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k03-39 四者四様

「……」


「どうした? 反論も出来んか?」


 黙って話を聞く私に気を良くしたのか、饒舌に話を続ける。


「それにしても素晴らしいではないか彼女! 私のスライムはなな、再生本能を残す為にまだ意識を保たせてあるのだよ。そのため隙あらば私の身体を取り込もうと躍起だ。そのせいで数時間おきに薬物投与を余儀なくされ鬱陶しいったらありゃせん。――それに引き換え、彼女はどうだ! 完全にマモノの力を支配しとるようではないか!!」


 ノエルの攻撃を防ぎながらアイネが答える。


「私、ファンちゃんの事支配なんてして無いですよ! 逆にいっつも怒られてばっかりだし!」


 確かに、最初の頃こそアイネに絶対服従の姿勢を見せてたファントムだったけど、最近は無茶するアイネによく小言を言ってるのを見かけるわ。

 中々言う事を聞かないアイネに手を焼いてるみたいだけど、それでもアイネが困ってる時は全力で助けてくれる。

 主従ってより、破天荒なお姫様と、何だかんだ言いながらまんざらでもない騎士って感じね。


 アイネが続ける。


「支配なんかしなくても、ファンちゃんは私が困った時いつも助けてくれます。悲しい事があった時はそっと声を掛けてくれるし、楽しい事があったときは嬉しそうに私の話を聞いてくれます!」


「……何をバカな事を。マモノとの融合の副作用で幻覚でも見えておるのか? 低脳なマモノに心なぞある訳がなかろう」


 やれやれと肩を落とし頭を振るゲルニカ。


 その隙に、私の方を確認すると小さく頷き再びノエルとの戦闘に集中するアイネ。



 ――サンキュー、準備OKよ!



「まぁ、あんたのイカレた価値観なんかさっぱり理解出来ないけど、1個だけ確かな事があるわ。――あんた、話長いのよ!!」


 戦闘中に関わらずペラペラとよく喋ってくれた。

 お陰で詠唱は完了。


 手元に隠しておいた土の魔鉱石をゲルニカに向けて構える。


『秋水の大太刀 バティン・ロッカ!!』


 琥珀色の魔鉱石から眩い光が放たれる。


 ――次の瞬間、ゲルニカの周囲の床に閃光が走り、無数の巨大な刃が一瞬にして天井めがけて立ち登る!


 鋭い輝きを放つ原色の刃は、二重螺旋のようにぐるりと取り囲みその内側にゲルニカを閉じ込める。

 まるで刃で作られた牢だ。


「触らない方がいいわよ。安い剣なんかよりよっぽど切れるから。下手に抜け出そうとなんかしたら五体満足で居られる保証はないわ」


 バティン・ロッカ。

 地面から発生させた鋭い石柱によって相手を攻撃する土の中級輝石魔法。

 本来攻撃魔法だけれど、それを捕縛用に改変・改良した私のオリジナル版。

 展開位置を変えれば盾やバリケードにも使えるし中々気に入ってる。


 刃の僅かな隙間からゲルニカの様子が窺える。

 今度こそ観念したのか、目を丸くして隙間からこっちを見ている。


「ちなみに、その気になればもう一発その檻の中に撃ち込んであんたをサイコロステーキみたいにだって出来るから。さ、諦めてノエルを止めて」


 まぁ、本当は土の魔鉱石は今使った1個しか無いから無理なんだけど。

 それに、そんなエグい事こっちが勘弁だわ。

 それでも脅しとしては十分なはず。



 ……けれど、私の警告を無視して、すたすたと刃の檻に近づくゲルニカ。


「ち、ちょっと! 聞こえなかったの!? 本当に危ないから止まりなさい!!」


 躊躇なく前面から刃の壁に突撃し、賽の目状に切り裂かれる。


 が、その瞬間全身が緑色に変化し、そのまま檻を抜けると再び結合して何事も無かったかのように元の姿に戻る。


 な、なに!?

 身体の一部がスライムになってるだけじゃないの!?

 脳と股間は生身だって言ってたし……。

 うぅ。考えたら気持ち悪くなってきた。

 何せこれは想像以上にヤバい相手かも。


「す、素晴らしい! 今のは! 今のはまさか輝石魔法ではないか!? 古い文献で読んだ事があるぞ!!」


「そ、そうよ。てか輝石魔法よりもあんた自身の方がよっぽど珍しいと思うんだけど」


「残念ながら、これは私とこのスライムの個体、それぞれに奇跡に近い確率で親和性があっただけのようなんだ。後に数十人に同じ手法で融合実験を試みたものの、全員ただの赤いゲル状の液体になって死んだよ。結果、再現は不可能という結論に達した。……そんな出来損ない技術よりも、貴様達だ!! 揃いも揃ってなんなんだ!? マモノの力を操る少女に、失われた魔法を使う少女! あぁ、今日は何と言う日だ! 神よ! 感謝します!!」


 両手を組んで天に祈りを捧げるゲルニカ。


「神様信じてないんじゃなかったの?」


 私の嫌味も聴こえていないようで、祈りのポーズのままブツブツと興奮気味に何か呟いている。


「これはいい、いいぞ! 個々にたっぷり研究した後は、細胞レベルにまで分解して混ぜ合わせてみるのはどうだ!? 2体共マナに対して特別な構造があるはずだ! いったいどんな反応が起こるのか!? あぁぁ素敵だ!!」


 何か明らかにヤバい独り言が聞こえてくる。

 絶対に捕まりたくないわね。


 そっとポケットの中を確認する。


 小さな炎の魔鉱石があと2つ。

 隙さえあれば初級の魔法なら打てるか。

 物理攻撃は効かないとしても、炎で焼き払う事は出来るはず。


 けど……ダメね。

 それじゃノエルを元に戻す方法を聞き出せない。


 四者四様、それぞれに圧倒的な戦闘力を持ちながらもお互いに相手を傷つける訳にはいかない戦況。

 随分と厄介な話になってきたわね。


 さて、この状況をどうするか……。

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