k01-13 キプロポリス流
目の前で起きた出来事に理解が追いつかず、まだ燃え続ける炎を見つめて呆然とへたり込むアイネ。
隣に居るグリムもポカンと開いた口が塞がらない。
パンパンと手を叩き、残った魔鉱石の屑を払い落とすジン。
「……どうだ? 中々凄いだろ!」
いつもの通りの気の抜けた笑顔を浮かべ、アイネとグレンに手を差し伸べる。
その手を取りながら何とか言葉を絞り出す。
「す……凄いなんてもんじゃないですよ!!何なんですか、今の……まさか本当に魔法……?」
あんな爆発は見た事がない。
大型とか大火力とか呼ばれる携行兵器を授業でいくつも見たけれど、明らかにそれらを上回る威力だった。
そんな攻撃が、魔兵器はおろか一般兵装すらも持たない人間から放たれたのだから到底理解出来ない。
「せ、先生ってエバージェリー人なの?」
グリムが期待と不安が入り混じった顔でジンを見つめる。
「いやいや、違うぞ! エバージェリー人は魔法使うのに魔鉱石なんて使わないからな。
今のは"輝石魔法"ってゆう、言わば"キプロポリス流の魔法"だな」
「キプロポリス流!? キプロポリスで魔法なんて聞いたことないですよ!」
「まぁ、随分昔にほんの僅かな期間だけ使われて、そのまま失われた技術だからな。魔兵器が開発されるより昔、一部の人達だけが使ってたんだが……便利な魔兵器が開発されてお役御免。今じゃ歴史の教科書にも載ってないな」
「な、何故マスターがそんなものを……」
「あーー……俺の爺さんが変わり者でな。戦争時代の古い技術を研究してたんだ。そんで、この輝石魔法に辿りつたらしく、実験台ついでにみっちりと教え込まれた。
当の本人は『兵士と兵器の数で戦争するようなこんな時代じゃ金にもならん』って事で、さっさと飽きてたがな」
「そんな! 歩兵でこの火力が出せるなら価値は充分にあるはずじゃ!?」
「いや、まぁ色々と問題もあってな。まぁ……話は後にして一旦学園に戻るーー」
「! ね、ねぇ!!」
ジンが話を締めようとしたとき、グリムが突然大声を上げる。
「何だ?」
「何か……すごい燃えてるけど、大丈夫なの!?」
そう言ってジンの背後を指差す。
振り返ると、さっきまで鎮火しかけていた炎が周りの枯れ草や枝に燃え広がっている。
「なにっ!? あ、ヤバい! 消せ!!」
慌てて足で砂をかけるが、もはやその程度で消える規模ではない。炎は徐々に勢いを増す。
アイネもどうにか立ち上がり、周辺に転がっていた、おそらく初等グレードの子供達の落とし物であろう水筒を拾うと中の水をジャバジャバとかける。
もちろん全然消えない。
「あわわわわわ!」
「あわわわわわわ」
2人揃ってその場でおたおたと狼狽する。
そうこうしているうちに町の方からサイレンが聞こえてきた。
音の方を見ると数台の緊急車両が非常灯を回しながら物凄いスピードでこっちに向かってくる。
「マズい!! 逃げるぞ!」
足を挫いて走れないアイネを抱き抱えるジン。
「ちょ、マスター!? 待ってください! 逃げちゃダメですよ!! 事情を説明しないと!」
「バカヤロー! 郊外で火災騒ぎ起こしただなんてバレたら、またあのジジイ共に徹底的に叩かれてるぞ。最悪ファミリア解散だ」
「ううぅ……それは」
「じきにレスキューも到着するから大丈夫だ! ほれ、お前もダッシュ!」
そう言ってグリムの背中を叩く。
3人揃って、道路脇の茂みや岩の陰に身を隠しながら街に向かって逃げて行く。






