⒎過去⑹ 生い立ち②
説明会は読み飛ばす人用要約:
親戚宅は居心地が悪くて、高校から全寮制の学校に進学しました。
おじさん宅ではいじめられたりしたわけではない。
ただ、同情は時間が経つにつれ疲労感を伴った苛立ちに変わっていく。
持病のある祖父、田舎の土地と家、そしてどこにも行き場のなくなった私。
例えば私室を共有しなければいけなくなった再従姉妹、同学年の他人である女の子がいることで邪推を含んだからかいを受ける再従兄弟、いつまでも不協和音を奏でる家庭に憔悴するおばさん、家族に自分の親族のせいで迷惑をかけて負い目を感じるおじさん。
両親の財産の残りは多少あり、一旦祖父母に納められたそのお金で祖父は施設入居は出来ることとなった。
幸運だったのは私の養育費分も少々は残っていたことか。
金銭的な負担がすごい訳でもないので、私を施設に入れるには良心と世間の目が咎め、私はそのままおじさん宅に居候することになった。
両親や祖父母の死は私のせいではないものの、確実に私は迷惑な存在となったのだ。
家に居場所がない私は、なんとか正当な理由をつけて外に出ていなければならない。
はとこたちと遜色ないお小遣いはもらっていても、それで毎日外で過ごすには足りなかった。
田舎の近所からの監視の目は厳しい。
誰もがみんなかわいそうな子である私を知っていた。
私はタダで長時間いれて暑さも寒さもしのげ、勉強するという立派な理由も得られる図書館の住人となり、成績は公立にしてはだがとても良かった。
そして次の転機が訪れる。
私が高校進学をする年、おじさんは転勤することになった。
様々な兼ね合いにより一家で引っ越すこととなり、その際また私をどうするかの話になった。
夜中に漏れ聞こえる話し合いで知っていた。
私は今の場所とも転勤先とも離れている地の全寮制の女子校に進学しようと思っている旨を伝えた。
例えおじさん一家の引っ越しがなくても準備していたのだ。
入寮と学費免除があり、私の学力でも手の届くところ。
そんなところを必死になって探し、そしてそれ以上に必死になって枠獲得を目指した。
その高校は良家の息女を世間にスレさせない為にあるような学校で、教養と称してマナー一般にお茶お花、社交ダンスに和裁まであり、未知の世界だった。
学業はそれほど必要とされないが、まぁバカすぎる生徒ばかりだと評判が落ちるために特待生を数人とっていた。
後はノブリスオブリージュ的な側面もあり、平民(失礼)である特待生には優しくしようという暗黙の了解があり、居心地は悪くなかった。
田舎の全寮制の学校。
周囲に予備校などもなく、大学への進学はまた作戦の練り直しになる。
本当に頭がいい人はもっと進学に有利な学校を選ぶだろう。
そこら辺が倍率を落としていてニッチな需要となっていた。