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k02.5-03 大舞踏会

 学園祭をいよいよ明後日に控え、ウィステリアテイルは慌ただしさの頂点を迎える。


 全学部全グレード合わせて優に30,000人を超える生徒達が一堂に会するビッグイベント。

 開催の数日前からは、殆どの授業が打ち切られ生徒教員一丸となって祭りの準備に取り掛かる。


 というのも、学園祭は一般の来場者も参加可能となっており、保護者やその他関係者も多く来場する。

 単に学生たちのイベントというだけではなく、保護者や企業、政府関係者など外部に生徒達の……延いてはテイルの功績をアピールする場でもあるからだ。



 高等グレードともなると遊んでばかりは居られない。


 資金の補填とファミリアのPRを兼ねた出店の運営は勿論、ホームには自分達の活躍を報告するためのレポートや論文等を展示し、後輩達や視察に来た企業のリクルータ―達に活躍をアピールしなければならない。

 限られたメンバーの中で役割を決め効率よく進めなければ成功は無しえないのである。



 ……が、ジン・ファミリアの場合。

 そもそもホームの場所は非公開(相変わらず地図に載ってないまま)

 しかも実践演習エリアの奥地という事で来客はまず無い。


 そもそも、生徒を増やすつもりもなければ企業に媚をうるつもりもない。

 そう言う訳で、ファミリアの人員総出で出店の準備にかかるのだった。

 全ては資金調達の為に!



 ―――



「アイネ、そこもっと左。あ、エーリエ! その線超えて機材置いちゃダメだって!」


 シェンナがテキパキと指示を出しながら、出店用の屋台の組み立てを進める。



「おーい、そこ、横気を付けろよぉ。ぶつかるぞー。もしゃもしゃ」


 ジンも何かを食べながら気怠そうに現場監督をする。


「ちょっと!? あんた何サンプル用のバナナ食べてんのよ!!」

「ぐぅ!」


 シェンナに思いっきり睨まれて、思わずバナナを喉に詰まらせるジン。



「まったく! いい!? 働かざる者食うべからず! サボってるとお昼のお弁当抜きだからね!」


「は、はい……」


 そう言って食べ終わったバナナの皮をそっとゴミ箱に捨てる。


 面倒臭がりのマスターにイベントの取り仕切りなど出来る訳もなく、シェンナに完全に主導権を握られたのだった。



「シェンナ気合入っとるなぁ~」


「昔からこういうのはテキパキ済ませないと気が済まないタイプだから」


 エーリエとアイネがコソコソと話しながら屋台の組み立てを進める。



 ちなみに、シェンナの良く無い所は……みんなが自分と同じくらい器用で出来る子だと思い込んでいる事。

 不器用なこの2人に屋台の組み立てなんてやらせたら、そこら中のネジがゆるゆるなのは言うまでもなかった。



「なぁ、おい。この食品衛生管理規定っての読んだらどうすんだっけ?」


 ジンが分厚い資料をパラパラと読みながら、シェンナに差し出す。


「はぁ!? まだ提出して無かったの! 提出期限今日の午前中までよ! ココにハンコ押して教務課まで!! はい、ダッシュ!」

「まじかぁ~」


 項垂れながらも小走りで教務課へ向かって行くジン。



「なぁシェンナー! ネジめっちゃ余ったんやけどこれでええんかな?」

「何か土台ガタガタ言うんだけど」


 そう言って見るからにひしゃげている屋台の土台をガタガタとゆするアイネ。


「ちょっとぉ!! 良い訳ないでしょ!? ちゃんと説明書通りにやった!? 今行くから待ってて!」


 チョコバナナの機材を梱包から取り出していたのを中断し、2人の元へ向かう。



「あ、あの……」


「今度は何よ!?」


「ひぃ!」


 立て続けに声を掛けられアイネがやや機嫌悪く振りかえると、そこには見知らぬ男子生徒が引き攣った顔で立っていた。


「あ、ご、ごめんなさい。ちょっと立て込んでたもので」


 咄嗟に平静を装い、年上と思われる生徒に対応するシェンナ。



「と、突然すいません。お忙しそうなので手短に用件だけ……。――あ、あの、もしよかったら……本祭の夜のダンスパーティー、僕と一緒に踊って――」


「あー、ごめんなさい! もう予定が決まってて。せっかくのお誘い嬉しいんですけど、またの機会に!」


 話を聞き終わるよりも先に、両手を顔の前で合わせて頭を下げるシェンナ。


「で、ですよねぇ……! さすがノーブル家のご令嬢……失礼しましたぁ」


 苦笑いをして、すごすごと撤退していく男子生徒。



「はぇ~、さすが才色兼備の優等生さん。今日でもう何人目や?」


「えっと、今ので14連敗中」


「あぁ……シェンナお嬢様のハートを射止める王子様は果たして現れるのでしょうか。いかがでしょうかねアイネさん?」


「まだ時間はあります。後に控える選手達に期待したいところですね」



「はいそこ! 変な事言ってないで! 余ったネジどこよ!?」


 シェンナに首根っこを掴まれそうになって、そそくさと逃げだすアイネとエーリエ。



 ……屋台の設営を始めてから3時間程だが、その間立ち代わり入れ替わり、シェンナは数分置きに男子生徒から声を掛けられっぱなしだ。



 ――学園祭2日目。本祭の夜に行われる、大舞踏会。


 テイル最大規模の施設である中央総合大ホールにて、立食形式の大パーティーが開かれその中でダンス大会が執り行われるのだ。

 あくまでも自由参加だが、学園祭一の目玉イベントという事もあり、毎年多くの生徒が参加する。



 ダンス大会では、男子生徒が女子生徒に声を掛けてダンスに誘うのがルール。


 元々は、女子生徒がフロアで待機し、男子生徒が意中の女子に声をかけ、OKが貰えたらダンスを踊る……という物だが、最近は事前に相手を決めておくのが暗黙の了解となっている。



 全グレード参加OKなので、シェンナも中等グレードの頃から渋々と参加していた。


 今までは相手はカーティスで決まり切っていたためこうやって声を掛けられることもなかったが……カーティスと仲違いした事が噂として一気に広がったため、今年のミスグレード10最有力候補の呼び声高い彼女を口説き落とそうと、男子生徒は躍起な訳である。

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