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k03-46 絶体絶命

 短剣で脹脛を貫かれ、痛みのあまり床に爪を立ててうめき声を上げるノエル。

 目に大粒の涙を浮かべ、どうにか引き抜こうと震える手で短剣を握る。


 手に力を掛ける度、振動が傷口に伝わり鋭い痛みが走る。

 歯を食いしばり、口から荒く息を吐き、必死に力を込める。

 けれど、床に深々と刺さった短剣はビクともしない。


 そんなノエルに近づき、顔を容赦なく蹴り飛ばすジニア!

 衝撃で床を転がりそうになるが、刺さった短剣がそれを許さない。

 傷口が開くき真っ赤な血が吹き出す。


「ぁああぁぁぁ!!」


 麻酔もなく深々と肉を切り裂かれているような物だ。

 さすがに耐えきれなくなり、ハァハァと肩で息をしながら涙を流すノエル。


「ちょっと!! 辞めなさいよ! 私が相手になるから! さあ、かかってきなさい!!」


 情けないけれど、この場を一歩も動けずせめて気だけでもこっちに晒させようとジニアを必死に挑発する。

 けれども、私の事なんか眼中にも無いと言った様子で気にも止めない。



「あーぁ、可哀想。恨むなら自分を作った奴を恨んでよね。何で戦闘マシンに痛みを感じる機能なんか持たせたのかなぁ。俺には嫌がらせにしか思えないけどね」


 腰に携えていたもう1本の鞘から新しい短剣を抜き去る。

 逆手に構え、その刃先をノエルの首元に向ける。


 そんなジニアの様子を見て、慌ててスプルースが止めに入る。


「待て、そいつは回収対象だろ?」


「そうだけど……上からの命令によると最悪魔鉱原石さえ回収出来ればあとはいいって話じゃなかったっけ?」


「そうだが……なんだ、任務内容覚えているじゃないか!」


 何も答えずに肩をすくめて見せるジニア。


「しかし……何十年もかけて研究させてきた成果を、こうもあっさり切り捨てるとは……信じられるか?」


「俺に聞かないでよ。偉い人の都合なんて知ったこっちゃないし。ま、そういう訳だから、魔鉱原石のある胸の辺りさえ無事ならそれでいいわけだしさ、手とか足とか頭とか、ここで落としちゃうから。暴れられて邪魔なだけだし」


 そう言うと、再び短剣を構え直す。


 ノエルの髪を深々と掴むと、海老反りになるように思いっきり持ち上げる。


「う、ううぅぅ」


 涙でぐしゃぐしゃになったノエルの顔がこっちに向けられる。


「! 辞めなさい! ――お願い、辞めて!! お願いだから!!」


 さっきまで無視していた私の方を見て、それはそれは楽しそうにニヤリと悪魔の笑みを浮かべるジニア。


 油断した隙を見て、背後からアイネが最後の力を振り絞って飛び掛かる!

 けれど、そばに居たスプルースすに気づかれ、刀の鞘で思いっきり打ち返される。

 胸元を突きの形で強打され、血を吐きながら咳き込んで倒れ込むアイネ。


「……ちぇ、余計な事するなぁ」


「こうしないと殺していただろう?」


 ジニアの空いていたはずの左手には、いつの間にかもう1本の短剣が握られていた。


「さて、そんじゃ邪魔居なくなったし、バイオロイドの実況解体ショーはーじめるよー!!」


 両手に持った短剣をクルクルと回しながら揚々とノエルの前に立つ。



 ――その時



「……今度は何だよ、邪魔だなお前」



 慌てて飛び出してきたカルミアさんが、両手を広げてノエルの前に立ちはだかった。


「この子の……保護者よ! 聞きなさい! 私は協会とこの研究所の関係を証明する資料をいくつも持ってるわ! もし世間に公表されればさすがの協会も非難は免れないはず! だから取り引き――」


 そこまで言って、突然言葉を詰まらせるカルミアさん。


「カ、カハッ」


 口から血の塊を吐き、腹部を抑える。


 ジニアの短剣が、いつの間にか音もなく……カルミアさんの腹部を貫いている。


「邪魔だって言ったよね?」


 その問いに答えられる訳もなく、そのままジニアの方へ倒れ込むカルミアさん。


 その頭を片手で鷲掴みにして受け止めると、刺さった短剣を勢い良く引き抜く。


 噴き出た血が飛び散り、床に横たわるノエルの顔を真っ赤に染める。


「……ママ!? ママぁぁ!!」


 目の前で起きた衝撃的な光景に、目を目一杯に見開き泣き叫ぶノエル。


「――ったく煩えなぁ、だからガキは嫌いなんだよ!!」


 そう言って、掴んでいたカルミアさんの身体をノエルの側に投げ捨てる。


「ママ? ママァ!!」



 お互いに冷たい床に倒れたまま目が合うノエルとカルミアさん。



「ノエル……こんな私でもママって呼んでくれるの?」


 今にも消えてしまいそうな声で、それでも精一杯にっこりと笑ってノエルに語りかける。


「ママ! 何言ってるの? ノエルのママはママだけだよ」


「ごめんなさい。親らしい事なんて何一つしてあげれなかった……それどころか自分のキャリアのためにあなたを利用して……せめて最後くらいは」


 そう言うと、腹部から吐き出す血も気にせず必死にノエルに擦り寄る。

 ガクガクと震え、もう力もこもらない手で、それでもどうにかノエルの足に刺さった短剣を抜こうとする。


 そんな光景を見て、一層楽しそうに目を細めると、ジニアが短剣を剣を振り被る。


「! やめて! やめてよ!!」


 それに気づいたノエルが声を上げる。


「ママ! ダメ、逃げて!」


 必死に叫ぶノエル。


 けれど、カルミアさんは吐き出しそうになる血を何度も堪えながら必死にノエルの短剣を抜こうと手に力を込める。


「誰か助けて! シェンナ! アイネ!! ――誰か!!」


 クソっ!!

 動け! 何で動かないのよ私の体!!

 今行かなくてどうすんのよ!?


 アイネは……意識が無いのかぐったりと床に這いつくばったまま……!



 ノエルの必死の願いも虚しく……カルミアさん目掛けて短剣が振り下ろされた。

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