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k03-20 消えた天才研究員

 ノエルの頭を撫でながら星を見上げてると、隣のベンチからアイネとセロシアさんの話し声が聞こえてくる。


 ……


「今回は本当に色々ありがとうね。お客さんなのに色々助けて貰って」


「いいえ、全然ですよ」


「オートマタの会場でも凄かったじゃない。あの黒い爪? ジンさんには秘密だって言われたけど、こっそり教えてよ」


「あはは……ごめんなさい。ナイショなんです」


「それはそうよねぇ。今まで見た事もない技術だし。……それでね、悪いとは思ったんだけれど、気になってあなたの事少し調べさせて貰ったの。あ、調べるっていってもテイルから預かった資料に載ってる事だけよ」


「え、はい……」


「……驚いたわ。あなた――あのシルヴァント・ヴァン・アルストロメリアのひ孫さんなのね」


「……はい。あの、黙っていてごめんなさい」


 俯いて小さな声で謝るアイネ。



「……? あ、違うの、ごめんなさい! そうね、世の中ではシルヴァント氏の事悪く言う人多いものね」


 そう言って慌てて手をブンブンと振るセロシアさん。



「外では"大罪人"なんて呼ばれてるらしいけど、ここでは彼を尊敬する人も少なくないのよ。私もその1人」


「え?」


 驚いて顔を上げるアイネ。


「私達バンブー・カラムの研究者は彼の事をこう呼ぶわ。"異世界航空学の父"と」


「異世界航空学……?」


「そう。世界初の異世界航行が可能な飛空艇を作り上げた発明家。それでいて、自らその船に乗り込み"大空"を渡り異世界"エバージェリー"へ最初にたどり着いた偉人。歴史上彼以上の功績を残した人なんて、オリジン・ロウくらいじゃないかしら」


「……曽祖父の事、何かご存じなんですか!?」


 思わずセロシアさんに食い気味で顔を寄せるアイネ。



「いえ、残念だけれどそんなに特別な事は。ただ、80年前。彼が世界を渡る船を製造したのがここバンブー・カラムの前身となった研究所。80年前、あなたのひいおじい様はここに居たのよ」


「え……!?」


「私、本当は異世界航空の道に進みたくて。独学で色々調べただけだからどこまで合ってるかは分からないけど……当時、キプロポリス中の国々がまだ協力関係にあった頃、各国から優秀な研究者を集めた研究機関がこの場所にあったそうなの。人類が豊かに暮らせるような研究が日夜行われてたんですって。その中で、新たな資源を求めて異世界へ行こうっていうプロジェクトが立ち上げられて。そのプロジェクトのリーダーがシルヴァント氏だったそうよ。そしてプロジェクトは見事に成功。その功績から、研究所はどんどん発展して今やこんな立派な都市になった」


「そう……なんですね。全然知らなかった」


 そう言って、夜空を見上げる。



「だから、ここの研究員達はバンブー・カラムの礎を築いたシルヴァント氏に皆少なからず敬意を払っているわ。そんな偉大な人の子孫にこうして直接会えるなんて……感激だわ。他では結構風当たりの強い事もあると思うけれども、負けずに頑張ってください」


「……ありがとうございます。ひいおじいちゃんの事、そういうふうに言ってくれる人多く無いから……嬉しいです!」


 セロシアさんの顔を見つめて笑うアイネ。



「そうそう、この話には少し気になる点があってね。実は最初の船は2隻建造されていたって噂があるの。1隻はシルヴァント氏の船。もう1隻は、彼と肩を並べる若き天才研究員がリーダーを務めて建造してたそうなんだけれど……その船が凄かったらしくて、当時は空を飛ぶ船ってだけでも想像もつかないような物だったのに、さらに、聞いた事も無いような推進システムを搭載する予定だったとか!」


「は、はぁ……」


 興奮気味に捲し立てるセロシアさんに驚いてアイネがそっと後退る。


「それで不思議なのは、噂はあるんだけど実際の記録が船についてもその研究員についても一切残ってないのよ。――忽然と消えた技術と謎の天才研究員! バンブー・カラムでは有名な話なんだけれど、ロマンあると思わない? 本当は聞きたかったのはそっちの事なんだけど……ひいおじい様の記録とかに何か残ってないかしら」


 そう言って目を輝かせてアイネに迫る。


「あ、あはは。ご、ごめんなさい。実は家にもひおじいちゃんの記録って殆ど残ってなくて……。ここの研究員だったって事も実は今初めて知りました」


「……そっか~、残念。謎の研究員の真相に少しは近づいて、オカルトマニア共を出し抜けるチャンスかと思ったんだけどな~」


 残念そうに項垂れるセロシアさん。


「ごめんなさい。ふふ、それにしても最新の技術を研究する都市なのに、意外とオカルトとか都市伝説がいっぱいあるんですね」


「そんな都市だから、じゃないかな。奇妙な噂や都市伝説に関しては事欠かないわ」


「都市伝説かぁ……」



 暫く黙った後、再びアイネが口を開く。


「あの……私からも1つ聞いていいですか?」


「ん? えぇ。私で答えらえる事なら」


「実は……今日の昼間。少し事故……みたいなものに遭遇したんです」



 ――!?

 まさかアイネ、セロシアさんにノエルの事話すつもり!?

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