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3 召喚されし者



 ケイレンスとアスレーンの2人だけで話が進み、全くついていけないカンリ。そんな様子の部屋を訪れたのは、ケイレンスとアスレーンの妹だった。


「ごきげんよう。プレイナ・パグラントですわ。ツキガミ様、これからよろしくお願いいたします。女性同士仲良くしましょう?」

「・・・カンリでいいよ、プレイナ。」

「あ・・・はい、カンリ。」

 プレイナは頬をバラ色に染めて、そっと顔をそらした。


「あの、私の時と態度が違い過ぎだと思うのですが、気のせいでしょうか?」

「僕なんて、蹴り飛ばされたのに・・・」

 そんな2人に冷たい目を一瞬だけ向けて、プレイナを自分の隣へと案内するカンリ。どうやらプレイナのことを気に入ったらしく、2人に作るような壁があまり感じられない。


 プレイナは、金の髪にうるんだ青い瞳の美少女で、姫を体現したかのような・・・実際姫なのだが、これぞお姫様と言った容姿をしている。そして、気が強い方ではないらしく、まだあって間もないカンリに対して緊張した様子だったが、表情はほぼ無表情だが気さくに話し出すカンリに緊張も解けて、愛らしい微笑みを浮かべるようになった。


「カンリがこんなにも話しやすい人だとは思いませんでした。実は、あなたを召喚したのは、私のギフトなのです・・・もしも私のギフトで、この国に不幸をもたらすような悪人が召喚されてしまったら・・・・耐えられませんでした。だから、召喚されたのがカンリでよかったです。」

「お前、そんなことを考えていたのかい、プレイナ・・・」

「もし、そうなったと・・・しても、プレイナは・・・言うことを聞いただけだ。だから、そんなこと、心配しなくてもいいのに・・・」

 プレイナの兄たち2人が驚きながら言うが、プレイナは頭を振って兄たちの言葉を否定した。


「私のギフトがなければ、国は召喚を行おうとは思いませんでした。それに、最終的にギフトを使って召喚を行うかどうか決めたのは私です。すべては、私の責任なんです。」

「プレイナ・・・」

「だから、カンリ・・・もしも、何かあったら言ってください。私は、あなたの生活を全面的にサポートするつもりです。王女ですから、民を第一に考えなければなりませんし、特に権力のない私にできることは少ないでしょうが、それでもできる限りあなたの望みを叶えるつもりです。」

「・・・ありがとう、プレイナ。なら、色々と聞きたいことがあるんだけど?」

「聞きたいことですか?私に答えられる範囲ならば、何でもお聞きください。」

 胸に手を当てて、真摯にカンリの質問に答えようとするプレイナを見て、カンリは一番聞きたい、重要な質問をした。答えによっては、カンリはすぐに行動を起こすつもりだ。


「私の他に、召喚された人はいる?」

「カンリの他にですか・・・?私が召喚したのは、カンリだけです。ただ、大昔にこの国に召喚された方もいますし・・・他の国にも召喚のギフトを持った者が確認されていますので、召喚されたものはカンリの他にいると思います。」

「・・・そっか。」

 ふっと、表情を緩めたカンリ。ケイレンスはその様子を見て、話題に入った。


「誰か、カンリの知り合いがこの世界に来ている可能性があるのかな?」

「・・・そうだね。私・・・死体を見たわけじゃないから・・・もしかしたら、あの子が死んだって勘違いしただけかも・・・希望はある・・・か。」

 カンリは、他に召喚された者の情報が入ってきたら、すぐに教えて欲しいと頼んで、次の話題に移った。


「それで・・・ケイレンスたちは、なんで私を召喚したの?何か理由があるんでしょ?」

 カンリの問いに、3人は一瞬固まってから、アスレーンとプレイナはケイレンスの方を見た。ケイレンスは頷いて、口を開く。


「私たちは、君が儚く散るのは忍びないと思って、命を助けるつもりで召喚した・・・と言っても、君は信じないだろうね。」

「だとしたら、私しかプレイナが召喚していないってことに疑問を持つよ。私を特定して助けたかったわけでもないようだし、無差別に助けているなら、他にも召喚された人がいてもいいと思うな・・・まぁ、一生に一人しか召喚できないのかもしれないけど?」

「・・・君が、命を助けてくれた恩人だと、こちらを盲目的に信用するような人物だったなら、最初の説明で終えるつもりだった。だけど、君は違ったからね・・・話すとしよう。」

 アスレーンとプレイナの背筋がすっと伸びて、表情が硬くなる。


 これから何を話すのだろうか?

 2人の表情を見て、おそらくろくではないことを確信しながらも、カンリはケイレンスを止めずに続きを促した。

 この世界で生きていくなら、彼らにある程度使われることは許容するべきだ。

 一人で生きていくのは面倒だし、この世界についてカンリは知識がなさすぎる。これが最善だと納得し、耳を傾けた。


「今、パグラント王国は危機に直面している。いや、人類の危機と言っても過言ではないね。そんな危機がなぜ起こったのか・・・始まりは、小さな国だった。」

 そうして語られるのは真実か?これもまた嘘なのか?

 カンリにはわからなかったが、それでも聞くしか選択肢はない。




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