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k03-09 機械の兵士

 中に入ると、広い会場は人でごった返していた。


 魔兵器の展示も中々の集客だったけれど、混み具合で言うとこっちの方が遥かに上ね。

 オートマタがそれだけ注目されてるってことね。



 逸れないように気を付けながら人の波に沿って会場を進む。


 そんな中、前を歩くアイネが急に声を上げる。



「わ、ご、ごめんなさい!」


 どうやら人とぶつかってしまったらしい。


 頭を下げて謝るけれど、その相手は……


「イラッシャイマセ ヨウコソ。 ワタシ ハ WA-1483 ト モウシマス。 オキャクサマ ナニカ オコマリデショウカ?」


 片言の合成音声で話すロボット。


 円柱形の胴体に、両手両足、そして頭部。

 二足歩行で佇むその姿は、人型と呼ぶならば確かに人型だけれども……。


 頭部は人間とは似ても似つかない円柱。

 両目にあしらえた丸いセンサーはカメラのレンズだろうか。

 微動だにせずアイネを見つめる。


 足の関節は人間とは逆の構造になっており、動くたびにモーターの音が響く。


 まぁ……戦闘用に限って言えば、人間用に開発された兵器がそのまま流用出来るって点が人型の最大の利点で、それさえ満たせれば敢えて人間に似せる必要も無いわけで……

 少なくともコレを"人間"と間違える人は居ないでしょうね。



「あ、ごめんなさい。私はアイネと言います。何も困っていません。今のところ、大丈夫です!」


 頭を下げて丁寧に受け答えするアイネ。


 その様子を見て微笑する周りの人達。




 その時――


「あら、2人とも来てくれたのね!」


 後ろから声を掛けられ振り向くと、スーツ姿で首からIDをぶら下げたセロシアさんの姿が!


「あ、お疲れ様です! セロシアさんここの展示の担当なんですか?」


「えぇ。人手不足で広報部まで駆り出されちゃって」


 そう言って困ったように笑う。



「大変ですねぇ。それにしても凄い人気!」


「QoKも近年はオートマタ関連に力入れてるの。今年は主力の魔兵器の展示と変わらない程の規模になってるわ。――そうだ、この後すぐ実演もあるの! 私が司会するから良かったら見ていって貰えないかしら! 後で感想聞かせて!」


「セロシアさんの司会ですか! 絶対見て行きます!」


 いつの間にか案内係のオートマタと会話を終えて戻って来たアイネが目を輝かせる。



「ち、ちなみに実演っていうのは?」


「オートマタ兵による全自動射撃の実演よ。ターゲットを指定さえすれば、後は自動で周囲の地形を解析して命中確率が一番高いポイントまで自走移動、その後照準調整、発砲までを全自動で行う様子を見て貰うの」


「す、凄いですね。全部自動……。将来、もしかしたら私達みたいな傭兵は要らなくなるかもしれないですね」


「そうね、もしそうなったらシェンナさんには悪いけれど商売敵って事になるわね」


「あはは、就職に困らないよう今からちゃんと勉強しておきます」


「ふふ。じゃ、準備があるから先に行ってるわね」



 再び案内係のオートマタに捕まりそうになるアイネを引っ張りつつ、人混みを掻き分けて実演の会場へ向かう。



 ―――――



「皆さん、ようこそお集まりいただきました」


 壇上に立つセロシアさんが落ち着いた様子でプレゼンを始める。

 その後ろでは数体のオートマタが待機している。


 さっきアイネが挨拶してた案内係のオートマタと全体としては同じような形だけれど、その腕には重火器が装備されている。

 重さに耐えるためか、足や腕のフレームも強化されているようでやや大型化されているようだ。


 魔兵器……まではさすがに使えないみたいね。



 微動だにしないオートマタの周りを歩きながら、流暢にその性能を説明するセロシアさん。

 一切詰まる事もなく、見事な司会っぷりだ。


「――これらの技術により、このWA-1800シリーズは高度な状況判断能力と、人間を遥かに上回る環境適応能力を両立しました。それにより、どのような過酷な環境下でも、汎用性に富んだ運用が可能となります」


 壇上の魔鉱パネルには野外で活躍するオートマタの映像が次々映し出される。



「では、実際に最新鋭オートマタの実力をご覧頂こうと思います。準備が整うまで少々お待ちください」


 そう言ってセロシアさんが壇上を離れると、後ろで待機していたオートマタ達が音を立てて動き出す。


 3体揃って壇上の隅の方へ移動していく。


 反対の舞台袖からスタッフの人達が現れ、標的と思われる木箱や、障害物代わりの鉄板等が壇上へと運ばれてくる。



『おい、こんな目の前で、危険じゃないのかね!?』


 不意に会場から声が上がる。


「ご安心ください。オートマタの射撃精度は生身の人間の比ではありません。我々も絶対の自信を持っていますので、あえてこうして目の前でご覧に頂こうという事です」


 にわかに会場がざわつく。



「し、シェンナ。大丈夫かな?」


 不安そうに私の顔を覗き込むアイネ。


「よっぽどの自信があるみたいだけど……まぁ、大丈夫でしょ。アレ見て」


 オートマタが持つライフルを指さす。


「あの特殊な形状のマガジン。あれは暴動鎮圧用の非殺傷弾よ。木製の的くらいなら貫通するけど、もし人に当たっても致命傷になる事は無いわ」


「そ、そっか。それなら安心だね」


 ん~、確かにそうなんだけど……何だか嫌な予感しかしないんわね……




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