k02-05 街の玄関口
列車を降りるとジリジリとした太陽が肌を刺す。
列車で4時間の距離だけど、標高の高いウィステリアとではここまで気候が違うのね。
さすがリゾート地という感じで、駅内には鮮やかな南国の植物が飾られ、ショップでは高級ブランドのバッグや夏服、水着などが売られている。
そんな構内を抜け、駅の正面から出るとそこはロータリーになっていた。
「すごーい! 車だよ! 車がいっぱい!!」
アイネが大声ではしゃぐ。
「コラ! やめなさい! 田舎者じゃないんだから、恥ずかしい!」
とは言え、確かにこの車の量はウィステリアでは見ないわね。
ハイドレンジアに比べればそりゃ劣るけど、ウィステリアも決して田舎ではない。
ただ、街の中に水路がめぐらされており道幅も狭いため車が乗り入れる事は滅多にない。
ウィステリアからほとんど出た事のないアイネにとっては、こんなに沢山の車は珍しいのね。
「失礼ですが、ジン様御ご一行ででしょうか?」
マスターが声をかけられる。
仕立ての良い執事服を綺麗に着こなした白髪の老人だ。
「あぁ。そちらは?」
「遠い所ようこそおいでくださいました。グラード・リックス・ブロンサント様より仰せつかり御迎えに参りました。執事のヴィントと申します。お見知りおきを」
そう言って深々とお辞儀をする。
「これはどうも。ウィステリアテイル所属、マスターのジンです。こいつらがファミリアメンバーの、アイネとシェンナです。詳細は事前にお送りした通りです」
「はい、旦那様よりお預かりしております。お二人とも、よろしくお願い致します」
そう言って優しい眼差しで私達に微笑みかける。
促され、荷物を渡すと手際良くトランクに詰め込むヴィントさん。
アイネが気を遣って
「自分で出来ますから」
とか言って自分で積み込もうとし、キャリーケースを車にゴンとやった時は、私もマスターも目が飛び出るかと思った。
この黒塗りの車、いくらすんのよ!?
当のアイネとヴィントさんは気にも留めてなかったみたいだけど……。
そんなこんなで準備を終え、車は島に向けて“カットアップ・ホワイトライン”を走り出す。
―――――
車内。
革張りの立派なシートは快適そのもの。
静かに滑るように走る車の窓から外の景色を眺める。
「皆様、ハイドレンジアは初めてですか?」
「えぇ、俺は」
「私も」
マスターとアイネが答える。
「私は小さい頃に一度だけ」
「えぇ!? シェンナ来たことあるの! すっごい」
「それではシェンナ様はご存知かもしれませんが、この後の入街手続きについて少々ご説明させて頂きます」
前を向いて運転をしながらヴィントさんが続ける。
「もう数分もしますと、橋の中間地点にあります建物で一端車を降りて頂きます。建物内部で入街手続きを受けて頂き、その後再び車にお戻り頂き街へと入る運びとなります。手続きは街に入られる方には例外なく受けて頂く事となっておりますのでその旨ご了承ください。とは言え、旦那様の紹介状が届いておりますので一般の来島者よりは簡易的に終わるはずです」
「へぇ……ウィステリアの入街手続きに比べたら随分しっかりしてるなぁ」
「この街は各界のVIPも頻繁に訪れますからね。入街手続きは世界一の厳しさとまで言われております。お手数ではございますが、街の安全のためにもご協力お願い致します」
マスターとヴィントさんの会話を聞いているうちに、程なくして橋の中央にある大きな建物が見えてきた。
その間、アイネが自分の身分証明書を見つめて暗い顔をしていたのが気になった……。






