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k03-11 研究員と少女

 ――翌日。


 今日も何か見たい物があるとかで朝からマスターとは別行動。



 私達の方は、今日は兵器類の見学は一端お休み。

 私が見たかった結界学に関する展示や、アイネが気にしてた最新魔鉱家電の展示を見て回っている。


 行く先々で記念品や試供品なんかも貰えたり、ほんとお祭りみたいで楽しいわね。


 とは言え、さすが研究都市。

 魔鉱医療の技術展示で貰った救急処置セットの試供品なんて、一応家庭用って事だけど戦場でも使えそうなクオリティなんだけど……。

 これは良い物貰ったわ。



 午前中はそんな感じで過ごし、午後からは航空技術の展示を見に行く事に。


 ところが……どうやら道に迷ったらしい。

 やっぱり、さっき降りたモノレール駅の反対側だったかぁ。



 ウロウロしている間に人通りの殆ど無いエリアに入り込んでしまった。

 セキュリティエリアなのか、携行端末も通信圏外となっている。


「ごめん、やっぱり反対側だったみたいね」


「さっきの所逆だったんだねぇ。同じような建物ばっかりで分からなかったよ……」


 そんな話をしながら、パンフレットの地図をクルクル回しながら歩いていると――



 ドンッ


 曲がり角で人とぶつかってしまった。



「ご、ごめんなさい!」


 見ると、白衣を着た研究員と思われる女性が、小さな女の子の手を引いて目の前に立っていた。


 女の子は白いフードを深々と被っていたけれど、私とぶつかった拍子にそれがハラリと脱げその顔が見える。



 その姿を見て……思わず言葉を失う。


 どこか虚ろなその瞳は、一瞬にして目を奪われる程の美しい銀色。

 髪も同じく銀色で……


 ――そう、まるでマモノの力を使う時のアイネと同じ。



 驚いて立ち尽くしていると


「ごめんなさい」


 そう言って女性研究員が少女にフードを被せる。

 そしてそのまま足早に走り去ってしまう。



「――え?」


 その様子にまた驚く。

 白衣を着た女性は……セロシアさん?


 確かに一瞬目が合ったはずだけど、私とアイネには全く目もくれず、早々にその場を走り去ってしまった。



「シェンナ、大丈夫?」


 アイネに優しく肩を叩かれて我に返る。


「ねぇ、今のって……セロシアさんじゃなかった?」


「え? やっぱり? 私もそうかと思ったんだけど、何か様子が違うから気のせいかなと思った」


「それに、あの女の子……」


「女の子? よく見えなかったけど何かあったの? ……あれ?」



 そう言ってしゃがみ込むアイネ。


「これ……」


 何かを拾い上げる。


 見ると、この整然とした無機質な研究所だらけの場所には到底似つかわしくない可愛らしいウサギのキーホルダー。



「あの子が落としたのかな?」


 アイネの手からキーホルダーを受け取って、少し調べる。



「……これ、ただのキーホルダーじゃないわね」


 スライド式のつまみがあって、それを動かすと金属製の端子が現れる。


「……メモリースティック?」


「そうみたいね。何か急いでたみたいだし、もしかしたら大事な物かも」


「ねぇ、届けてあげようよ? まだそんなに遠くまで行ってないと思うし」



 ――昨晩さんざん小言を言われたマスターの顔が脳裏をよぎる。


『軽率な行動は慎むように!』か。


 ……とは言え、ただ落とし物を届けてあげるだけだし。

 それくらい問題無いわよね。



「そうね、後を追いましょ」


 アイネと一緒に、彼女達の後を追って走り出す。



 ―――



 確か、こっちの方に行ったはず……。


 人通りの無い路地を足早に進むけれど、2人の姿は一向に見えてこない。


 仕方ないので、ファントムの力をちょっとだけ借りてアイネに周辺の様子を探って貰う事に。



「うん……多分こっち!」


 さすがね。

 いつも頼りっぱなしにはできないとは言え、やっぱり頼りになるわ。


 アイネの後に続いて、細い路地を小走りで進む。


 どんどんと入り組んだ路地に入って行く。

 ……疑う訳じゃなけど、本当にこんな所通ったのかしら?


 その道筋は建物の間を次々に曲がって……まるで何かから逃げてるみたい。



「あ、いたいた!」


 前を走っていたアイネが声を上げる。


 前方をさっきの2人が足早に歩いているのが見えた。




「あの――」


 ――!


 手を上げて声を掛けようとした瞬間、突然アイネに腕を掴まれ物陰に引き寄せられる!



「な、なに?」


 突然の事に驚いてアイネを見ると、指を唇に当てて『静かに』のサイン。


 音を立てないように顔だけ出してそっと物陰から様子を伺う。



 見れば、2人はいつの間にか複数人の男に取り囲まれていた。


 若い警備員が3人と……白衣を着た初老の研究員が1人。



 何やら揉めてるように見えるけど……。


 ダメだ、ここからじゃ何を話してるか分からない。



「アイネ、何話してるか聞こえる?」


「……ううん、ダメ。ファンちゃん、足音とか気配は遠くからでも感じ取れるんだけど、会話とかの内容までは分からないんだよ」


「そうだったわね……」



 もう一度2人に視線を戻す。


 何かを訴えて激しく怒っている様子の女性、その傍らで不安そうに彼女の腕にしがみ付く少女。



 ――次の瞬間、黙って話を聞いていた研究員が女性に掴みかかり揉み合いになる!


 慌てて止める周りの警備員達。


 制止を振り切り、研究員は懐から何かを取り出す。


 ――銃だ!



「ど、どうしよう! 助けないとだよね!?」


 小声で、口早に私に問いかけるアイネ。


「待って! あれどう見てもバンブー・カラムの正規の警備員よ!? 展示場でよく見た装備だもの。だとしたら、追われてる方に問題があるって可能性も……」


「それでも、丸腰の相手に銃を突きつけるなんておかしいよ!」


「まぁ、確かにそれは同感ね。……しかたない、行くわよ! ただし、ファントムは無しね!」


 そう言って物陰から飛び出し、全力疾走で間合いを詰める。



 突然の事に驚き反応出来ずに居る警備員。


 ステップで懐に入り込むと、まず1人を回し蹴りでKO。


 思った通り、警備員といってもただの雇われの施設警備員ね。


 ハイドレンジアで相手にしたようなゴリゴリ武装の傭兵に比べれば軽い。

 これなら通常の格闘術だけでも十分!


 立て続けに、隣に居たもう1人のミゾオチに肘を入れる。


 崩れ落ちる2人を見て、慌てて腰の銃を抜こうとする最後の1人。

 こんな至近距離で銃に頼ろうとするなんて、ほぼ素人ね。


 もたついてる間に顎へハイキックをお見舞いする。



 ――よし!


 後は研究員の方だけど……



 振り返ると、死角から回り込んでいたアイネが研究員の眼前に飛び出す。

 そして――全体重を乗せた渾身の金的!!


 お……おぉ、無慈悲。


 体術が苦手なアイネに蹴り技の中でも比較的簡単な動作で威力は抜群ってことで教えたのは私だけど……

 教え方が良かったのか、完璧とも言えるクリーンヒット。


 研究員の体が一瞬浮き上がり、そのまま白目を向いて倒れ込む。

 ま、まさかファントムの威力乗っけてないわよね!?

 過剰防衛で訴えられなきゃいいけど……



「大丈夫ですか!?」


「え、え? あなたさっきの!?」


 困惑する白衣の女性。

 傍らの少女は不思議そうに私の顔を見ている。



「とりあえず、こっちに!」


 アイネの誘導で細い路地を走る。

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