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k03-06 研究都市の夕食

「では、最後に。明日からのメッセにおいてお願いなのですが……」


 そう言って端末を操作するセロシアさん。


 私達の端末が着信を告げ、記事が表示される。


 QoN社の今年の展示カタログだ。


「弊社の催しの中から、最低3点の展示についてご覧になって頂き、ご感想を頂きたいのです。後日弊社の情報誌に記事として掲載させて頂こうと思いますので」


「えぇ! 記事にですか!?」


 びっくりしてカタログを確認するするアイネ。


「ご心配なく。感じた事をそのまま書いていただいて結構です」



 カタログにはQoKやその子会社が主催する催しがいくつも載っている。


 ・近未来を担うオートマタ技術の兵器転用

 ・来年発売予定の新型魔兵器(試射会あり)

 ・都市防衛用の新型機構とその運用について

 などなど。


 どれも中々見応えのありそうな内容ね。



「どれも楽しそうな催しですね!」


「ふふ、そう言って頂けると頑張って用意したスタッフたちも喜ぶと思います」



 その後、お勧めの展示等を教えて貰った後、明日の夜にまた会う約束をして、セロシアさんは部屋を後にした。



「――さて、と! そんじゃ今日はやる事も無いし、飯でも食って早々に寝るか」


「はい! 研究都市のご飯ってどんなですかね!」


 目を輝かせるアイネ。


「あ。あんまり期待しない方がいいみたいよ。雑誌にも書いてあったし、セロシアさんも言ってたでしょ? この辺り、見た通り荒野だから新鮮な魚介とか野菜は手に入らないんだって。輸送と保存に困らない食事がメインだから、多分食べ物はウィステリアの方が美味しいわよ」


「えぇ~……」


「そもそも、湖の魚に、山岳地帯で取れる野菜に、ウィステリアの食文化は世界有数って言われてるからな」


「楽しみにしてたのにぃ。何でこんな所に研究所立てたんだろ!?」


「ホントになぁ……」


 少しがっかりしつつ、3人揃ってホテルを出る。



 少し歩くと、大型のスーパーや日用品を扱う雑貨店が何店舗か並んだエリアに出た。


 街の人の生活の場といった感じだけれど、人は疎らだ。



「あんまり、人居ないですね」


「それが……凄いわよ。なんでもバンブー・カラムの一般家庭では、必要な物を端末で注文すると、ロボットが玄関先まで届けてくれるんですって。……あ、ほらあそこ!」


 道路を見ると、円柱に車輪がついたような形の、腰の高さ程の大きさの小型マシンが走り去っていく。

 あの中に注文した品物が入っていて、玄関先まで自動で届けてくれるそうだから驚きだ。


「へぇ、便利そうなのかもしれないけど……何だかお買い物する楽しさ半減だね」


「まぁ、忙しい人にはこっちの方がいいんじゃない?」


「いいなぁ。うちのテイルも導入してくんねぇかなぁ。ホームからイチイチ購買行くの面倒で」


「あんな目立つもん実戦演習エリアの中走ってたら一発でマモノに襲われるわよ」



 そんな話をしながら、セロシアさんに教えて貰ったフードコートへ到着。

 ここのハンバーガーが、この街では「比較的マシ」と皮肉交じりにセロシアさんが教えてくれた。


 ―――


 中に入ると……注文を受けるカウンターも無ければ店員さんの姿も無い。

 ど、どうやって注文するのこれ!?


 おそらく私達と同じと思われる外部からの来訪者が同じように戸惑っている。

 入り口の横に、そんな人達向けの案内映像が流れているのを見つけた。


 ①好きな席につく

 ②携行端末から、好みのショップを選択、メニューを決定

 ③端末のリーダーにIDカードをかざして決済

 ④搬送ロボがお席まで商品をお届けします


 3人揃って口をポカンと開けて案内を見る。


「はぁ~~、凄いですねぇ」

「なんだか……ここまでシステム化を徹底されてると恐くなってくるな」

「技術の進歩に適応できなくなってきたらいよいよ歳よ」


 そんな会話をしながら、空いていた4人掛けテーブルに腰掛ける。


 携行端末を取り出し、今いるフードコートのページを表示。


 画面には、座ったテーブルの番号と同じ番号が映し出されている。

 あ、これでどの席にいるのか判別してるのね。


 次に、画面上でお店を選択……『トラスト・バーガー』

 お店のページが立ち上がる。


 画面の中で可愛い制服の女の子がお辞儀して迎えてくれる。

 メニューと一緒に、お店の宣伝が表示される。


『当店のハンバーガーは合成肉、人工野菜一切不使用! 自然本来のおいしさをお楽しみください!』


 ……これがうたい文句って。

 ……ここの人達普段何食べてんのよ。

 あんまり詳しく見ると明日からの食事に支障が出そうなので、あまり深く考えないようにしてさっさとメニューを選ぶ。


 3人共注文を終え、周りをキョロキョロしながら待つ。


 程なくして、テーブルに埋め込まれたライトが淡く点滅し、小型の四角い自動搬送ロボットが席に到着。

 指示されるがままIDカードをかざすと、ロボットの箱が開く。

 中にある製品を取り出すと、「ごゆっくりお過ごしください」と電子音声で挨拶をするとロボットは帰っていった。


 あっけに取られる私達。


 机の上には、おそらくハンバーガーやサイドメニューが入っているであろう箱が並ぶ。


 けれども、誰も手を出そうとしない。


 3人揃って再びキョロキョロと周りを見渡す……



 丁度隣の席にも品物が届き、お客さんが慣れた様子で受け取る。

 そして、箱を開けて中身のハンバーガーにかぶり着く。



「よ、よし、これはただの箱だな」

「そうみたいですね。普通に開けていいみたいです」

「もう、ここまで常識が違い過ぎると何が何だか……挙動不審になるわね!」



 私達もそれぞれに箱を開けて中のハンバーガーにかぶりつく。


 味は……うん、普通。

 飛び切り美味しいって訳でもないけど、悪くもない。


 食べた瞬間に体力が全回復する訳でもなく、驚くような能力が開花する訳でもなく、研究都市のハンバーガーは……至って普通のハンバーガーだった。


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