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k02-03 驚きの依頼内容

「では、依頼内容を確認する」


 そう言ってマスターは手に持った資料を読み始める。



「依頼主はグラード・リックス・ブロンサント氏。クレロデンS.Cの重役だ。シェンナ、この企業は聞いたことあるよな?」


「もちろん。クレロデン・セキュリティー・カンパニー。小さな警備会社から始まって成功を収め、今ではエネルギー部門、通信部門、輸送運搬部門まで、普通に生活してれば毎日1回はお世話になる大企業よ。……確か本社はハイドレンジアじゃなかったかしら?」


「その通り。で、ハイドレンジア全域の警備もこのクレロデンS.Cが請け負ってる訳だが、依頼人はそこの責任者だそうだ」


「な、何だか凄そうな方からの依頼なんですね……」



 呑気な声を上げるアイネだけど、凄そうなんていうレベルじゃないわよ。


 クレロデン.S.Cといえば、テイルの人気就職先ランキング万年上位のモンスター企業。


 その中でも主力の警備部門の重役なんて……世界的に見てもとんでもない重要人物じゃない。


 そんなVIPが何だってテイルの訓練生、しかもうちみたいな弱小ファミリアに依頼なんて……?



「警備部門ということは……依頼内容は施設警備とか街の巡回警備といったところでしょうか」


 少し不安そうに尋ねるアイネ。


「いや、少し違うな。かしこまった体裁で言うと、依頼内容はクライアントの一人娘の警護だ」


「なるほど。偉い方の娘さんともなると色々と危険な目に合うこともある……という事ですね」


「……まぁ、そんなところだろうな」


 そう言いながら、マスターの目が少し泳ぐ。


「……ちょっと待ちなさいよ。要人警護ならそれこそ自社の専門分野じゃない? なんでわざわざ外部委託なんかするのよ? しかも私達みたいな経験の浅いテイルの生徒に。何か怪しくない?」


「いや……まぁ、なんだ。この依頼、グランドマスター直々のご指名なんだよ。依頼人とシエンが古い友人らしく、どうしても断れなかったとかで……」


 イマイチ煮え切らない態度が怪しい。


「もぅ! 何を隠してんのよ!? いいから依頼内容そのまま読みなさいよ!」


「あぁ!分かった分かった。……端的に言うと『うちの娘の友達になってください』ってのが今回の依頼内容だ」



「……は?」



「いや、なんかさ。依頼人、若い時に奥さんを亡くしてて家族は娘さん1人だけなんだけど、仕事も忙しいし中々構ってやれないらしくてな。友達もあんまり居ないみたいだから、夏休みの間遊び相手をしてくれる人員を募集するってことらしい」


「な……なにそれ?」


「テイルの生徒なら年も同じくらいだし、いざという時は多少なり警護の心得もあるって事でうってつけなんだろ」



「お、お友達ですか! 私あんまり得意じゃないですけど……大丈夫かな」


 突然の事に緊張するアイネ。

 そんなアイネの方にドンと手を置き、真っすぐな目で語るマスター。


「大丈夫だ。良いか、アイネ。友達ってのはなろうと思ってなるもんじゃなくて、気づいたらいつも一緒に居る奴のことを友達って言うんだぞ」


「そ、そうなんですね! さすがマスター、凄いです!」


 そう言って目をキラキラさせるアイネ。


 いや、1週間程しか居ないんだから、そんな悠長な事は言ってらんないでしょ……。



 しかし……これは先が思いやられるわ。


 私が言うのもなんだけど、名家の子息子女というのは変わり者が多い。


 世界有数の金持ちが集う街の、その中でもおそらくトップクラスのエリートの一人娘。


 そして友達が少ない……と聞いたら否が応でも人と成りが想像出来てしまう。


 とんだジャジャ馬か、はた迷惑な破天荒娘か……。



 というか、そもそもこんな依頼、実地演習として成り立つのかしら?



 能天気な2人とは裏腹に、どうにも不安しかない私の気持ちを乗せ列車は走り続ける。

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