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k01-30 久々のホーム

 月曜日の朝。


 いつもは寝癖ひとつない完璧な身支度で登園するシェンナだったが、この日ばかりはややお疲れのようだ――



 はぁ……。

 土曜日に退院して、日曜日には事故の報告書を取りまとめ、そんで今日は朝から教務課に呼び出しって……さすがにケガ人に無茶させすぎじゃないかしら。

 報告書、夜中までかかったから眠い。



 朝一から教務課に行き、諸々の事務手続きや事故の報告やらを終わらせたらもうお昼前になってしまった。


 午前中のうちに一度顔を出しておきたかったので、その足でホームに寄る。



 部屋に入るなり、同期や先輩達に囲まれる。


「大丈夫だった!?」

「ホント無事で良かった」


 などなど代わる代わる声をかけてくれる。


 皆との会話がてら近状を教えて貰った。



 事故の責任を負い、両マスターには処分が下った。


 マスター職としての評価引き下げと予算の削減。


 ある意味被害者でもあるマスター達にとってあんまりな処遇だとは思うけど、あくまでもファミリアの管理不備として処理したい学園側の魂胆が見え見えね。


 最初はもっと厳しい処分だったそうだけど、グランドマスターの判断でどうにかこの程度で済んだらしい。


 事故の話は学外にも通達され、保護者やスポンサーから叱責の声も多く寄せられた。


 魔鉱戦術学科という特性上多少の怪我などは仕方のない事だけど、さすがに今回の事故はインパクトが大きかった。



 影響はマスター自身のみに留まらない。

 マスターの評判が下がれば当然私達の就職にも影響が出る。


 このままマスターに付いていくべきか、それとも一か八か他のファミリアへの移籍を狙うか。


 皆もどことなくピリピリしてる訳ね。



 かく言う私も当事者ではあるんだけれど、あれだけの事故の中無事に戻れただけでも幸運……。

 この先の身の振りまでは直ぐには頭が回らないな……。




 そんな事を考えていると……


「シェンナ!!」


 不意に後ろから力いっぱい抱き着かれる!


「わぁ!」


 抱きつかれた手を咄嗟に振りほどき、声のした方を振り返ると……泣き出しそうな顔をしたエーリエが立っていた。


「シェンナぁ~!!」


 涙目になって再び抱き着いてくるエーリエを必死に引き剥がす。


「痛い痛い……い・た・いって!」


「無事で良かったよぉぉ! 退院おめでとぅ~!!」


「大げさよ! ただの捻挫。入院だって念のための検査だって! てか、病院でも説明したじゃない!」


 エーリエは入院中真っ先にお見舞いに来てくれた。


 病室に入り私の姿を見るなり、大号泣。


 そりゃ、身体中に負った擦り傷のせいで、全身包帯やらガーゼまみれで心配させちゃった私も悪いんだけど……。


「シェンナーー! シェンナ死んだら嫌やあぁーーー!!」


 とか叫びまくるもんだから周りの病室からも人が集まってきて一時騒然となったのは入院中の恥ずかしい思い出だわ……。




「う~はなれろーー! まぁ、エーリエの方こそ大きな怪我無くって良かったよ。あの状況で4人共無事だったのは本当に運が良かったって教員の人達も言ってた」


「せやなぁ……。でもマスター達は結構大変みたいやよ。ダークウルフェンが侵入した経緯もまだ分からんし、2人揃って連日調査に駆り出されて忙しそうや……」


「そうなんだ……。私にも何か手伝える事あるといいんだけど」


「今日は夕方ホームに寄る言うてたし、後で顔見せてや! マスターもシェンナの事心配してたんやよ!」


「うん、分かった!」



 そう言えば……マスターはお見舞い来てくれなかったな。


 まぁ、そんな大層な怪我でも無かったし、マスターも色々忙しかっただろうし……。




「ところでさ、エーリエ」


「なんや?」


「演習場のB-27エリアって今どうなってるか分かる?」


「B-27って……事故があった所からすっごい奥の方まで行った所やろ? 現場からも離れとるから特に何もないはずやけど」


「そう……なんだ」


「……どないしたん?」


「え、あ……うん。

 ほら、アイネ達の新いホームがそのエリアだったはずだから、どうなったのかなってちょっとだけ気になって」


「それ!! うちも気になっててん! まだ例のマモノも潜伏しとるかもしれんのに大丈夫なんやろかて」


「連絡先でも分かれば電話してみるんだけど……」


 この土日、お見舞いのお礼をと思ってアイネに連絡しようと思ったんだけど、そういえばアイネの連絡先すら知らないことに気がついた……。


「あ、ほんなら電話してみよか? 実は、今度一緒にお昼食べようって約束してたんや〜。もし時間合えば今から一緒にお昼でも食べようや!」


「……え!? エーリエ、アイネの連絡先知ってるの!?」


「うん。こないだたまたまおうた時に交換したんや。……シェンナ、もしかして知らんの?」


「う、うん。実は1回端末壊れた時に消えちゃってね! 最近は会ってなかったから」


 嘘だ。


「そか、ほんなら忘れずに聞いとかなあかんな。勝手に教える訳にもいかんし」


「そ、そうだね!」



 その後、アイネに電話をかけるエーリエ。


 慣れた様子でお昼に行く約束を取り付ける。


 会話の中で


『あ! シェンナも一緒やけどええよな!』


 というエーリエの問いに、アイネが何て答えたのかは分からなかったけど……。

 返答までに少し間があったように感じた。

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