17.現在⑵ 壊れた私②
現代に戻ってきました。
時系列的には1話目のすぐ後ですね。
精神科診察室
「……で、妊娠がわかったとき私が考えたのが、『出産は業務なのか?それとも報酬なのか?』ってことだったんです。
ヤバっ!て自分で思いました。
病んでるって。
先生、妊娠中って薬、あんまり飲めないんですよね?
私、病気治せますか?」
今日診察してくれたのは、以前入院中も診察してくれた先生だった。
あの時は意識がしっかりしているかどうかの確認だけされて、彼との関係についての発言はその時の病気とはまた別問題だってことにされていた。
まぁ別問題だったんだけど、でもそれはそれでおかしかったんだ。
私はいつしか本当に小野様の家政婦をしていたって思うようになっていた。
だから『前職場の雇用主』も本気で言っていたし、彼の元に戻ることも
「浮気なんて許せないからまた付き合えない」
んではなくて、
「恋愛感情を食い物にした雇用関係は結べない」
と思っていた。
「小野さん、お話をありがとうございました。
小野さんはご自分を病気だと、そしてそれを治さなければならないと感じているんですね。
そしてそれに際して御心配なことが服薬治療の赤ちゃんへの影響ということで…お間違いないですか?」
「はい」
しかし今、私は小野理々子になっている。
元から小野という苗字だったなんてことはない。
小野様と結婚したのだ。
隣には彼が座っていて、一緒に先生の話を聞いている。
私が退院した時失ったのは職場だけではなかった。
私は医療保険に入っていなかった。
入院の支払いをするにあたって高額医療費制度というのを説明されて申請もしたけれど、引っ越し・転職したばかりで再度の職なし。
貯金も底をつき、まだ戻らない体調で再度求職活動も、とりあえずのバイトもできない。
翌月からは家なしが確定的だった。
もう流石に力が入らなかった。
そうして流されるままに小野様の家に転がり込み、
「元々俺は戻ってきてほしいって言っていただろう?
邪魔なんて思うはずないよ。
理々子はいてくれるだけでいいけど、気にするなら衣食住保証してお給料も払うからまた家にいて、家事をして。
そして俺の帰りを待っていて」
という提案に乗ってしまった。
「わかりました。確かに小野さんは………」
居住まいを正して先生のお話を聞いた。




