13.過去12 離職
目指せ完結!
勢いだいじに
初めて行う転職活動は上手くいかなかった。
リクルートスーツを買い、何枚も書いた履歴書を持って休日ごとに面接を受けに行く。
高卒で特殊技能もない20歳の女に正職員の求人はそもそも少ない。
しかも中途半端な時期に、前職の退職理由もふんわりしていたりすると、面接は上手くいかなかった。
毎回面接を受けに行っても、引っかかる手応えすらなく消耗する日々。
その間に小野様は一度ご宿泊され、女将さんに私を部屋付きにして欲しい、と言ったらしい。
真意はどうであれそもそもVIPに付けるほどの経験もスキルも私にはない。
さらなるトラブルを避けるためと断ってもらったが、女将さんからは探るような視線が投げかけられた。
その日は今度は小野様の番号から不在着信があったが、掛け直さなかった。
利用頻度からして私は退職までにもう何度かこんな針のむしろのような場面に立たされるのは確実だった。
私は「就職先が決まった。先方からは出来るだけ早めの就業を打診されている」と嘘をつき、ひとまず退職と引っ越しをする事にした。
女将さんは「そう、よかったね」と二つ返事で了承してくれ、次の小野様のご利用前に去る事が出来た。
女将さんのホッとした表情はきっと私を心配してくれてのことだろう。
けれどもそれに、高校進学時のかつてのおじさん達の表情が重なってしまい、私を打ちのめした。
今はアパートの保証人も、そういうのを代行してくれるサービス会社があるのだと知った。
女将さんが漏らすとも思えないし、顔を合わせなくなったら小野様が聞くとも思えないが、引っ越し先も「とりあえずの場所だから」と濁し、もちろん決まっていない就職先も知らせなかった。
ずっとここにいられると思った場所。
仕事は確かにきつかったけれども、同僚達もみんな年上だったのもあってか私を可愛がって、ずいぶん良くしてくれた。
そこを去るのは胸を締め付けられるような思いだったけれど、この人達からも『邪魔だなぁ』なんて思われるようになる方が辛すぎて、辞める決意は変わらなかった。
心残りは…
疎遠にはなっていたが、それでも時々ご家族でご利用になる際に会っていた、私をここに紹介してくれた友達。
その子とご家族の顔を潰さないかだけが心配だった。
でも同僚達も私に「充分に働いたよ」と言ってくれたし、教育係をしてくれた先輩は女将さんから少し聞いたのか「そんなこと気にすんな!」と涙目で怒ってくれた。
家具家電付きのウィークリーマンションに入居し、ハローワークに通う日々。
会社都合の退職にしてもらえたことだけは良かった。
相変わらず面接の箸にも棒にも引っかからない就職活動の中、非正規雇用ではあるが産休育休中の事務員の補充という募集になんとか滑り込むことができた。
これで数ヶ月先の見通しが立ったと、久しぶりに少し息をつけた。
気が緩むと、つい嫌でも考えてしまう。
『サヨナラだけが人生だ』って私のためにあるような言葉じゃないかな。
そして数多のターニングポイントはあれど、「あの時ああしていれば」って言う分岐点で選べたかもしれない未来って想像つかなくって泣けてきた。
いつもいつも私は自分の力の限り頑張って生きてきたけど、それでもいつもいつも1人になってしまうんだ。




