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k03-40 天才科学者

 戦況は拮抗するかと思ったけれど、さっさと動き出したのはゲルニカだった。



「なんとしても2体とも捕獲したいが……ノエルだけでは2人を相手にするのは厳しいか……。そうだ!! 今こそアレだろ!」


 そう言って壁の方へと走っていく。

 ゲルニカが手を触れると、そこにドアがあったらしく壁の一部が開く。


「! 待て! 逃げる気!?」


 慌てて追いかけるけれど、後一歩の所でドアが閉まり取り逃してしまう。


 仕方ない。

 さっきほどの威力は出ないかもしれないけど、可動式のドアくらいならぶっ壊せるはず。


 ドアがあった位置に向け、炎の魔鉱石を構える。



 その時、背後からアイネの声が聞こえてきて思わず振り返る。


「ち、ちょっと、ノエルちゃん! ほんと危ないから!!」


 しまった。

 アイネなら大丈夫だろうと思ってあんまり気にしてなかったけどて


 まずい、ノエルの体力量は分からないけど、息一つ切らしてないところを見ると人間よりは遥かに体力ありそうね。そういえば逃げてたときも息一つ切らしてなかったかしら。

 このままじゃアイネとファントムの方が先に時間切れだ。

 アイネの戦力無しじゃノエルに勝てるはずがない。


 意を決して走り、カルミアさんの手を引いて穴から外へ。


「アイネ、任せていい!?」


「え、えぇ!? せめてミラージュに切り替えるの待ってくれない?」


 そう言いながら、ノエルの凄まじい乱撃を受け流すアイネ。

 私じゃあれは無理ね。


「……ごめん! すぐ戻るから!」


「ち、ちょっとぉ〜!!」


 大丈夫。

 ハイドレンジアの事件の後、アイネも特訓を重ねて随分とマモノの力を維持出来るようになった。

 あの様子ならあと数十分はいけるはず。


 少々お怒り気味のアイネの声を背中に受けながらも、カルミアさんの手を引いて部屋を後にする。



 ―――



「ち、ちょっと待って! 何処に行く気!?」


 カルミアさんが走りながら後ろから叫ぶ。


「ノエルに打たれたウィルス、あれ元々はカルミアさんが作ったんですよね!? なら、抗ウィルス薬だって作れるはず!」


「む、無茶言わないで! あのウィルスを作り上げるのに何年かかったと思ってるの!?」


「でもゲルニカは一晩で新しいウィルスに作り直した! きっと何処かにその資料か何かが残ってるはず! それさえ見つかれば可能性はあります! だってカルミアさん、ゲルニカも認めた天才なんでしょ!?」


「……あるとすればゲルニカ専用の所長研究室よ。こっち、着いてきて!」


 そう言って廊下を曲がるカルミアさん。



 時折襲ってくる警備員を蹴散らしつつ、広い研究所の中を走って行くとやがて立派なな扉の付いた部屋の前に出た。


「ここよ、ゲルニカの研究室。あいつは長年一緒に研究室してきた所員の事すら全く信用してなかったから、大事な実験データならきっとここにあるはず」


 ドアを蹴破って中へ入る。



 それほど大きくは無い部屋。


 中央にある大きな机の上には書類が乱雑に積み上げられている。

 壁にあるホワイトボードには何やら数式や図形が汚い字で描き殴られており全体的に散らかったイメージ。

 棚には液体で満たされた瓶に詰め込まれた生体標本がずらりと並んでるけど、何なのかは深く知りたくもない。


 机の上の書類を乱暴に掻き分けるカルミアさん。


「違う、これも違う……あった! これよ!」


 1枚の大きな紙を手に取るとその他の書類を薙ぎ払い机の上を空ける。

 紙には図形と文字がびっしりと書き殴られている。



 急いで解読を始めるカルミアさん。

 指で文字をなぞり、近くにあったペンを取り机の空いたスペースに直接メモを取りながら読み進めていく。


 最初こそ順調に進んでいたようだけど、直ぐにその手が止まる。


 そして――

 バンッ!! と机を両手で思いっきり叩く!


「……ダメ!! 私じゃ全然分からない!! どんなアプローチから手をつけたのか読み取るだけでも何日かかるか!」


 そう言って悔しそうに頭を掻きむしる。



「……あの、私にも見せてください!」


 カルミアさんの横から図面を覗き込む。


「一般には知られていないバイオロイドの、しかもそのウィルスに関する資料よ。悪いけれどあなたが見たところで……」


「……あの、ノエルの核って魔鉱石だって言ってましたよね?」


「え? ええ。魔鉱原石っていう特別な魔鉱石よ」


「……てことは、この値はマナの流れを示してる訳ね。それからこっちは4大属性とそれに連なる4副属性の配合。それならこっちがマナの濃度だとして……」


 カルミアさんが途中まで書きかけた数式に私なりの解釈を加えて書き進めて行く。


 それにしても……


「ねぇ、カルミアさん。あの人、これを一晩で仕上げたって言ってましたよね?」


「そうよ。こんな物を一晩で。……正直、天才だわ」


「……」



 ―――



 一方、実験場ではノエルとアイネが引き続き激しい攻防を繰り広げていた。


「生捕り、生捕り」


 ぶつぶつとそう繰り返しながら、かなり際どい斬撃を繰り出し続けるノエル。


「わ、ちょっと、ノエルちゃん! ホント危ないからっ!」


 レイピアがアイネの首元を的確に捉える。

 しなやかな動きでそれをギリギリに交わすアイネ。


「ち、ちょっとノエルちゃん!? 一応聞くけど、生捕りの意味分かってる!?」


「生捕り……生捕り?」


 あ、絶対意味分かってない。

 どうりでさっきから明らかに遠慮が無いと思った。


『主よ、どうする? 気持ちは分かるが、さすがにそろそろ反撃に転じぬとこれ以上は持たんぞ!」


 ファントムがアイネに語りかける。


「わかってるけど……うー、さすがにノエルちゃんを攻撃する訳には……」


 容赦のない斬撃をいなしつつ後ろに下がるアイネ。


 困った。

 ファンちゃんの言う通りさすがにそろそろマナの量も尽きそうだ……。


 こうなったら一旦引くしかないか……。

 そう思ってシェンナが開けた大穴を見た時、丁度そこからシェンナとカルミアさんが飛び込んで来た!

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