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k03-26 非人道的な

「ったく、今度は何だってんだ!? 検査だ何だって散々体中調べられて、次は何しろってんだよ?」

「そもそもここは何処なんだ? 移送中もずっと目隠しなぞしやがって」

「……」


 画面に映し出された3人の男達が口々に文句を垂れる。

 そんな彼らに対し、モニター越しに女性職員がマイクで話しかける。


「皆さん、検査ご苦労様でした。何かとご不満があるのは分かります。ですが、これで最後ですのであと少しご辛抱ください」


 スピーカーを通して部屋の中に届いているのだろう。

 騒いでいた男達が大人しくなる。



 変わって、今度は老齢の研究者がマイクを取る。


「ごきげんよう、犯罪者諸君。大口を叩くのは結構だが、諸君は罪を犯し服役中の身だという事を弁えるように」


 機材を通して向こう側の音声も聞こえてくる。


「そんな事は分かってんだよ! 簡単な実験に協力するだけで刑期を短縮してくれるってから仕方なく乗ってやったんだ。それなのに2日もかけて検査だ検査だ……いつになったら肝心の恩赦の話が出来るんだ!?」


 額に傷のある見るからに素行の悪そうな男が、苛立った様子で床に唾を吐き捨てる。


「ああ、それはすまなかった。――では、簡潔に説明しよう。今から君たちにはある戦闘テストに参加してもらう。難しいルールは特にない。指定した対象を好き勝手に攻撃してくれれば良い。与えたダメージ量に比例して刑期が短縮される。そうだな……完全勝利となれば刑期帳消しも藪沙汰ではない」


「!? 刑期帳消し!? 残ってる刑期に関わらずか?」


「その通りだ。破格の条件だろう?」


「そりゃ確かに……俺は刑期120年だ。中途半端に減刑された所でシャバに出る事にはヨボヨボのジジイだもんな……願ったりかなったりだぜ」


 男がニヤリと笑う。



「まて、そんな上手い話があるとは思えない。そんな破格の条件を出して来るとは……おそらく、最初から俺たちに勝たせるつもりなど無いのだろう。例えば……素手で新型のパワードスーツの相手をしろ……などか?」


 大柄な男が、スピーカーの方に向かって鋭い視線を送る。


「な、そう言う事か!? おい! そんなもんただの虐殺だろ! そんな非人道的な事が許されると思ってんのか!?」

 傷の男が大声で抗議する。

 ちなみにこの男、婦女暴行により3人の若い女性を惨たらしく殺した非人道的な極悪犯である。



「いやいや、疑う気持ちも分かるが安心してくれ。これはれっきとした司法取引だぞ、そんな酷い真似をするわけないじゃないか。相手は"ただの生身の人間だ"。それに君たちはそこにある兵器の中から好きな物を好きなだけ使って構わない。なーに、新型兵器の性能テストだと思って貰って構わんよ」


 床の一部がせりあがってきて箱のように開く。

 中には大小さまざまな刃物や拳銃、投擲弾、バズーカ、それに魔兵器まで揃っている。


「随分と準備が良いじゃないか……」

 大柄な男がそれらをじっくりと眺め、自身の身の丈と同じほどの刀身を持つ巨大な剣を手に取る。


「何だ? こんな選り取りみどりなのにわざわざ剣なんか選ぶとか。原始人かよ」

 そう言いながら傷の男が一番大きな魔兵器を手に取る。


「お前……魔兵器なんか使った事あるのか?」

 ずっと無口だった細身の男は、そう呟くと一般兵器の散弾銃を手に取りじっくりと眺める。


「は? ある訳ねぇだろ」


「……相手戦力も分からないような状況で使った事もない武器を手に取るとは……」

 呆れたといった様子で首を振る細身の男。


「んなもん普通の銃と変わんねぇだろ! ……何なら今、お前で試し撃ちしてやろうか!?」

 そう言って彼に魔兵器を向ける。


 それに対して鋭く睨み返す細身の男。


 一瞬即発……



 ――その時、壁の一部が音も無く開く。


 ……中から出て来たのは、年端も行かない灰色の髪の少女だった。


「な、何だ?」

 傷の男が首をかしげる。


「諸君、お待たせした。彼女が君たちのターゲットだ。思う存分壊してくれて構わない」



「……何だと? 俺たちにこの少女を殺せというのか?」

 大柄の男がスピーカーに向かって目線を送る。


「その通り。先ほども伝えた通り、手段は君たちにお任せるよ」



「……成程な」

 細身の男が呟く。


「なにがだよ!?」

 先程から独りで騒がしい傷の男がくってかかる。


「これは、兵器の性能テストと銘打っての精神実験か何かだろう。例えば、人間は自分のためとなれば無抵抗の少女を相手にどこまで残酷になれるのか……といったところか」


「……悪趣味だな」

 大柄な男が静かに吐き捨てる。


「裏社会では未だに非人道的な実験が繰り返されていると聞いた事があったが……ここまでとは」

 細身の男が呆れた様子で頭を振る。



「なぁ、精神実験か何か知らねぇが、ようするにあの可愛らしぃ~女の子をグチャグチャに可愛がってやるだけで恩赦が受けられるんだろ!? ロリコン変態性癖野郎の変態科学者に感謝だな」

 そう言うと、傷の男は手に持った魔兵器を床に置き、代わりに小型のナイフを手に取る。


「お嬢ちゃん、安心しな。おじさんは優し~からよ、一発で簡単に恐しちゃう事はしないからさぁ」

 そう言ってニタニタしながら少女へと近づいて行く。


「ロリコン変態性癖野郎はお前だろう」

「下衆な……」

 細身の男と大男が吐き捨てる。



「では、諸君の検討を祈る。実験開始だ」

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