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k01-09 情けは人の為ならず

「こ、コレ結構重いな! お前これ担いでよくこの坂上がってこれたな!」

 スライムにやられてボロボロになったアイネに代わり荷物を背負うジン。

 中継器の重さでフラフラしている。


「だから言ったじゃないですか!」


「これ、中の媒体液捨てたら軽くなるんじゃ……」


「ダメですよ! 使い捨てじゃないはずですから教務課に怒られますよ!?」


 そんな会話をしながら丘を下っていくと、遠く丘を下った辺りに子供達の姿が見えて来た。先ほどの初等グレードの生徒達のようだ。

 何やら数人の生徒が教員の指示を受けながら武器を振り回している。

 たまたま遭遇した小型のマモノか何かを相手に戦闘訓練でもしているのだろう。


「あ、さっきの子達もうあんな所まで行ってたんですね。元気だなぁ」


「ガキなんて元気だけが取り柄だからな」


「あれ、マスター子供嫌いなんですか?」


「あんまり好きじゃねぇな。煩ぇし」


「そうですか? なんか見てるこっちまで元気貰えて良いじゃないですか!……って、あれ?」


 遠目に子供たちを見ていたアイネが何かに気づく。


「ねぇ、マスター。あそこ何か居ませんか? ほらあの子達から左の方にある大きな岩の辺り」


「あん? どこだって?」


 目を凝らすと、子供達から少し離れた位置にある大岩の陰で何か大きな物が動くのが分かった。


「あーー、多分オークだな。ゴブリンにしちゃデカすぎるしな」


「え、危なくないですか!?」


「大丈夫だろ。さっきの教員魔兵器持ってたろ、中型のショットガン。弾は何か知らんが、オークならだいたい1発で行動不能、2,3発も撃てば確実に殺せる」


「そうですか……でも、あのオーク何か様子変じゃないですか!?」


「なんだよ、オークなんていつもフゴフゴ唸って涎垂らしてるんだからだいたい様子は変だろ」


 そう言いながらジンは背中の荷物を降ろし、ポケットから簡易双眼鏡を取り出しオークの方を良く見る。


「……ありゃクレムゾンオークだな。珍しいな、こんな街の近くに居るなんて」


「え!?嘘ですよね!?」


 アイネはジンから双眼鏡をもぎ取り覗き込む。


 真っ赤に血走った目。

 開きっぱなしの口には禍々しい牙がびっしりと並び、その全身はどす黒く濁った血のような深紅の皮膚で覆われている。

 所々砕けボロボロだが重厚な鎧を身にまとい、手には巨大なトゲ付きのこん棒を握りしている。


「この辺りの最高警戒マモノじゃないですか!?」


「まぁ、確かに強いな。一般教員1人じゃ厳しいだろうな」


「助けに行きましょう!」


「やめとけ、魔兵器も使えないんだ。巻き込まれたらこっちまで危ないぞ」


「……テイルへ連絡して魔兵器の緊急使用許可を降ろして貰います! 子供達の命がかかってるんですから降りるはずです」


「だとしても、今からあこまで行って、荷物降ろして中継器のセッティングしてたら多分間に合わねぇぞ」


「……あっちの中継器を使わせて貰いましょう! 使用許可と同時に、私達の魔兵器の登録をあっちに移してもらいます。」

 そう言ってポケットから通信端末を取り出しテイルへ連絡をするアイネ。

 通信用の回線はディシプリン・システムとは違いエリアが広いためこの位置からでも問題なく繋がる。


「……あの、緊急窓口ですか!? 魔兵器の緊急使用許諾と、中継器登録移行をお願いします! 郊外で初等グレードの生徒達と教員がクレムゾンオークに襲われそうです!

 ……はい! 場所は……この通信の発信位置から街の方へ向かって2~300m程。付近にフロート型中継器の反応があるはずです!」


 暫く無言のまま待つ


「はい! ありがとうございます! ウェポンIDはWTHG0100143です。……はい! アイネ・ヴァン・アルストメリアです」


 再び、しばしの無言。

 その後アイネが声を荒げる。


「え? どう言う意味ですか!? そんな……緊急事態なんです! ちょっと……!」


 そう言うと耳から通信機を離して俯く。


「どうした?」


「許可出来ないって。……私の名前を聞いた途端に」


「……なるほどな。まぁ、俺が申請した所で同じ事だろ。……仕方無い、これで何かあってもテイルの落ち度だ。やる事はやったさ」


「そう言う問題じゃないです! どうにかしないと!」


「なんで? お前の事『大罪人』とか言って毛嫌いしてる連中だぜ? 別にお前が助けてやる義理なんか無いだろ?」


「……私が嫌われ者なのは分かってます! でも、だからと言って困っている人を見捨てるような人に私はなりたくありません!」


「何だそれ。どんだけお人好しなんだよ」

 呆れて首をふるジン。


「まぁ、お父さんからの受け売りなんですけどね。"情けは人の為ならず。一日一善を心がけよう”――ヴァン家の家訓です!」

 そう言って笑うアイネ。


 その言葉を聞いてジンがニヤリと笑う。

「……ホント、どこまでもお人好しな家系だわ」


「え?」


「なんでもない! それより、いよいよヤバいぞ!」


 そう言って子供達の方を指さす。

 静かに様子を見ていたクレムゾンオークがゆっくりと動き出す。

 大岩の死角になっており、戦闘に夢中な子供達は気づかない。


「しゃーない、おれが注意を引くからその間にお前は子供達を連れて避難しろ」


「で、でもマスター」


「大丈夫だ、適当に時間を稼いだら俺も逃げる」


 そう言ってオークに向かって走り出すジン。


 ジンの方を心配しつつも、アイネは子供達の方に向かって走り出す。




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