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k03-18 おんぶ

 ホテルに帰ってきたのは21時を過ぎた頃だった。


 部屋でくつろいでいると、セロシアさんの仕事が終わったらしく携行端末に連絡が入る。



 ノエルちゃんを連れてロビーへ降りて行くと、セロシアさんが待っていた。



「2人とも、ありがとう! ホントに助かったわ!」


「いえ、私達も楽しかったですし。――それより、お姉さんと連絡つきました?」


「それが全然ダメ。端末に連絡しても圏外みたいで。まぁ、仕事柄いっつもそうなんだけど」


「……お姉さんってどんなお仕事されてるんですか?」


 昼間の様子から、どこかの研究員だという事は想像できるけれど。

 カルミアさんが襲われていた事を伝えるべきなのか、それともセロシアさんは巻き込むべきじゃないのか……。

 正直判断に困り、少しでも情報を聞き出そうと当たり障りのない所から探りを入れる。


「え? ん~。小さな企業で研究員をしてるらしいんだけど……。職務規定だとかで、実は私も詳しい事までは知らないのよ」


「そうなんですか……。研究都市ですもんね。色々規定とかも厳しいんですね」


 セロシアさんは何も知らない……か。



「さてと。それじゃノエルちゃん、行こっか」


 そう言って手を差し伸べるセロシアさん。



 ところが……


 ノエルちゃんは後ろから私の腰にがっしりと抱きつき離れようとしない。


「ダメよ、ノエルちゃん。お姉さん達も忙しいんだから。私と一緒に行きましょ。ね?」


 セロシアさんが優しく諭すけれども、首をブンブンと振って私から離れようとしない。

 これだけ懐いてくれると正直悪い気はしないわね……というか、か、可愛いかも。



 ノエルちゃんのそんな様子を見てアイネが口を開く。


「……あの、セロシアさん明日もお仕事ですよね? お姉さんがいつ頃迎えにくるか分かりませんけれど、ノエルちゃんどうするんですか?」


「ん? えぇ。明日の昼間は会社の託児所が予約取れたの。知り合いの社員に臨時でお願いしたから預けられるわ」


「……あの、もしセロシアさんさえ良ければ、明日私達でノエルちゃんお預かりしましょうか?」



 アイネからの突然の提案に驚いて顔を見合わせる私とノエルちゃん。


「え!? それは私はもちろん構わないけれど。ノエルちゃんも随分懐いてるみたいだし。……でもアイネさん達明日も見学とかで忙しいでしょ?」


「大丈夫ですよ。ノエルちゃんおりこうさんだから、一緒でも見て回れると思います。一般向けや子供用品向けの展示とかもあったはずですし。ね、シェンナもいいよね?」


 そう言って私を見る。


「そ、そりゃもちろん。ノエルちゃんもそれでいい?」


 私の顔を見て、嬉しそうにコクコクと頷くノエルちゃん。



「それじゃぁ……申し訳ないけれどお願いしても良いかしら。本当に2人には助けて貰ってばっかりね……。」


「いえ、こちらこそ色々お世話になってるので何かお礼しないと」


 そう言って笑うアイネ。


 ……よかった。アイネ、ナイス!


 ホテルに帰ってきてからも何事も無いし、昼間の奴らの事は大丈夫だとは思ってたけど正直心配だった。

 セロシアさんの家までは一緒に送りに行こうとは思ってたけど、一緒に居られるなら安心ね。



「あ! そうだ、お礼と言っちゃなんだけれど、さっきの会食でコレ貰ったのよ。もしこの後時間あったら……」


 そう言って、懐からチケットらしきものを取り出すセロシアさん。



 ―――



 バンブー・カラムの中は一切太陽が差し込まないので、人工の照明で昼夜が表現されている。


 自然界と同じ明るさになるよう設定さられているそうで、21時過ぎの街中は真っ暗だ。


 普段なら人通りは殆ど無いそうだけれど、メッセの開催中はそれなりの人通りがある。

 セロシアさんを先頭に、4人並んでまだ賑わっている通りを歩きながら、最寄りの支柱エレベーターへ。


 支柱の袂にたどり着き、その大きさに圧倒され思わず見上げる。


 遠くからだと分からなかったけれど、高層ビルくらいの大きさはありそうね。

 少なくともウィステリアにはこんな高い建物は無い。

 これが柱だって言うんだから驚くわ。


 その側面にはいくつものエレベータがくっついていて、上へ下へと忙しく行き来している。

 セロシアさんの案内でその中の1つに並ぶ。


 他のエレベータは2,3人が並んでいるだけだけれど、ここだけ行列が出来ている。



「もう遅いのに結構な人ですね」


 私の前に並ぶセロシアさんに話しかける。


「一般展示の中では一番人気だからね。完全予約制だし、夜しかやってないから見るにはホテルも取らないといけないし。結構競争率高いのよ。この展示を目当てに来る若いカップルも多いらしいわ」


「へぇ、楽しみだなぁ」



 そんな話をしていると、後ろからトントンと軽く肩を叩かれる。


 振り返るとアイネが優しい笑みを浮かべながら私の隣を指さす。


 見ると、私と手をつないで立ったまま、ノエルちゃんがコクコクと居眠りをしている。



「あらら、疲れちゃったかな。ごめんね」


 起こさないように小さく声をかけると、そのままノエルちゃんをおんぶする。


「……ん?」


 一瞬目を覚ましたみたいだけれど、そのまま背中にぎゅっと抱きついて寝息を立てる。

 ちっちゃいなと思ったけれど、子供って結構重いのね。


「疲れたら変わるよ」

「ホントにごめんなさいね」


 アイネとセロシアさんが話しかけてくる。


「うん、大丈夫」


 ノエルちゃんの体温が背中から伝わってきて暖かい。

 ふと小さい頃の事を思い出す。


 そう言えば、私もこうやってよくお父様におんぶして貰ってたっけ……。

 あの時のお父様も同じような気持ちだったのかな……。

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