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k02.5-05 シェンニャたん☆【挿絵あり】

「な、なんだとぉぉぉーー!!」


 屋敷中に響き渡る叫び声。


 久々に帰った実家にて。

 事の経緯を両親に軽く話したところ、ノーブル家当主グレン・ノーブル・フェイオニス、つまりお父様が天を仰いで絶叫した。



「おい、じいや! 我がノーブル家の全情報網を活用してすぐにその青年の身辺調査だ! 過去の犯罪歴から家族構成まで洗いざらい調べるのだ!! もしも私の可愛いアイネちゃんに手出ししようと企てる不届き者ならば、即刻私が叩き切ってやろうぞ!」


 そう言って壁に掛けてあった長剣を手に取る。


「あなた、落ち着いて! 何て物騒な事を言うの……」


 慌てて止めるお母様。



「しかしだな、スカーレット……」


「――そんな手荒な事をしなくても、いざとなれば毒殺で充分……」


 そう言って毒の仕込まれた短剣を取り出す。



 それぞれに武器を構えて、狂人のような笑みを浮かべる2人。


 そんな光景を見て当人のアイネは口を開けたまま固まっている。



「ちょっと! 2人共辞めなさい!!」


 2人から武器を取り上げる。


 心配してくれるのは嬉しいけど、この人達アイネの事となると見境が無くなるんだから……。



「……まぁ、冗談は置いておいて、アイネちゃんがダンスパーティーかぁ」


 そう言うと、いつもの笑顔に戻り、嬉しそうにアイネを見つめるお母様。

 いや、冗談に聞こえなかったんだけど……。


「あぁ。アイネちゃんももう立派なレディだ。まぁアイネちゃん程のお淑やかな美人さんなら、男が放っておかないのも無理はないが」


 アイネばっかりべた褒めされると、実の娘として立場が無いんですけど……。



「それじゃ、時間も無いでしょうしさっそくドレス決めましょう! アイネちゃんの髪色ならやっぱり青系が良いわよね~」


 そう言うとお手伝いさん達に指示を出すお母様。


「そうだな。本当は新調したい所だが、今からではさすがに間に合わんしなぁ……」


 そう言って物凄く残念そうに顎をさするお父様。



 幸いにも私とアイネ、背格好が殆ど一緒だから、私のドレスでもそのまま着られるはず。



 準備が整うと、お手伝いさんが3人がかりでテキパキとアイネにドレスを着せる。


 数分後……


 肩の空いたちょっと大人っぽい青いドレスに身を包むアイネ。



「サイズはいかがですか? どこか不都合はございませんか?」


「いえ……ぴったりです! 動きやすいですし。 ……ただ」


「ただ?」


「ん~、胸の辺りだけ少し苦しいかもです……。少し緩めて頂けますか」


 そう言って胸の周りを確認するアイネ。



「あ……」

「い、一応精一杯緩めてはあるのですが」

「コ、コホン」


 その場に居た全員が、それとなく私から視線を外す。



「な、何よ!?」




 ―――




 そんなこんなで迎えた――学園祭当日。


 メインステージでは開会式が盛大に行われ、いよいよ3日間に渡るビッグイベントの幕が切って落とされた!



 私達の屋台もどうにか昨日のうちに組上り、朝から皆で客引きに精を出す。



 本当にお客さんが来てくれるのか、正直な所半信半疑だった。


 だって、いくら可愛くトッピングするとは言え、チョコバナナ1本400コール。

 原料として使ってるのは普通の安いバナナ。

 原価は1本50コールにも満たないのに、それを400コールって……


 けれど、そんな私の心配を余所に、開店して暫くすると徐々に客足が増え出した。


 最初の頃は、どうもマスターに顔を売りに来たファミリアの編入希望者が殆どだったみたい。


 けれども、そこから徐々に噂が広まったのか、何か可愛い制服で接客している店があると噂になり出したらしい。

 確かに、こんな恰好をして接客するなんて斬新と言えば斬新ね。


 マスター曰く、こういうのを「コスプレ」と言うらしい。

 ウィステリアでは聞いた事の無い文化だけれど、もしかしたら流行るかもしれないわね。


 始めはお客さんの殆どが男子生徒だったけれど、途中から女子生徒や初等グレードの子供達も増えてきた。


 そんな最中、

「あの! 一緒に写真撮らせて貰って良いですか!?」

 というとある女子生徒のリクエストに答えて記念撮影したのがきっかけで、皆私達と一緒に写真撮影をしていく流れに。


 そのうち、"買ってくれたお客さんは私達と記念撮影のサービスつき"というという噂が広まったらしい。


 そこに目を付けたマスターが「1本購入につき1人と撮影」とか言い出したもんだから、3本まとめ買いしていく猛者まで現れ出した。


 言っちゃ何だけど、チョコかけただけのバナナに1,200コールよ!?


 何だかだんだんと狂気じみた事になってきたわね!?



 ………




 結局、なんだかんだとお昼前までお客さんが絶えない盛況ぶりが続いた。


 ここで、何やらミス・ウィステリアテイルコンテストで選ばれたとかなんとかで呼び出されて、私は催事に行かなきゃいけない事に。


 そう言えば毎年高等グレードの女子生徒を対象にやってたわね。


 客足も落ち着いてきたことだし、皆に任せて催事へ向かう。



 実行委員の生徒に案内されるまま、メイン会場へ。



「グレード10クラス! 優勝されたシェンナ・ノーブル・フェイオニスさんです、どうぞ!」


 壇上から呼ばれ、訳も分からないまま舞台に上がる。



 その瞬間――


 会場から湧き上がる歓声!!


「うぉーー! なんだあの衣装! 耳!? めっちゃ可愛いんだけど!」

「あ! そう言えばジン・ファミリアの屋台が何か凄いって噂なってた」

「えーー! あれ欲しい! どこで売ってるの!?」


 あ、出店の制服のまま来たの忘れてた。



「シェンナさん。おめでとうございます。今のお気持ちを一言頂けますか」


 司会者が私にマイクを向けてくる。


「あ、え? こ、このような素敵な賞を頂き光栄です。私に投票して下さった皆様、ありがとうございます」


 良く分からないけど、とりあえず当たり障りのない挨拶でかわす。



「ちなみに、素敵なお召し物ですが、そちらは?」


「あ、これは……ファミリアで出店をしていまして――」



 ――そこまで言って……何故か急にマスター・カルーナの教えが脳裏に蘇る。


『シェンナ、何であれ持ってる武器は使わなきゃ損よ。女の武器だってそう』


 ……祭りのテンションだろうか。

 はたまた朝から忙しすぎておかしくなってたのか。


「――ジン・ファミリア主催チョコバナナ屋 "チョコバニャニャ"! E-8ブロックで営業中です! みんな……よろしくニャン!」


 我ながら何を血迷ったか、エーリエに聞いたまねきねこのポーズをキメて出店のPRをしてみる。



 一瞬にして静まりかえる会場……あ、コレもしかしてやっちゃった?



 そう思った瞬間――


「「「うぉぉぉぉ!! シェンニャたん最高ーー!!」」」


 大地を揺るがさんばかりの野太い声援が会場から沸き起こった。



 ………



 ミスコンのトロフィーを手に、早々に出店に戻ると……



「なに!? どういう事態!?」


 何だか出店の前に長蛇の列が出来てるんですけど!!



「あ、あ! マスター!! シェンナ帰ってきましたよ!」


「おぉ! やっと来たか! 早く、早く来いおまえ!」


「ひぇぇ~」


 接客でバタつくアイネとマスター。


 エーリエが目を回しながらひたすらチョコバナナを作り続けている。



 慌てて戻りサポートに入る。


「ど、どうなってんのよ!?」


「こっちが聞きてぇよ! お前表彰式で何した? あの列全部ずらっと"シェンニャたん"待ちの列だぞ!」


 そう言って指さされた先には、最後尾が見えない程の列が。

 皆カメラを手に鼻息荒くこっちを凝視している。


「ち、ちょっと! 何か怖いんですけど!?」


「おい、バナナ! 誰かバナナ買ってこい! ウィステリア中の全バナナだ!」



 そんな訳で、そこから暫くはてんやわんや。


 どさくさに紛れて私のお尻を触ろうとしたチャラい男子生徒を投げ飛ばしたところ、何だか知らないけど"5本まとめ買いするとシェンニャたんに投げ飛ばして貰えるオプション"とかいう訳の分からない噂まで広がり、まさに地獄のような忙しさだった……。


挿絵(By みてみん)

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