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k03-08 オートマタ

 学生の私達にも分かりやすいように、慣れた様子で次々と商品の説明をしてくれるお姉さん。


「――こちらが只今ご説明させて頂いた、最新のスナイパーライフル“フェイルノート"シリーズです。独自に開発された光学スコープと特殊なノズル構造、それと専用の7.5×60mmオートリポイント弾の組み合わせのおかげで、スコープに対象を捉えさえすればどんな悪天候の中でも500m先の目標に対して、何と! 97パーセント以上の命中率を誇ります」


「え、それって弾道を自動で補正してくれるって事ですか?」


「えぇ。弾丸に埋め込まれている風の魔鉱石の力で、ターゲットと着弾予測地点のズレをある程度自動で補正するんです」


「おぉ、よかったなアイネ。どんな下手くそでも当てられる銃だって! これならお前でも当たるんじゃないか?」


「ち、ちょっと、マスター!」


「ふふ、良かったら試射してみませんか? 会場の都合で200m程しか距離は取れませんが、充分に性能は体感して貰えると思いますよ」


 そう言うお姉さんに連れられて、少し戸惑いながらもアイネが射撃場に入る。


 係員の説明を聞き、大きなスナイパーライフルを伏射の姿勢で構えるアイネ。


 あ、ちょっと!

 パンツが見えそうになって少しハラハラする。



 軍事関係者と思われる筋骨隆々な男性客ばかりの会場で若い女子自体珍しいのに、制服で試射なんかしてるもんだからギャラリーも集まって来た。


 アイネが構えるライフルからはケーブルが1本伸びていて、付近のモニターに繋がっている。

 どうやら特殊な機材で、スコープで視えている景色がそのままモニターに映されているようだ。



 係員の誘導に従ってゆっくりと照準を合わせる。

 フラフラとしながらも、標的をスコープの中心に捉えた。

 そして――発砲!



 狙いはまずまず。

 射撃後もスコープは完全に的を捉えていた。



 けれど――


 発砲音とほぼ同時に、的の遥か後方の分厚い壁が白煙を立てて砕け散る。



 は、外した!?


「あ、あれ?」

 首を傾げながらライフルから顔を離すアイネ。



 焦り出す係員のお兄さんと、スタッフの人達。


 ニコニコと見守っていたお姉さんの笑顔も凍りつく。



 ざわつくギャラリー。




 皆がモニターで見守る中、確かにスコープは的を捉えていた。


 なのに、500mはおろか、200m先の的ですら大きく外れた訳だからそりゃ……


「ご、ごめんなさい! 私魔兵器の取り扱い物凄く下手で!」


 場の空気を察して、慌ててお姉さんに謝るアイネ。


「い、いえ、き、緊張しちゃったかな!? こんな場面だし」


 そう言って笑って誤魔化そうとするお姉さん。


 いやいや、本物の戦場なんてここの比じゃないほどの緊張感でしょ。



『調整中』の看板が掲げられ、即座に閉鎖される試射場。

 何だか偉いっぽい人まで出てきて重苦しい話し合いが始まっている。


 気まずい雰囲気の中、私達は逃げるように会場を後にする。



 ―――



 会場を出てすぐ。


「あんた……どうやったら自動で弾道補正してくれるライフルを外すのよ」


「いや、まさかあれを外すとはな。後でセロシアさんに顔向け出来ねぇぞ」


 私とマスターから代わる代わる小言を言われるアイネ。



「そ、そんな事言われても……」



『……ふむ。どうやら我のマナと兵器のマナが干渉したみたいだな』


 突然声が聞こえる。


 ――ファントムの声だ。


 長くアイネと一緒にいた影響か、実は最近になって私にまでファントムの声が聞こえるようになった。


「え? そんな事あるの?」


 慌てて首からかけたペンダントに聞き返すアイネ。


『我にも分からぬが、影響が無いとは言い切れんだろうな』


「なんだー。じゃあ私が魔兵器の取り扱い苦手なのって仕方ないんだね」


「いや、お前魔兵器の扱い、元々壊滅的にダメだっただろ!」


 そんな話しをしながら会場を後にする。




 ―――――



 その後、小さな展示をいくつか見終わって、少し遅めの昼食を取る事に。


 ファストフードをつまみながら、午後からの予定を話し合う。



「今日中にもう1つくらいはQoK社の展示を見ておきたいわね」


「あ~、悪いけど、俺は別行動にしてくんねぇか? 俺は俺で見ておきたい展示があってな」


「あら、珍しいわね。あんたがそんなに積極的なんて。何の展示よ?」


「ん? まぁいいじゃねぇか。個人的な趣味も兼ねてだ。夕方ホテルのロビー集合でいいよな?」


「まぁ、私達は構わないけど。迷子にならないでよね?」


「当たり前だろ。お前らの方こそ、くれぐれも目立つような真似すんじゃねぇぞ!」


 そう言ってアイネの顔を覗き込む。



 そんな訳で、午後からはマスターと別行動となった。



 ―――



 私達がやってきたのは、QoK社の"オートマタ"に関する展示。


 午前中に見た魔兵器の展示場と負けず劣らずに大きな展示場。

 こんな規模の展示をいくつも同時開催できるなんて、さすがQoKね……。



「ねぇ、シェンナ! オートマタって人型ロボットだよね! 凄いなぁ、私初めて見るかも!」


 目を輝かせて興奮するアイネ。


「人型ロボット……まぁ、そうと言えばそうなんだけど」


 機械式自動人形(オートマタ)

 遠隔操作などの外部入力に頼らず、自身で状況を判断し与えられた命令を遂行する人型ロボット。


 これまでも産業や軍事、各方面で人型ロボットの研究は常に行われてきたけれど……オートマタ技術で肝となるのは"自分で考えて行動を決める"という所だ。


 この概念を最初に提案した人はよっぽどぶっ飛んだ人物だったんでしょうね。

 心どころか脳すら持たない機械に意志を持たせようなんて……。


 長年バカげた妄想話だと思われてたけれど、魔鉱技術の発展と共にここ数年で急成長した分野であり、いくつかの分野では既に実用化直前まで来ているという話だ。



 医療や災害救助など様々な活躍が期待されてるけれど……QoKの展示と言うことは、軍事方面と考えて間違いないでしょうね。


 軍事方面で技術が確立できれば、郊外でのマモノ退治や、結界に代わる防衛機構などこれまでの常識を覆すような戦力になるって言われてるけど……

 意思を持ち、それでも命令に従いただひたすらにマモノを殺して廻る機械人形か。


 はたまた、もし戦争に投入となれば、人の形をした人形が同士が人間のために殺し合うような戦場の実現。


 何にしたってゾッとしないわね。

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