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k03-31 大空を往く船

 翌朝


 大きな洗面台の前に並ぶシェンナとノエル。


 朝は強くて既にシャキッと起きてるシェンナに対して、ノエルの方はまだ寝ぼけた様子。

 時々寝落ちしそうになってシェンナに起こされながら歯磨きをしたり、髪を解かしてもらったりと、まるで年の離れた姉妹のようだ。


「昨日夜更かしさせすぎちゃったかな? ごめんね」

 そう言いながらタオルでノエルの顔を拭くシェンナ。


「……だいじょうぶ。楽しかった」

 ノエルが顔を見てにっこりと笑う。


 そんな2人のやりとりをじっと見つめるアイネに気づき、シェンナがそっと声をかける。


「アイネ、何か目腫れてない? 昨日あんまり寝れなかった? ……もしかして夜通し警戒してくれてたとか!?」


「え!? あ、そんな事ないよ! ただちょっと夜中に目覚めちゃって中々寝れなくて」

 笑顔を作り慌ててブンブンと手を振る。


 そうは言うものの、カルミアと別れてホテルに帰って来たころには既に明け方だった。

 普段から朝が弱いアイネにとって、ほぼ徹夜は中々しんどい所。


「そっか……今日は程ほどに見学して早めにホテルに戻ろう!」


 そんな話をしながら身支度を整えると、朝食を取りにホテルのレストランへ。


 ……


 ストランの朝食はビュッフェ。

 ウィンナーやサラダ、スープやフルーツとよくあるホテルの朝食だが、さすが高級ホテルという事もありどれも種類が豊富。

 さすがにノエルがご所望する「オムライス」は無かったが、代わりにスクランブルエッグにケチャップをかけてもらいご満悦の様子だ。


「そういえば、マスター今日も何か調べたい事があるとかで先に行ってるって。メール来てたわ」

 そう言ってシェンナが携行端末の画面を見せる。


「分かったよ。昨日から一生懸命何やってるんだろね? ……あ、そういえば今日ってどこでカルミアさんと待ち合わせるんだろ!?」


「あ、ホントだ! そういえば連絡先交換してないわね。うっかりしてた……。ん~、セロシアさんは連絡先知ってたみたいだから、セロシアさん経由で連絡来るんじゃないかな?」


「そっか。それじゃ、それまで色々と見て周ろう」


「オー!」

 そう言って拳を上げてにっこりとノエルを見るシェンナ。

 それを見てノエルも真似をする。


 いつになく楽しそうなシェンナ。

 その様子を見ていると、どうしても昨晩の出来事を話し出せないでいるアイネだった。




 ―――




「ひぇ~、混んでるとは思ってたけれど、かなりの人ね!」


 やって来たのは飛空艇関連の展示エリア。

 なるべくノエルも楽しめそうな展示を、と思って選んだけれど朝から既に列が出来てる。

 航空関連の技術がこんな形で一般に公開されるって珍しいもんねぇ。


 2世界大戦終結時にキプロポリス・エバージェリー間で不可侵条約が結ばれ、"大空"を渡っての行き来は全て"共益協会"の管理下に置かれる事に。

 どこかの国が独断で条約に反故にしないよう航空技術も協会が一括管理する事となり、もし航空技術を独自研究した街は条例違反となり弾劾の対象となる。


 とは言え、マモノが闊歩する荒野を列車や車で行き来するのもリスクが高く、街から街へ人と物を安全に運ぶため航空技術の一般開放を! という声も年々高まってきている。

 そんな世論の煽りを受けて仕方なく、やってる感を出すための開催……ってところかしらね。


 第2階層にある展示エリアに巨大な飛空艇をそのまま運んでくる訳にはいかず、さすがに実物を拝むことは出来ないみたいだけど模型や写真、それに実際に使われていたパーツなんかも展示されるみたい。



 待つ事30分程、混みあう会場の中に入る事が出来た。


 まず目を引くのが、会場の高い天井から吊り下げられた大きな模型。

 細長い楕円型の気球の底辺にゴンドラ、その後方に方向舵が取り付けられたオーソドックな飛行船。


 少し進んだ所に大型の魔鉱パネルがあり、実際に飛んでいる様子が動画で流れている。

 その隣に説明資料があったのでノエルに読んであげる。


「えーと、なになに……あの模型は、"AS-S08 ストーク-Ⅲ"。現在運用されている中で最長の航行記録を持つ信頼性の高い機体で……ふーん、今一番よく使われてる機体があれなんだって」


 パネルから目を話してもう一度模型を見上げる。


「あれで……お空とべるの?」


 模型を見ながらノエルが呟く


「そうだよ。えーと、化石燃料エンジンによる推進力で逆風にも逆らって飛行する事が可能で……ここから異世界まで8日間で行けるんだって」


「あれ、キプロポリスからエバージェリーって10日間かかるんじゃなかったっけ? "十昼十夜彼方の異世界"ってよくおとぎ話で聞いたけど」


 隣でアイネも同じように模型を見上げる。


「えーとぉ……あ、あったあった。飛行船が開発された当初は確かに10日間かかったそうよ。しかも乗員はたった6人。そこから改良を重ねて今は40人の乗員を8日間で異世界へ送り届けられるようになりました……って」


「え、この大きさで40人しか乗れないの!?」


「そうみたいね……ゴンドラの内部は1/5以上がエンジン。そこに大量の燃料やら物資とかも積まないといけないから人が乗れるエリアはあんまり広くないみたい。うへぇ……こんな狭い所に8日間缶詰かぁ……キッツいでしょうね」


 そんな事を話しながら、人の流れに沿って会場の中を進んで行く。

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