見て来た他の家々の倍程はある。

(ウィステリアと比べたら土地の値段が段違いでしょうけど……)

 ハイドレンジアではかなり上ランクの邸宅ということが分かる。



「わぁぁ、素敵! 私こういうお庭って憧れます!!」


 アイネが小走りで庭の池へ近づいていく。


「ほほ、そちらのお庭は庭師ではなく、お嬢様が自らお手入れされておいでるのですよ。後ほど直接お伝えしてあげてください。きっとお喜びになられます」


 マスターと一緒に車から荷物を降ろしていたヴィントさんが、優しい笑顔で庭の木々を見つめる。


 へぇ……あのお嬢様が? 意外ね。

 私の中では、お嬢様=税関であったあの少女だろうと思ってるんだけど……。




「さぁ皆さま、旦那様がお待ちです。中へどうぞ」


 ヴィントさんに促され、屋敷の中へと入っていく。

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