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k03-45 最悪な再会

「あれー!? あのマシン動いてんじゃん! どうせ使い物にならないからってあの博士の好きなようにさせといたんじゃないの!! 動くんなら俺欲しかったー!!」


 突然、賑やかな男の子の声がして振り返る。

 見ると、私が空けた大穴から10才くらいの少年が室内に入ってくるのが見えた。


 え、ちょっと、何で子供が!?

 慌てて止めようとしたけれど、その後ろに続いて現れた人物を見て絶句する。


 黒いローブにつばの付いた帽子。

 黒色の龍手と脛当を身につけ、腰には長剣……間違いない。ハイドレンジアでアイネを橋から突き落とした――


「スプルース!!」


「……久しぶりだな。覚えてくれていたようで光栄だよ」


 私に一瞥くれると、すぐさま振り向きアイネの方を見る。


「お前も、元気そうだな」


「……何しに来たんですか!」


 敵意を剥き出しにしてアイネが睨みつける。


「まぁ、そう言うな。我ながら毎度こんなタイミングでの登場で申し訳ないとは思っている」



「うわっ! 何これ!? 汚ったねー!!」


 少年の声が響き渡る。

 いつの間にかスプルースの側から居なくなってる。

 慌てて周りを見渡すと、ライドアーマーのコクピットによじ登って中を覗き込んでいるのが見えた。



「あ、何だ。博士じゃん。何これ、ウケる! おーい、生きてるー?」


 コクピットの中でぐったりとしているゲルニカの顔をペチペチと叩く少年。


「あー、どうやって動かしたのかと思ったら、なるほどなるほど。精神系統を操作に直結したのかぁ。確かにこれなら理論的には動くけど……でも思いついたとしても本当にやるかなぁ、普通。 だってマシンが受けたダメージとか、そのまま自分の精神にもフィードバックされるんだよ? 下手したら廃人だよ!」


 そう言ってゲルニカの頬を両手で引っ張る。


「う、お、おやめくださいジニア様!!」


 身体の殆どをスライム化してしまい、動くこともままならないゲルニカが必死に抵抗する。


 あの偏屈な爺さんがこんな子供に敬語?

 多分……スプルースと同じで協会の幹部か何かね。



「あ、本当に生きてやんの。案外しぶといね」


 そう言ってゲルニカの顔から手を離す、ジニアと呼ばれる少年。


「ジニア。その辺にしておけ。任務を遂行するぞ」


「……っちぇ、分かったよ。で、どうするんだっけ?」


「お前……任務も確認せずに来たのか。……まぁいい。今回の仕事は、バイオロイドのオリジナル個体の回収。それと、この事態に関わった関係者の抹殺だ」


「……んじゃ、博士も殺しちゃうの?」


「あぁ。もう用済みだ。さっさと殺して降りてこい」


 私達を無視して物騒な話を進める2人。


「お、お待ちください! ノエルの実験で新たに得られたデータがあります! 協会にとっても有益な物で間違いありません!! どうか私にチャンスを……!」


 必死に命乞いするゲルニカ。

 その様子を見て腕組みをして考え込むジニア。


「んー。そうだね、ここで殺しちゃうなんて勿体ない! スプルース、博士運んどいて」


「! ありがとうございます! このゲルニカ、必ずお役に立って見せます!」


 身体をプルプルと揺らして喜ぶゲルニカ。

 そんな様子は一切気にする事なく2人は会話を続ける。


「……何に使うつもりだ?」


「これ、溶かしたりして色んなマモノとか機械とかにくっつけたら面白そうじゃない? ちぎって溶かしてごちゃ混ぜにして……まぁダメになったら捨てればいいんだし」


 その言葉を聞いて絶望の面持ちで絶句するゲルニカ。


「また悪趣味な実験か……」


 スプルースがやれやれと言った様子で頭を振る。


「いいじゃん! 前にダークウルフェンをおもちゃにしようとして失敗したんだよねぇ。丁度リベンジしようと思っててさ!」


 ――!!


 その台詞を聞いて、アイネがジニアに飛び掛かる!


 突然掴まれて思わずコクピットから落ちて床に腰を打つ。


「痛ってて! 何すんだよ!?」


 そう言ってアイネを蹴り飛ばすと、腰に携えていた短剣を抜き去りアイネに向かって斬りつける。


 短剣がアイネに届く瞬間――

 一瞬だけ黒い尻尾が現れてその短剣を弾き飛ばす!


 自分の手元と弾け飛んだ短剣を交互に見るジニア。

 そして、2,3度ユラユラと揺れた後直ぐに消えてしまったアイネの尻尾を見て考え込む。



「……そうか、何で報告を聞いた時に思い浮かばなかったんだろ!? ――久しぶりだねぇ、猫ちゃん。役立たずの失敗作の捨て猫に、まさかこんな形で再開する事になるとは!」


 そう言って可笑しそうに笑う。


 それを鋭く睨みつけるアイネ。


「ねぇ、スプルース。こいつの回収も任務にあったよね?」


「……あぁ。だが今回の優先事項ではない。そいつは強い。今無理に手出しする必要は無いだろう」


「……なに偉そうに言ってんの? 自分が負けたからって。……決めた! こいつも連れて帰るよ! あー、今回は収穫がいっぱいだぁ! 帰ったら実験が楽しみだなぁ」


 そう言うと、アイネの髪を掴んで引きずって連れて行こうとする。


「い、痛い! 離して!!」


 髪を押さえて必死にもがくアイネ。


 ――! 助けに行かないと!


 そう思うけれど、さっき頭を思いっきり打った状態であんな大魔法なんか使ったもんだから、身体が言う事を聞かない……!


 そんな私の直ぐ横を通って、ノエルが勢いよく駆け出して行く。


 走りながら光のレイピアを整形すると、それを携えて勢いそのままジニアに飛び掛かる!


 それを確認して、慌てる様子もなく再び腰の鞘に手を当てるジニア。

 ――さっき弾き飛ばされたはずの短剣がいつの間にか鞘に戻ってきてる!?


 短剣でノエルのレイピアを受けると、光のレイピアは跡形もなくバラバラに砕け散ってしまった。


 そのままノエルの足を掴むと、小さな身体からは想像もできないような怪力でノエルを地面に叩きつける!

 そして、倒れ込むノエルの足に目掛けて……勢いよく短剣を突き立てた――


「う! うぁぁあ!!」


 ノエルの絶叫が室内に響き渡る――

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