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k01-06 青空教室・2

「ちなみに……ひとつ質問しても良いですか?」


 遠慮がちに手を上げるアイネ


「おう? 何でもどうぞ」


「前から思ってたんですけれど……中継機を世界中に建てまくればエリアなんて気にしなくて良くなるのに、どうしてやらないんですか? 費用的な問題ですかね……」


「費用面やメンテナンスの問題もあるが、そもそも国際条約で決められてんだよ。システムの常時カバーエリアを拡張して良いのは街中全域までって」


「へー、そうなんですね。……何でですか?」


「昔の戦争……“ニ世界大戦”の後に出来た条約だな。大戦前はキプロポリス中で魔兵器を使った内戦をやってて、それこそ人類が滅びるんじゃねぇかってくらいにまでいったんだ。だが、大戦後この条約が出来て魔兵器を使っての他国へ攻め込む事は難しくなった。自国から延々と中継器を繋げば出来ない事も無いが、まぁ現実的じゃないわな。そのお陰で内戦も下火になった訳だ」


「なるほど、勉強になりました」


「……ちなみに、このへんも中等グレードの魔兵器歴史学で習うはずなんだが……」


 そう言って顔をしかめるジン。


「え、え? あははは、そ、そう言えば、これ知ってます? ディシプリンというのは"共通理解"とか"規律"ていう意味なんですよ。システムを介する事で味方の魔兵器の状況確認の把握や、敵味方識別が可能になるからですね」


 得意げに人差し指を立てて説明するアイネ。


「知っとるわ! これでも一応教師だ」


 鋭くツッコむジン。


「さすがマスターです!」


 そう言ってアイネが笑顔で手を叩く。


 悪気はなく天然なんだろう。

 にっこりと笑うアイネに呆れてため息をつくジン。

 そして、なんの気無しにボソリと呟く。


 

「それかから、"懲戒"、"懲罰"も。だな」


「え、何か言いました?」


「いや、何でもない! そこまで知ってれば十分だ!」


 そう言ってアイネの荷物から小銃型の魔兵器を取り出す。



「じゃ、さっそく中継器立ち上げて1発撃ってみろ。この辺なら周囲に何も無いし、あのデカい湖に向けて撃てば誰の迷惑にもならんだろ」


「あ、それでわざわざこんな街の外まで来たんですね」


「まぁな。あんな狭ッ苦しい室内でやるよりもよっぽど景気いいだろ。ここまで来るのも丁度良い運動になったし」


「私の方は丁度良い運動どころじゃないですよ! 明日絶対筋肉痛です!」


 文句を言いながらも、荷物の中から中継器を取り出し平らな地面にセットするアイネ。


 金属製の蓋を回して開けると、中は透明な液体で満たされている。


「確かこの液体の中に中継機の電源になる魔鉱石を入れるんですよね?」


「そうだ。魔鉱石のエネルギーを効率よく伝えるための媒体液だな。溢さないように気を付けろよ」


「任せてください!」



 そう言って、荷物の中から赤い魔鉱石を1つ取り出すと、媒体液にそっと沈める。


「OKだ。そしたら蓋閉めてスイッチ入れろ」


「はい!」


 開けた時と逆の手順で蓋を閉め、ロックを掛ける。

 そして、側面に付いたスイッチを……ON!


 僅かな機械音を立て中継器が起動を始める。

 金属製の円柱の中頃は、透明な素材で出来ており内部の様子が伺える。

 媒体液に浮かんだ魔鉱石が淡い光を放っているのが見える。


 透明な素材はディスプレイの役割も果たしており、起動中を現す『During startup……』の表示が浮かび上がり淡く点滅を繰り返している。


 暫くすると文字が消え、代わりに現れたプログレスバーが起動の進捗度合いを表示する。


 そして、数秒の後起動が完了した。


 ディスプレイには中継器の接続状況が表示されている。


『Terminal_ID:20537 / OnLine > SignalStrength:8 / Battery:100% / ConnectingWeapons:0』


「よし! シグナル強度も問題ないな。そんじゃ魔兵器を起動しろ」


「了解です!」


 アイネが魔兵器を手に持ったまま、小走りで池の畔まで離れる。


「この辺りでいいですか!?」


 大きな声で叫びながら手を振る。


「大丈夫だ! でも、それマガジン入ってないぞ」


 無言で銃を確認するアイネ。


「あ……」


 そのまま黙って小走りで戻ってくる。


 やれやれと思いつつ、近くまで戻ってきたアイネにマガジンを投げて渡すジン。

 キャッチに失敗しておでこでマガジンを受け、思わずうずくまるアイネ。



「あ、すまん」


「だ、大丈夫です」


 真っ赤になったおでこをさすりながら、銃にマガジンを装填する。


 再び湖のほとりまで歩いて行き……そして、銃身の下部に取付け着けられた通信用装置の電源スイッチを入れる。


 側面にあるディシプリン・システムとの通信状態を示すインジケーターが点灯し、その色が赤から緑に変る。



「準備できました!」


「オッケー! 弾は.25口径ラピッドファイア弾だ。反動も小さいから気張らずとにかく真っすぐ撃て」


「分かりました! いきます!」


 アイネが銃を構える。

 真っすぐ湖の上を狙い澄まし引き金を引く!


 ……が、弾は出ない。


「あ、あれ?」


「ん? セーフティー外したか?」


「もちろんです」


 そう言って手に持った銃を確認する。


「あ……あの、インジゲーターが黄色になってるんですけど」


「ん?? 黄色?」


 そう言って、ジンは中継器を確認する。


 ディスプレイを確認すると……


『TerminalID:20537 / OnLine > SignalStrength:7 / Battery:99% / ConnectingWeapons:1』


 ディスプレイはタッチパネルになっており、2,3度メニューを選ぶと接続されている魔兵器のIDが表示できる。


「その銃のID、WTHG0100143だよな?」


 アイネが銃の刻印を確認する。


「えっと……間違いないです!」


 続けてメニューを確認するジン。


『ID:WTHG0100143 > not allow』


「“ not allow“……許可無し、か」


 ため息混じりに呟くと、通信端末を取り出し誰かと話し出す。


「……あ、すいません。ジン・ファミリアのジンです。魔兵器のライセンス申請についてなんですけど。……あ、はい、そうです。えー、WTHG0100143です。……あ、はい。……あ、そうですか。……いえ、いいです。すいませんでした」


 そう言って通信を切る。


 近くまで戻って来たアイネが不安そうな顔で尋ねる。


「あの……もしかして」


「あぁ。中継機の貸し出した許可したが、魔兵器の使用許諾は降りてねぇとさ」


「……申請、したんですよね?」


「あぁ。街を出る時は間違いなく申請は降りてた」


「……マスター・クァイエンですかね」


「だろうな。ったく、どんだけ暇なんだよあのジジイ」


 そう言って天を仰ぐジン。


「ど、どうしましょう」


「しゃーない、せっかくいい天気なんだし昼飯でも食いながら考えるか」


 そう言って、ジンは自分の荷物の中から学食のサンドイッチを2つ取り出す。


 1つをアイネに手渡し、近くにあった岩に腰掛け2人揃って頬張るのだった。

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