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k02-37 世界が隠し続ける真実

 「……C.S.Cは、今回の事件にどこまで関与しているのでしょうか」


 黙って話を聞いていたアザレアが不安そうに質問する。



「……どうだかな。犯行グループメンバーの中にC.S.Cの社員も多くいたらしい。会社自体が加害者なのか被害者なのか……と言われると難しい所だろうな」



 C.S.Cの話が出た所で、私も疑問に思っていた事を聞いてみる。


「C.S.Cを疑うわけじゃないけれど……これだけの事件を素人だけで成し遂げられるなんて到底思えない。裏に何か大きな組織の力があったとしか……」



「その通り。今回の件、裏で糸を引いてる組織があるはずだ。だが、それはC.S.Cじゃない」



「……エバー・キプロ共益協会」


 アイネが呟く。



 "エバージェリー・キプロポリス共益協会"


 先の大戦後に、両世界の繁栄・共栄を目的に二世界合同で立ち上げられた異世界混合組織。


 技術や資源の提携、情報共有などを主な任務とし、両世界の各地に支部を置く。



 絶大な影響力を持つ巨大組織で、今やその全貌を把握出来ている他勢力は無いと言われている。


 両世界を自由に行き来できる唯一の組織であり……ジュエルシステムの統括管理者。



「何故そう思う?」


 マスターがアイネに問いかける。



「"スプルース"と呼ばれるエバージェリー人の戦士と戦いました」


 キプロポリスでエバージェリー人を見かける事は滅多にない。


 もし見かけたら、協会の関係者と思ってまず間違いない……。



「……"スプルース・コーラム・バイン"。"四聖"と呼ばれる、協会の守護者の1人。言わば"四天王"の1人だ」


「し、四天王!? つまり、超巨大組織の実働部隊の最低でもNo.4って訳!? よ、よく勝てたわね」


 アイネとまともにやり合えるくらいなんだから只者じゃないと思ってたけど……話を聞いて今更目まいがしてくる。



「直接手合わせしてないから何とも言えんが、まぁ実際大したもんだと思うぜ。何にせよ、アイネの言う通り水面下で"波間の民"に協力してたのは共益協会で間違いない。それを調べるために俺とグラードさんは色々探り周ってたんだけどな」



「ちょ、ちょっと待ってよ! 両世界に影響力がある世界最大級の組織がテロリストに加担だなんて! これって世界的な大問題なんじゃないの!?」


「そうだな。()()()()()()()大問題だ」


 そう言ってヴィントさんに目線を送るマスター。



「――はい、先ほど旦那様よりご連絡がありました。プラント地下で捕縛した黒装束の兵士達は、移送中に全員が揃って服毒自殺を敢行したそうです」


「え……」


「それと……皆さまが戦ったと仰るその戦士に至っては、支援部隊が現場に到着した時には既に姿が無かったそうです」


「そ、そんな!? まだしばらくは痺れて動けなかったはずです!」


 アイネが椅子から立ち上がる。



「まぁ。どこまでが真実で、どこからが協会の偽装工作か……。いずれにしろ、それくらい軽くやってのけるだけの力がある組織って訳だ」


 そう言って、冷めてしまった紅茶を飲み干すマスター。



「じゃ、最後に。おそらくお前達が一番聞きたいだろう……"サーバーの中の少女の話"だ」


 全員の顔を見渡すマスター。



「あれを説明するにはまず……そうだな、シェンナ。エバージェリーの"魔法"と、"魔兵器"、それから"輝石魔法"の関係性について説明できるか?」


「え、何よ突然……。大雑把に言うと、まず今上がった物の全ての大元になってるのがエバージェリーの"魔法"よ。それをキプロポリス人でも使えるようにしたのが"輝石魔法"。で、誰でも訓練すれば使えるように"輝石魔法"を機械化したのが"魔兵器"。そんな所かしら」


「さすがだな優等生。アイネとアザレアお嬢様も分かるか?」



 頷くアイネ。


「輝石魔法というのは初めて聞きましたが、シェンナが使っていたのがそれですか?」


 アザレアが私に向かって問いかける。


「えぇ、そうよ。"魔法"のエネルギー源になる"マナ"を体内に貯めておけないキプロポリス人が、魔鉱石からマナを貰って使う魔法……と思っておけば間違いないわ」



「そうだな。だが、"輝石魔法"を扱うには一種の才能が要る。練習したからと言ってだれでも使えるようになる訳じゃない。そこで開発されたのが"魔兵器"だ。じゃぁシェンナ、もう1つ。"魔兵器"があれば、どうして才能が無い奴でも魔法みたいな力が使えるんだ?」


「"輝石魔法"の発動に必要な、魔鉱石からマナを取り出し、錬成して、打ち出す、っていうプロセスを兵器……つまり機械が自動で代行してくれるからよ」


「教科書通りの回答ありがとう。じゃ、最後の質問だ。 ……実際に"輝石魔法"を使うようになってみて、その説明はどう思う」


 そう言って、真剣な眼差しを私に向けるマスター。


 その目を真っすぐ見据えて答える。



「……大嘘ね。心や感情を持たない機械にそんな事が出来るはずが無いわ」


「――そう。人々が魔兵器を1発撃つ度に、その魔法発動のプロセスを、システムの中に捕えた"人間"が肩代わりして実行し兵器に渡す……それがディシプリン・システムの正体だ」



 "魔法"というのは、マナと意思の疎通を図り、その力を借りて自然界の力に変化を起こす物。


 その意思疎通の補助に、魔法陣を使ったり、詠唱をしたりする。



「つまり、"魔兵器"はただの中継器に過ぎない……ってこと?」


「そうだ。それと使用可否の管理だな」


「代行って……毎日何千、何万って使われている魔兵器の1発1発全部を1人でですか……?」


「……1人とは言ってないだろ?」



 ……!


 サーバーが置かれていた部屋を思い出す。


 私達が見た、少女が入っていた装置の背後……そこには、同じような装置がまだ何十個も置かれていた……。


 アイネとアザレアも思い出したのか、手で口を覆って目を見開いている。



「……長くなったが、以上がキプロポリスが隠し続けている真実だ」



 何も言えずにただ茫然としている私達を見渡し、マスターが話を締めくくる。

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