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14.過去13 再会

 再会は唐突だった。



 勤め始めた会社は気のいいおじさん達ばかりで、休む直前にバタバタと急いで引き継ぎを受けた仕事も、予め丁寧に作られていた業務ノートのおかげでなんとかできるようになってきた。

 小さい会社だからどうしても2人は雇えなくて…と何度も私に謝ってくれて、求職活動のための休みは気兼ねなく取るようにと言われていた。


 その日も面接を受けた帰り、手応えは感じなかったが、前回の時よりも離職理由がはっきりとしている分当たりもやんわりしている気がして気持ちはずいぶんと楽だった。

 完全に道から意識を逸らしはしないが、見慣れない風景や空を見上げながら歩く。

 前から歩いてきた人も自然に距離をおいて行き違ったと思ったところ、


「理々子!」


 懐かしい声で名前を呼ばれて立ち止まった。


 すれ違ったのは小野様だった。


 しばし予想外過ぎたので思考を停止して、無言で見つめていた。

 それに焦れたのか小野様は一歩こちらに近づき、そしてちょっと気まずそうに視線を反らしながら躊躇い、それでも話しかけてきた。


「もう俺には話しかけることも嫌?」


 話の内容も予想外過ぎた。

 意図が見えない。

 状況も読めない。


 結果私は無言を貫き…たいところではあったが、前の職場のことが頭の隅を掠め、無視だけはやめておいた。


「小野様お久しぶりでございます。私に何かご用でしょうか?」


 なぜそんなショックを受けたような顔をするのか。

 私は充分なほど丁寧な対応をしていますよ。


 唇を震わせながら小野様は続けた。

「理々子、もう一度、俺のところへ戻ってきて欲しい。

 ひどい事をした俺を許せないだろうし、何を都合の良いことをって思われるだろうけど、俺、理々子じゃないとダメだったんだ。」


 みんな結婚や金目当てで俺自身の事なんか見てもいないし、理々子がいないとそんな女や狸オヤジ達と話した後、俺、どんどん干からびていくんだ。


「理々子がいないとダメなんだ。

 お願い戻ってきて。」


 小野様は必死の形相で、今にも飛びかかってきそうな気迫を感じる。

 怖いわ。


 一歩後ずさりすると、ハッと気づいて少し距離を取ってくれた。

 よかった。

 警察に電話はしたくないもんね。


 小野様、と呼ぶと真剣な目でこちらを見て私の次の言葉を待っている。


「申し訳ございません。それは致しかねます。」


「理々子!」


「私も同じです。

 小野様のおっしゃる『そんな女』と、同じです。

 以前お世話させて頂いた時も、小野様は『家政婦』に充分な報酬を支払っていたとお思いでしょうが…

 私には下心があったんです。

 小野様と結婚したい、家族になりたいと思っていましたよ。」


 ですからもう、私のことをお金や性行為で雇うことはできると思わないでください。

 小野様にご満足いただけるようにはお勤めできないと思います。


「理々子!すまない!傷つけて、本当にすまない…

 でも君が必要なんだ!

 これから償う為に何でもする、許してくれるまで、俺……!!」


 許すとか償うとか、なんなんだろう。

 私は「もう戻れない」と言っているだけなのに。


「失礼いたします」

 私はそう言って再び歩き始めた。


 小野様は追いかけては来なかった。

この回は難産でした。

ストーリー的には決まってるんですが、スムーズに繋がるようにって何度も書き直してはみたものの…

ラストやタイトルにちゃんと内容が届いているかはこの回による気がする。

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